トップコミットメント

経営戦略として着実に深化するESG経営

先駆者としての苦労が後に大きなリターンを生み出す

2022年4月中旬、およそ2年半ぶりに北米へと向かいました。この2年間、コロナ禍の影響から海外現地法人との会議はオンラインでの開催を余儀なくされましたが、ようやく対面で現地の従業員と向き合うことができました。本当に久しぶりのことです。簡易的な懇親会も兼ねたタウンホールミーティングを開催し、中南米のグループ社員にもオンラインで参加してもらいながら、対面とオンラインのハイブリッド形式で多くの従業員と対話してきました。2022年3月に発表した「NYKグループESGストーリー2022」の内容を中心に、当社グループの成長戦略に関する私からのプレゼンテーションに対し、質問に答える形です。参加者の真剣な眼差しと、成長戦略の中身についてもっと知りたいという質問に私はESGへの意識が着実に浸透していることを実感しました。先行的な取り組みには苦労やコストがかかるものですが、リターンも大きい。例えば将来、船舶の装備や機能がESG仕様に高度化すれば、その高度な機材を十分に扱える船員が必要です。今のうちから先行していれば、そうした経験や知見を備えた船員を先んじて育成することが可能となります。先行しない手はないのです。だから「NYKグループESGストーリー」は当社グループの成長戦略なのだと繰り返し伝えてきました。北米での対話を通じて、私は、当社グループが取り組むESG経営の進捗に大きな手応えを感じています。

現場ごとにESGストーリーが生まれてくる組織へ

もともと当社グループは、社会や産業を下支えする物流インフラとして発展してきた歴史から、収益成長だけでなく社会的使命感も持ち合わせた社風が培われてきました。そのため、ESGに共感しやすい土壌が備わっていたと言えます。しかしそれでも、それぞれ個別の業務に「ESG」のモノサシをどう落とし込むのか、現場の戸惑いは根強かったと思います。社員一人ひとりが自らESGの絵・ストーリーを描いてほしい。こうした私の考えに応えようと、ESG経営推進グループの旗振りの下全社を挙げて、ESGの自分ごと化を当社グループ内に浸透させるべく、現場とぶつかりながら少しずつ切り拓いてきました。今もなお足掻き続けてくれています。こうした努力に現場も徐々に応えてくれるようになり、少しずつですが、独自のESGストーリーが生まれ始めたわけです。
ESGは先行投資が必要ですし、お客さまへのコスト転嫁も必要となるなど、綺麗事では済まされません。ESGを経営の中心に置きながら、現場が生み出すESGストーリーを事業としてしっかり成立させるのが、我々経営陣の責務でしょう。コーポレート部門に対しても、目の前の業務に「ESG」のモノサシを取り入れることが難しいのは承知していますが、それでも少しずつ工夫を凝らしてほしいと伝えています。当社グループ全体での創意工夫の積み重ねが、5年後、10年後に必ず大きな違いを生み出すことになると考えています。

自ら考え、自ら動く経営こそESG経営の真髄

2000年から2010年代、ドライバルク事業における見込みのない大量発注や、自動車輸送事業における独占禁止法違反、日本貨物航空(株)における業務改善命令など、企業としての姿勢が疑われる問題をいくつか引き起こしました。社長就任以来、最重要課題の一つとして、なぜそうした事態が発生したのか決してうやむやにすることなく問題点を洗い出し、社内で共有しながら、徹底的に遵法精神の浸透を図ってきたつもりです。総括の過程で思い至ったのは、誰も失敗したくて意思決定したわけではなく、意思決定の過程で何らかの要因を見落としていたから、結果として失敗に繋がったということ。よって、意思決定プロセスの在り方を見直し、経営会議では賛成と反対の両面から徹底的に議論を交わすとともに、議論の内容をつぶさに記録。記録した議事録は社内関係者に展開し、後日振り返れるようにしています。これにより、意思決定プロセスの透明性を一層確保するとともに、意思決定の質そのものも高めることに繋がります。
これからの時代、持続的に成長していくための経営課題を自ら見出し、解決に向け、自ら考え、自ら動くことこそ、ESG経営の真髄です。そして経営課題に貪欲かつ自律的に取り組み続ける企業グループを、物流サプライチェーンに組み込みたいと考える企業はもっと増えてくるはずです。私の目標は、ESG経営で当社グループを優位なポジションに導くだけでなく、進化し続ける企業グループにすることです。だからこそ、2022年3月に発表した「NYKグループESGストーリー2022」では、グループ会社におけるESGストーリーについても触れました。グループ会社でもESG経営が始まっているというのは、相当大きな進展だと思います。
ESG経営の基盤は間違いなく整いつつある一方、ESGストーリーを一人ひとりに考え抜いてもらう余裕があまりないという課題も見えてきました。余裕がないと、アイデアも矮小なものになりがちです。船員を含めると5万人規模の企業グループですが、本社の社員数は決して多くはありません。現在、技術者を中心に中途採用を強化し、社員数の拡充に注力しています。また、およそ7割の従業員が外国人という企業グループにおいて、その外国籍従業員一人ひとりにもっと活躍してもらえる道筋を見せてあげることができていない忸怩たる思いがあります。国籍や性別に拘わらず多様性を認め合い、すべての人がその能力を最大限に発揮し活躍できる企業グループとするため、危機感をもって人と組織の強化に取り組みます。

最後に

2022年度は次の新中期経営計画の発表に向け、議論を加速していく1年となります。おかげさまで、ESG経営推進委員会、持続的成長検討タスクフォースなど、執行役員を中心にこれまで、実に密度の濃い議論を交わしてきました。ESG経営におけるさまざまなプロジェクトは、結果が出るまでに5年程度を要するものとなります。新たな中期経営計画は、今取り組んでいるESG経営の進捗をしっかりお見せすることにもなります。現時点では、まだまだ掛け声ばかりが先行していますが、次の中期経営計画期間中は、より具体的な成果が次々と見えてくるはずです。
“Bringing value to life.”という基本理念の下、当社グループが目指す企業価値向上の方向性にご賛同いただけるステークホルダーの皆さまに、ぜひ力強いご支援をお願いしたいと思います。当社グループのESG経営は今後1年間でもっと進化するはずです。どうぞご期待ください。引き続きご理解・ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

2022年11月

代表取締役社長・社長執行役員
長澤 仁志