これが私たち日本郵船の「仕事」ですチームワーク

不安もワクワクも乗せて —— 海上職新入社員のはじめての乗船実習

左から牧野実習生、服部実習生、竹内実習生、髙橋実習生、横山実習生

日本郵船では海上職として入社後、会社が運航する貨物船で実際の業務を学ぶ「社船実習」を行います。同期全員で同じ貨物船に乗り、インストラクターの指導の下、実務に触れながら船乗りとしての基礎を身につけていきます。実習船IRIS LEADER* で社船実習に取り組む当社の新入社員は、タイのレムチャバン港から乗船し約10日後日本の港に到着。新入社員のうち5名に、実際に船に乗って感じたことや、日々の実習、そして船内での生活について話を聞きました。
*実習船IRIS LEADER:実習生受け入れのため、通常の貨物船より居住スペースや居室が広く設計されている。実習用の講義室などもある。

実習船IRIS LEADER

実習船IRIS LEADER

(右写真のキャプション)左から牧野実習生、服部実習生、竹内実習生、髙橋実習生、横山実習生

(右写真のキャプション)左から牧野実習生、服部実習生、竹内実習生、髙橋実習生、横山実習生

乗船前の思い

――初めての社船実習は期待と同時に不安も大きかったと思います。特に気がかりだったのはどのようなところですか?
「乗船のために必要な書類が本当に多くて、もしどこかに不備があったら乗船できなくなるんじゃないか、という不安がありました。」

商船系学校*での実習では学校や事務局が準備をサポートしてくれますが、社船実習では自分自身で書類を確認し、管理する必要があります。何が必要で、何が不足しているのかを自分で把握しなければならない点に、これまでとは違う緊張感を覚えたそうです。
*商船系学校:全国各地の船員養成機関(大学・高専など)。卒業後、海技免状の取得が可能。

「最終的に、会社から指示されていた書類がすべてそろっていると確認できたとき、とても安心しました。同時に、社会人として一歩進んだように感じました。」
船内での生活に対する不安の声もありました。

「商船系学校の練習船実習と、企業が運航する商船はまた違う世界だというイメージがありました。通信環境がどれくらい整っているのかも分からず、陸と完全に切り離されるんじゃないか、という不安もありました。」
知識としては理解していても、実際に足を踏み入れるまでは本当のところはわからない。その“わからなさ”こそが、不安の大きな要因だったのかもしれません。

社船実習生

【コラム①】~海上職社員になるには?~

海上職社員になるためには国家試験に合格し、三級海技士免状(機関または航海)を取得する必要があります。日本郵船には、商船系学校在学中に資格を取得し入社する社員のほか、一般大・大学院を卒業し、入社後2年間の研修や実習を通して資格取得を目指す「自社養成プログラム」があります。

※詳しくはこちら: 職種紹介 | 仕事を知る | 日本郵船 | 新卒採用情報
※今回インタビューした5名はいずれも商船系学校出身者です

実際に乗船して

――乗船後に商船での生活や実習のイメージは変わりましたか?
「陸上にいると、仕事が終わってから食事をして、お風呂に入って……あっという間に夜になります。でも船では、生活に必要なものがすべて近くにあるので、時間の使い方がすごくシンプルです。」

業務が終わればすぐに食事や休息へ移ることができる。生活と仕事がコンパクトにまとまっているからこそ、睡眠はしっかり取れ、生活リズムも比較的安定し、一日が整っているように感じられるといいます。

「思っていたよりストレスフリーでした。心配していた通信環境も、Wi‑Fiが整備されているため家族や友人と不自由なく連絡を取ることができています。」
「外国人のコックさんが食事を作ってくれますが、とてもおいしくて、日々の食事にはかなり満足しています。」

(左)食卓を囲む実習生

(左)食卓を囲む実習生

(右)うな丼の日もある

(右)うな丼の日もある

――商船系学校での練習船実習との違いはどんなところでしたか?
練習船と社船実習との大きな違いは、船を「訓練の場」としてではなく、「実際に運航し、貨物を運ぶ場」として捉える意識だといいます。

「練習船では“学ぶ場”という意識が強かったですが、社船実習では実際に貨物を運び、運航しています。その中で、自分がどう関わるか考えるようになりました。」
「水や電気の使い方ひとつが、船の運航やコストに関わります。普段はあまり意識しないことを、日常的に考えながら過ごしています」

海水から真水をつくる造水器、巨大船の電力を担う発電機など、実習を通してライフラインを支える機器の働きも学んでいきます。水や電気も含め生活に欠かせないものが船内で生み出され、消費される過程を実際に目にすることで、ムダなく効率よく船を運航する当事者意識が醸成されているようです。

「生活面でも大きな違いがありました。練習船では6人1部屋など集団生活が当たり前だったのですが、今は自分の個室で生活しています。他にも、電圧が220ボルトであること、船内通貨がUSドルであることなど、細かな違いも含めて、商船ならではの環境を実感しました。」

社船実習生

社船実習の内容

――社船実習とは、具体的にどのようなことを行うのですか?
実習は、朝8時から夕方5時まで行われます。インストラクターによる講義のほか、航海士・機関士に分かれて、実務に近い整備作業や当直業務などに取り組みます。航海士は貨物船ならではの荷役やバラスト※1のオペレーションについて、機関士はビルジ※2の処理や排出ルールなど、学生時代には触れる機会が少なかった実務に近い内容も学びます。
(※1)バラスト:船内の専用タンクに海水を注排水し、船の姿勢を制御する作業。(※2)ビルジ:船底に溜まった結露水などの液体。油分が含まれる場合は取り除いて排出する。

実習では課題もあり、レポートを書いて提出するだけでなく、自分の言葉で説明する場面もあります。
「今は安全・救命設備の課題をやっています。ライフラフトや消火器、救命設備などを、実物を見たり手順通りに操作を行ったりしてひとつひとつ確認していきます。」
「学校で学んだ知識が、社船実習で初めて現場のルールとしてつながった感じがします。」

貨物船として実際に運航している船で学べる点こそが、社船実習ならではの特徴です。
「船を“ビジネス”としてどう動かしているかを学ぶ実習だと感じています。それが一番おもしろいところですね」

講義の様子1

講義の様子

講義の様子2

食料積込時の様子

食料積込時の様子


――自由時間はどのように過ごしているのですか?
「教室に残って22時ごろまで勉強している人もいます。強制される雰囲気ではなく、それぞれのペースですね。」

部屋に戻り、同期とゲームをして過ごすこともあるそうです。
「ゲーム機を持ってきてBluetoothでつないで遊んだりもします。船の中でも、意外と普段に近い生活ができています。」
また、乗船中にはクルーの誕生日を祝う場面もありました。
「誕生日が重なったクルーがいて、船内でささやかなパーティーがありました。国籍の違うクルーも含めて、みんなで集まってお祝いしました。」
「英語が完璧じゃなくても雰囲気で通じる感じがあって、すごくフレンドリーだなと思いました。」
日中は実習や課題に取り組み、夜はそれぞれが自由な時間を過ごします。夜も勉強を続ける人もいれば、しっかり休む人もいました。

日本での寄港では、上陸も楽しんだそうです。
「名古屋港に寄港した際に名古屋駅まで行って買い物をしました。」
「湯船に浸かりたくなったので、近くのスーパー銭湯でリフレッシュしました。」

【コラム②】~インストラクターってどんな人?~

IRIS LEADERで実習生の指導に当たるインストラクターのお二人にも話しを聞きました。

田中船長(航海士担当、写真右):2011年入社、2026年船長登用、2025年より現職。西岡一等機関士(機関士担当、写真左):2016年入社、2026年一等機関士登用、2026年より現職。

田中船長(航海士担当、写真右):2011年入社、2026年船長登用、2025年より現職。
西岡一等機関士(機関士担当、写真左):2016年入社、2026年一等機関士登用、2026年より現職。

――インストラクター業務について教えてください。
教室での「講義」と現場での「実務」の説明を繰り返し、これまで学校で学んできた「知識」と商船における「職務」をリンクさせています。実習生には可能な限り実務に即した経験をしてもらいたいと考えていますが、安全運航に支障がないよう事前教育や監督をすることの難しさも感じる業務です。

――1日の実習生のスケジュールを教えてください。

午前・午後の実習では教室での講義、船内での実技実習を行います。航海士・機関士とともに航海当直や出入港作業を行い、実際の運航業務を間近で学ぶこともあります。自由時間の使い方はさまざまで、自習、映画鑑賞、ゲームなど各々が自由に過ごしています。

実習生のスケジュール

今後の抱負・船乗りを目指す学生さんへのメッセージ

「同期と一緒に乗船できるのが楽しいですし、インストラクターの方も質問しやすい雰囲気をつくってくださっているので、一人で悩んだり抱え込んだりすることはありません。早く立派な士官になれるように日々の実習を頑張りたいです。」
「乗る前は不安も多かったですが、初めての寄港地にワクワクもありますし、楽しいことも多いです。」
「英語に不安を感じていましたが、外国人乗組員も母国語ではない英語を頑張って話しているんだと分かり、伝わるように話せばいいんだと気が楽になりました。気さくな人が多いので、なんとかやっていけるなと感じています。」
「乗ったら乗ったで意外と楽しくやれました。不安とワクワク、両方あっていいと思います。」

慣れない環境に戸惑う場面もありつつも、少しずつ船のリズムに馴染み始めています。不安を抱えながら、一歩ずつ現場を知り、仲間と関係を築いていく――。
社船実習は、船乗りとしての知識や技術を学ぶだけでなく、実際の運航の中で「仕事としての船」を体感する貴重な時間です。この経験は、次代の海上職を担う人材としての成長につながっていくことでしょう。