海での取り組み

安全運航の取り組み

日本郵船グループは“Bringing value to life.”の基本理念のもと、お客さまのサプライチェーンの一翼を担い、人々の生活を支えています。安全運航の現場最前線である船舶がオフィスから遠く離れた環境にある海運業において、関係者で目標を共有し、地道な活動を継続すること、PDCAサイクルを回していくことが、重要であると考えています。「事故ゼロ」を目指した体制の整備や、独自の安全基準に基づいた活動、人材育成やICTをはじめとする先進技術を活用した事故リスクの未然防止など、あらゆる面から安全運航を追求しています。

安全・環境対策推進委員会

安全運航の確保が当社グループにおける事業活動の基盤であるとの認識の下、社長を委員長とする「安全・環境対策推進委員会」を2001年に設置し、国内外の海上・陸上の関係者が一丸となって安全・環境に関する活動を推進しています。同委員会では毎年、前年度の活動をレビューし、当年度の活動方針や目標を決定しています。また、同委員会で決定した活動方針は、安全・環境対策推進委員会の船種ごとの小委員会で具体化し、各船の安全推進活動として実行しています。

安全・環境推進体制図

  • N-MEC技術委員会(NYK MARITIME EDUCATION TECHNICAL COMMITTEE)
    船員教育・訓練および育成を目的とした委員会。2018年10月より、安全対策推進本部の下部組織として統合
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遅延時間の計測

当社グループは、船舶の安全運航の達成度を計測するため、事故・トラブルによって運航が停止した時間(ダウンタイム※1)を指標として取り入れ、遅延時間"ゼロ"を目指し取り組んでいます。

遅延時間の推移(ダウンタイム)

  1. ※1ダウンタイム
    衝突、座礁、機関事故等により本船サービスが停止したすべての時間
  2. ※22020年から集計方法を年度から年計へ変更。
    2020年は2019年度分と一部重複(2020年1~3月分)

遅延事故"ゼロ"達成の手段の一つとして、IoTやビッグデータ活用による船舶機器の故障予知・予防の研究を進め、陸上からも安全運航をサポートしています。

SIMS※1搭載隻数および船舶の異常運転値発見件数

船舶の機関事故や漏電、火災等につながる可能性のある事象をいち早く検知することを目的に、SIMSで収集した機関系データの異常値分析を進めています。

  1. ※1SIMS(Ship Information Management System: 船舶パフォーマンスマネージメントシステム)
    エンジンや各種機器のデータをはじめ、船舶の速度や揺れ、風速や潮流といった気象情報まで、詳細な実海域データをリアルタイムにモニタリングし、船上と陸での情報共有が可能
  2. ※22020年から集計方法を年度から年計へ変更。
    2020年は2019年度分と一部重複(2020年1~3月分)
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安全管理の徹底

運航船舶の品質保持のため、当社グループ独自の安全基準「NAV9000」に基づき安全管理を徹底しています。

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安全推進キャンペーン

安全推進の取り組みを当社グループの企業文化として定着させ、さらなる活動を推進するために、安全推進キャンペーンを定期的に展開しています。その時々に応じた共通テーマを設定し、海陸の関係者が意見交換を行い、相互理解を深めています。キャンペーン期間中、多くの役員、社員が船舶を訪問し乗組員と安全について直接対話することや、船主や船舶管理会社などの関係者にお集まりいただき議論を深める機会を設けることで、現場により近い活動となるよう工夫しています。
日々の情報共有のツールとして、事故速報を周知する“CASUALTY REPORT”、事故・トラブルの予防指針を伝える“SAFETY BULLETIN”、機関系情報に特化した“MARINE ENGINEERING INFORMATION”、保安情報に関する“SECURITY INFORMATION”など、即応性に配慮した情報配信により、安全推進活動のさらなる強化に努めています。

  1. 安全推進キャンペーン 「Remember Naka-no Se(夏季)」「SAIL ON SAFETY(冬季)」
    毎年、夏、冬の2回実施。夏は1997年に東京湾にて発生した原油タンカーDIAMOND GRACE号の座礁事故を教訓とした活動。冬は、冬季の荒天に起因する事故を含めた海難の防止を主なテーマとして実施。
    経営トップをはじめ陸上社員が運航船を訪れ、安全運航の実施状況の検証などを行っている。

ニアミス3000活動

DEVIL Hunting!

当社グループの「ニアミス3000活動」は、事故を未然に防ぐことを目的とし、ハインリッヒの法則を参考に、見過ごしがちな事故の予兆を対象としています。初期の段階で事故の芽を摘み取る活動を「DEVIL Hunting!」と名付け、2006年から当社グループのパートナーである船主や船舶管理会社とともに展開しています。
この活動は乗組員の安全意識を啓発し、衝突事故の予防、機器の故障予防、作業中の事故防止など、日常業務の中で常に安全意識を持って行動することで、より安全で作業しやすい職場環境を目指しています。

  1. DEVIL Hunting!
    DEVILは、Dangerous Events and Irregular Looks(不安全行動や不安全状態)の略
    重大事故に至らないように、前兆や要因などを初期の段階で排除することを目的とした活動

DEVIL報告件数

2022年DEVIL要因

  • 2020年から集計方法を年度から年計へ変更。
    2020年は2019年度分と一部重複(2020年1~3月分)

海陸での情報共有「CALM SEA」

安全運航の達成度、ニアミス3000活動の事例、事故の教訓や環境対策といった最新の情報を、月刊誌「CALM SEA」により船主、船舶管理会社、運航船全船に周知し、海陸での情報共有を図っています。

CALM SEA

2022年1月より、現場の船員による"Good Practice"を関係船主・船舶管理会社から募集し掲載しています。

Good Practice

海難への備え

緊急対応ネットワーク

世界中のあらゆる海域で発生する事故・トラブルに備え、世界各極に緊急対応のためのネットワークを構築しています。

事故対応訓練

事故発生時に迅速に対応できるよう、定期的に事故対応訓練を実施しています。より現実的な訓練にするため、船舶の種類や大きさ、事故、トラブルの内容を毎回変更しています。訓練では運航船や船舶管理会社に加え、官公庁やお客さまなど多くの関係者にも参加いただいています。2022年には国土交通省海事局、第五管区海上保安本部、神戸海上保安部など多くの社外関係者にもご協力頂き、実践的な訓練を行いました。2022年にDIAMOND GRACE号の事故から25年目を迎え、当時の教訓を風化させないよう油流出時の事故対応見直しのほか、訓練のレビューにも重点を置き、関係者からの意見をもとに事故対応の強化を図っています。

  • 当訓練では、その他に(一社)日本船主協会、(一財)海上災害防止センター、共栄タンカー(株)にご協力を頂きました。