コーポレート・ガバナンスに対する取り組み

日本郵船の経営組織

2023年6月21日現在のコーポレート・ガバナンス体制図

ガバナンス強化のこれまでの歩み

対応項目の凡例

  1. 執行役員制度(旧 経営委員制度)を導入
  2. 経営の透明性の向上
  3. コーポレートガバナンス・コード対応
年代 対応項目 内容
2002年 経営委員制度を導入し、業務執行体制を強化
2006年 経営の透明性を高めるため、アドバイザリー・ボードを設置
2008年 アドバイザリー・ボードを廃止し、社外取締役2名を選任
取締役の経営責任を明確にし、経営環境の変化に即応できる体制を構築するため、取締役の任期を2年から1年に短縮
2010年 社外役員4名全員を、国内の金融商品取引所が定める独立役員として届出
2015年

日本版コーポレートガバナンス・コード策定、当社は以下を整備

  • コーポレートガバナンス・ガイドライン
  • 取締役会の規模・バランス・多様性に関する考え方
  • 役員等選任指名方針・手続
  • 社外役員候補者の推薦に関する独立性基準
  • 役員等報酬決定方針・手続
2016年 社外取締役を1名増員し3名に、また取締役の総員数は1名減員し12名に(社内取締役を2名減員)
当社取締役及び経営委員(社外取締役及び監査役を除く)に対し、業績連動型株式報酬を導入
指名諮問委員会及び報酬諮問委員会を設置
社外取締役や監査役を含む全役員に取締役会の実効性に係る自己評価の記名式アンケートを実施
2017年 取締役の総員数を1名減員し11名に(社内取締役を1名減員)
筆頭社外取締役を設置(岡本取締役)
取締役会への報告事項の整理等行うとともに、議論のさらなる活性化を図る施策を実行
2018年 公正性の確保、さらなるガバナンス強化向上のため、取締役会の実効性に係る自己評価の集計、分析等に外部機関を起用
取締役の総員数を2名減員し9名に(社内取締役を2名減員)
2019年 取締役の総員数を1名減員8名に(社内取締役を1名減員)
ガバナンス強化委員会を設置
2020年 機動的な意思決定のためのプロセスの見直し、および経営会議の新設
執行体制の明確化のため、経営委員を執行役員に名称変更および、執行役員会の位置付けの変更
2021年 ESG経営の着実な遂行を目的として、ESG経営推進委員会を新設
2022年 業績連動型金銭報酬制度の導入
役員報酬の決定に関する方針を報酬制度の改定に伴い変更
業績連動型株式報酬制度の一部改訂
2023年 監査等委員会設置会社へ移行し、取締役会の実効性向上とモニタリング機能強化を図るとともに、社外取締役比率は50%に向上

機関設計

当社は監査等委員会設置会社を選択しています。取締役会は独立性の高い社外取締役6名を含む12名で、監査等委員会は独立性の高い社外取締役3名を含む5名で構成しています。

取締役会と業務執行の体制

当社は、2023年6月21日の定時株主総会において、監査等委員会設置会社への移行を内容とする定款の変更が決議されたことにより、監査等委員会設置会社に移行しました。
事業などを取り巻く環境の変化が一層大きくなる中、重要な業務執行の決定権限を業務執行取締役へ委任することで意思決定を迅速化するとともに、取締役会において、「中長期経営戦略」「経営資源の配分」「事業ポートフォリオ」「サステナビリティ」「重大リスクへの対処」といった企業価値向上につながる事項を重点的に審議することで、取締役会の実効性向上を図ります。また当社は、一定数(3分の1以上)の独立社外取締役を含む取締役会と、独立社外取締役が過半数となる監査等委員会を設置し、監査等委員会の機能を有効に活用しながら経営に対する監督機能の強化を図り、また取締役会における議決権などを持つ監査等委員である取締役にて構成する監査等委員会を設置することにより、取締役会のモニタリング機能強化を図ります。
業務執行の体制としては、業務執行取締役と本部長、副本部長である執行役員などで構成される経営会議において取締役会付議事項を含む重要な業務執行に関して審議を尽くした上で、決定権限を委任された業務執行取締役が決裁する体制を整えています。

指名・報酬諮問委員会

当社は役員人事および報酬制度における審議プロセスの透明性と客観性を高めるため、取締役会の諮問機関として、独立社外取締役を過半数とし、委員長を独立社外取締役とする指名諮問委員会および報酬諮問委員会を設置しています。両委員会は、取締役(監査等委員である取締役を除く)および執行役員の選解任や報酬に関わる重要な事項を協議し、取締役会への報告または提言を行います。

両委員会の構成と各委員の出席状況(2022年度)

指名諮問委員会 報酬諮問委員会
取締役会長 内藤 忠顕 4/4回 2/2回
代表取締役社長
(社長執行役員)
長澤 仁志 4/4回 2/2回
取締役
(筆頭社外/独立役員)
片山 善博(委員長) 4/4回 2/2回
取締役
(社外/独立役員)
国谷 裕子 4/4回 2/2回
取締役
(社外/独立役員)
田邊 栄一 4/4回 2/2回

役員報酬について

業績連動型株式報酬制度

当社は、2016年度より、透明性・客観性の高い役員報酬制度である業績連動型株式報酬制度を導入しています。
2022年度より、ESG経営をさらに加速し、中長期的に株主との利害共有を図ることを目的に、株式報酬制度の内容を一部改定の上、継続しました。

業績連動型株式報酬制度の概要
  1. 業績連動型株式報酬制度の対象者
  • 執行役員を兼務する取締役(監査等委員である取締役を除く)、会長執行役員を兼務しない取締役会長および一部を除く執行役員で、国内居住の者
  1. 業績連動型株式報酬制度の対象期間
  • 2022年4月1日から開始する3事業年度(2025年3月末日まで)
  • 信託期間の延長が行われた場合には、以降の各3事業年度
  1. 当社が拠出する信託金の上限額
  • 3事業年度を対象として、合計16億円(信託費用等を含む)
  1. 取締役等が取得する当社株式等の数の上限および当社株式の取得方法
  • 上限となる株式数は3年間合計300万株(2022年10月1日の株式分割後を基準とした株式数)で、発行済株式の総数(2022年3月31日時点、かつ、自己株式控除後)に対する割合は約0.6%
  • 当社株式は株式市場から取得予定のため、希薄化は生じない
  1. 取締役等が取得する当社株式等の数の算定方法等
  • 役位固定部分と業績連動部分とに分けて算定
  • 業績連動部分にかかる株式数を算定するための指標:配当込み当社TSR(Total Shareholder Return: 株主総利回り)および当社が掲げるESGに関する考え方を踏まえた当社独自のESG指標(当社TSRについては、対象期間中の東証株価指数(TOPIX)成長率および競業他社TSRとの比較によって達成度を測る)
  • それぞれの指標の達成度に応じ、業績連動係数は0~2.0の範囲で変動
  1. 取締役等に対する当社株式等の交付等の時期
役位固定部分 毎事業年度終了後
ただし、交付後3年間は譲渡制限あり
業績連動部分 3事業年度終了後

業績連動型金銭報酬制度

当社は、従来以上に短期的な業績達成へのインセンティブを高め、企業価値向上に資する仕組みとすることを目的に、基本報酬とは別枠で、執行役員を兼務する取締役ならびに一部の執行役員を対象に「業績連動型金銭報酬制度」を2022年度より導入しました。

業績連動型金銭報酬制度の概要
  1. 業績連動型金銭報酬制度の対象者
  • 執行役員を兼務する取締役(監査等委員である取締役を除く)および一部を除く執行役員
  1. 業績連動型金銭報酬制度に関する金員の上限
  • 1事業年度あたり3億円
  1. 業績達成条件の内容
  • 業績連動指標は連結経常利益および連結ROE
  • 業績連動指標にかかる達成度を測る際の基準値は、原則として当社の中期経営計画で掲げる目標値
  • それぞれの達成度に応じ、業績連動係数は0~2.0の範囲で変動
  1. 取締役等に対する金銭の支給時期
  • 毎事業年度終了後

取締役(監査等委員である取締役を除く)等の報酬枠の概略図

  • 改定後の基本報酬額の総額年額510百万円以内のうち、社外取締役分は総額で年額150百万円以内です
  • 業績連動型株式報酬の金額については、当社が拠出する信託金の上限額です
  • 本業績連動型金銭報酬制度および本業績連動型株式報酬制度の対象者には、一定の要件を満たした執行役員も含んでおり、上記の上限額はそれら執行役員も含めた各制度の対象者全員にかかる上限額です
  • 国内非居住であることによって業績連動型株式報酬制度の対象外となる者にかかる分を含みません

報酬構成のイメージ図

  • 上記割合は、各ケースにおける想定値で、役位により変動します。

業績連動型金銭報酬の支給および業績連動型株式報酬の交付などのイメージ図

取締役会の実効性評価

当社は2015年度より、取締役会の実効性のさらなる向上を目的として、全役員を対象に実効性に係る自己評価アンケートを継続して実施しています。

  1. 1

    2022年度実施概要

    2022年度は、第三者アドバイザーの意見も考慮した上で、①「取締役会の構成と運営」、②「経営戦略と事業戦略」、③「企業倫理とリスク管理」、④「業績モニタリングと経営陣の評価・報酬」、⑤「株主との対話」の5つの大項目に関する16問のアンケートを実施しました。

  2. 2

    実効性の評価結果

    ⅰ. 概要
    アンケート結果をもとに議論を行った結果、取締役会が適切に機能し、実効性が確保されていると判断しました。2022年度においては、特に②「経営戦略と事業戦略」に関して、決議した重要事項の事後点検において改善がみられ、また、中期経営計画策定の議論を行う中で取締役会の関与が深化したことで、取締役会の実効性が向上しました。一方で、多様性・人事戦略など、さらなる議論の深化が必要な課題もまだ残されており、そのためには、十分な審議時間の確保が必要であることを認識しました。

    ⅱ. 2021年度に認識した課題について

    • 「モニタリング機能の強化」
      主要な経営指標の継続的な確認や率直な意見交換、中期経営計画策定の中で何を重要なKPIとすべきかなどの議論を通じて、一定の改善がみられましたが、引き続き取り組むべき課題と認識しました。

    • 「多様性・人材戦略など」
      人事制度改革や中期経営計画策定の過程で議論しましたが、議論の継続の必要性を認識しました。

    ⅲ. 機関設計の変更
    事業を取り巻く環境の変化が一層大きくなる中で、認識した課題への対応の意味も含め、「健全で持続的な企業価値向上を図るために当社にとって最もふさわしい機関設計は何か」について、複数回にわたり議論を行いました。その結果、監査等委員会設置会社に移行するのが適切であるとの結論に至りました。

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    2023年度の取り組み

    当社は、2023年6月21日の定時株主総会における決議により、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しました。重要な業務執行の決定権限を業務執行取締役へ委任することで意思決定を迅速化するとともに、モニタリング機能の強化に取り組んでいきます。同時に取締役会においては、「中長期経営戦略」「経営資源の配分」「事業ポートフォリオ」「サステナビリティ」「重大リスクへの対応」といった企業価値向上につながる事項に、より時間を割いて審議することで取締役会の実効性向上を図ります。継続課題とした「多様性・人材戦略など」についても、重要な課題との認識の下、取り組んでいきます。

役員向けトレーニング

当社グループの中長期ビジョンの達成と持続的な企業価値向上を図るために、ガバナンス機能の向上、公正取引等の法令遵守に対する理解の深化、取締役会の実効性の確保を目的として、社内外取締役、執行役員向けに社内研修および外部講義の受講機会を提供しています。
会社法、内部統制、リスク管理、コンプライアンス、危機対応や経営分析、財務戦略等の知識を習得する研修とともに、時宜的な最新動向をテーマに掲げた講義も行い、実践的なトレーニング内容としています。

トレーニングメニュー

  • 取締役の義務、責任(会社法、コーポレートガバナンス・コード)
  • 内部統制・コンプライアンス
  • ESG経営、人権関連ほか

政策保有株式の保有方針

当社は、保有する政策保有株式を縮減する方針で取り組んでいます。また2015年11月に制定したコーポレートガバナンス・ガイドラインに則り、個別の政策保有株式の保有目的・意義について、資本コストをベースとする収益目標と配当金・取引状況や事業活動への効果などを取締役会において毎年総合的に検証し、削減に向けた取り組みを決定しています。2016年度末に56銘柄保有していた上場株式を、2022年度末までに21銘柄減らし35銘柄としました。
現時点で当社が保有する政策保有株式は、当社業績の安定に資する長期的な取引関係が見込まれる重要取引先であり、関係維持および強化のための手段の一つとして妥当と判断しています。また、政策保有株式に係る議決権の行使にあたっては具体的な基準を定め、投資先企業の価値の毀損につながるものではないこと、および当社の企業価値向上への貢献の有無とその程度を確認の上、議案への賛否を決定しています。

監査の体制

当社の監査等委員会は、独立役員である社外監査等委員3名を含む5名(うち女性2名)で構成されていて、株主の負託を受けた独立の機関として取締役の職務の執行を監査しています。具体的には、監査等委員会が定めた監査等委員会規則、監査等委員会監査等基準に準拠し、監査方針、監査計画などに従い、内部統制システムの整備・運用状況、業務基盤の整備状況、経営計画諸施策の推進状況などを重点監査項目として、内部監査部門と緊密な連携を図りながら、計画的に日々の監査活動を進めています。また、取締役会など重要な会議へ出席するとともに、業務執行取締役および使用人などからその職務の執行状況などについて説明を求め、意見を表明しています。グループ会社については、その取締役または当社管掌部門などと意思疎通および情報の交換を図り、必要に応じて、事業の報告を受け、説明を求めています。さらに、グループ会社監査役などと連絡会などを通じて連携を図り、グループ全体の監査品質向上に努めています。また、監査等委員会の職務を補助しその円滑な職務遂行を支援するため、監査等委員会室を設置し、専任の事務局員として3名を配置しています。監査等委員である社外取締役は、各分野における豊富な経験や高い識見に基づき、取締役会、監査等委員会などの場において、それぞれ独立した立場から意見を述べ、主要な業務執行取締役や執行役員および会計監査人などからの報告聴取なども含む監査活動を行うことにより、当社の健全で公正な経営に寄与しています。

構成人数と監査役会出席回数(2022年度)

氏名 出席回数/開催回数
社内 宮本 教子 16/16回
髙橋 栄一 16/16回
社外 中曽 宏 15/16回
桑原 聡子 16/16回

会計監査について

当社の会計監査業務を執行した公認会計士は北村嘉章氏、隅田拓也氏、柴田勝啓氏です。各氏はいずれも有限責任監査法人トーマツに所属しており、同会計士事務所の継続監査開始年度は2007年度3月期、各氏の業務執行社員としての継続監査年数は7年以内です。当社の監査業務に関わる補助者の構成は、公認会計士25名、会計士試験合格者など4名、その他47名であり、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行っています。
また、財務諸表監査および内部統制監査を受ける主要な海外連結子会社は、主として当社の監査公認会計士などと同一のネットワーク(デロイト トーマツ グループ)に属する会計士事務所を起用しています。
なお、監査役会は、会計監査人の評価に関する基準を定め、監査体制、独立性、職務遂行状況などの評価を実施の上、会計監査人の選任もしくは、毎年の再任、不再任を決定しています。

監査報酬の内容

区分 前連結会計年度 当連結会計年度
監査証明業務に
基づく報酬
(百万円)
非監査業務に
基づく報酬
(百万円)
監査証明業務に
基づく報酬
(百万円)
非監査業務に
基づく報酬
(百万円)
提出会社 196 2 207 42
連結子会社 125 0 107 0
321 3 314 42