これが私たち日本郵船の「仕事」ですチームワーク

(前編)日本郵船が大切にする「船内融和」―乗組員インタビューで見えた、安全運航の「見えない推進力」

IRIS LEADER

「船内融和」とは、船の中で働く乗組員同士が互いを尊重し合い、円滑な人間関係のもとで生活と仕事を共にしていくための“雰囲気”を指す言葉です。約20~30名の乗組員が長期間、同じ空間で過ごすのが貨物船の職場。船内融和が保たれている船では、年齢や役職、国籍の違いを越えて声を掛け合い、船の機器に問題が起きても、協力して解決しようとする雰囲気があり、乗船していてとても気持ちがいいものです。そんな「船内融和」をテーマに、自動車運搬船「IRIS LEADER」の乗組員にインタビューをしました。

前編①「渡される機関長のバトン」矢野機関長・射手機関長
前編②「居心地のよさがつくる船の魅力」二等機関士・三等航海士・三等機関士

後編①「一等航海士として初めての乗船と紡がれる技術の系譜」松本一等航海士・板垣一等航海士
後編②「船長・機関長に聞くマネジメントのコツ」 小西船長・矢野機関長 吉岡・鈴木(陸上勤務海技者)
後編はこちら→日本郵船が大切にする「船内融和」 ―乗組員インタビューで見えた、安全運航の「見えない推進力」(後編) | BVTL Magazine | 日本郵船株式会社

「船内融和」は、船全体を一つのチームとして機能させること、そして船員として、また技術者として「技術を紡いでいく」ための重要な土台です。インタビューからその具体事例をお伝えします。

①渡される機関長のバトン。不安や懸念は、隠すものではなく共有するもの

訪船時、IRIS LEADERでは機関長交代のための引継ぎが行われていました。約4か月の乗船期間を終えた矢野機関長は、次の射手機関長へバトンを渡します。

これから下船する矢野機関長(左)  後任としてバトンを受け取る、射手機関長(右)

これから下船する矢野機関長(左)
後任としてバトンを受け取る、射手機関長(右)

矢野は機関長に昇進後、初めて乗船したのがIRIS LEADERでした。「何事もない時でも、何か起きるかもしれない、といつでも最悪のケースを考える4か月間でした」と機関長の責任の重さについて話します。最悪のケースを考えるのは、機器の調子が悪いときに、「動かして大丈夫か、止めるべきか」を早い段階で見極める必要があるからです。例えば主機(メインエンジン)を止めるという判断をした場合、それは船の運航を一時的に止めることになります。船を止めてしまったら、お客様と約束している期間に貨物を届けられないかもしれないし、採算性も悪くなるかもしれません。機関長・機関士にとって、このような「迷う判断」を最終決定する際には、数値や手順だけで決定することは難しく、技術者としての積み上げてきた経験に裏打ちされる部分も大きいのです。

「私が気をつけたのは、自身が感じている不安や懸念を一人で抱え込んで消化するのではなく、この不安をどう言語化・整理して、チームとして納得する答えに導くかです。もちろん最終決定の責任は機関長である自分ですが、自分にはない経験を持つ部下に意見を求める・相談をする、決める前に船長に相談・共有する。そんなステップが重要です」と矢野機関長は語ります。「そういうチームの風土づくりのためには、意見を否定されにくい、ディスカッションできる、そんな雰囲気を作ることが必要です。また共有すること・相談することで、チームに信頼関係が積み上がります」聞くことそのものが良いチームをつくる、というニュアンスで語られていました。 「話し合う時間的な余裕が常にあるとは限らないので、緊急時にはすぐ止めなければならないことだってあります。平時の合意形成と非常時の即断を分けて考えることも大切です」

木村一等機関士(左)は両機関長に絶大な信頼を置いている

木村一等機関士(左)は両機関長に絶大な信頼を置いている

船のエンジンなどの各種機器の整備状態や懸念事項、船の燃料や水、作動油(注)などの状態や消費量、供給予定などが引き継がれる。新機関長にとっては、この引継ぎが次の航海を円滑に進めるための重要な情報になる。機関長として「ちょっと気になっていること」も口頭で引き継ぎされる。
(注)油圧シリンダーやモーターなどの油圧機器において、圧力を伝達する媒体となる油。船舶では操舵装置や荷役機械などに広く用いられる。

②居心地のよさがつくる船の魅力

船内での食事の時間は、仕事とプライベートの話題が自然に混ざる場所です。二等機関士、三等航海士、三等機関士の夕食にお邪魔しました。食事中は船のスケジュールや整備のこと、天候のことなど様々な話題が食卓に上りますが、船上の通信環境が大きく改善したため食卓の話題が増えているそうです。休暇の過ごし方や最近のニュース、趣味の話がしやすくなり会話の材料が増えたと言います。

一日の整備作業が終わった夕食は大きな楽しみの1つ

一日の整備作業が終わった夕食は大きな楽しみの1つ

夕食後はさらに、ボードゲームやテレビゲームなどをするため集まることも多々あるとのこと。その中に船長や機関長が混ざることもあります。食事の時間と同じで、こういったプライベートのやわらかな時間の中でも「そういえば、〇〇の機器がすこし調子悪い気がするんですよね」と業務に関わるコミュニケーションを自然と行うことができています。

印象的だったのは「僕たち、先輩を“いじる“こともできますよ!」という言葉でした。これだけを聞くと、「先輩をいじるなんて…」と感じる人もいるかもしれません。しかしIRIS LEADERの若手メンバーたちから聞くと、絶対的な信頼とリスペクトがあるからこその距離感を感じます。「先輩方が、普段からフランクに話しかけてくれるので仕事の相談が本当にしやすいです。この居心地の良さと抜群のチームワークが、間違いなく安全運航につながっていると思います。雰囲気の良い船は、乗船していて楽しいですよね。」

船員

IRIS LEADERの船内は、基本的に「アットホームな雰囲気」「居心地がいい」そんな空気が流れているように感じられました。彼らの言葉からは、船員同士の距離感の近さが伝わってきます。船内の雰囲気は良質で密なコミュニケーションによる安全運航達成へのキーポイントであるだけではなくて、本人たちが「この船に乗っていてよかった」「この上司と一緒に仕事ができてよかった」と、そう思えるための基盤でもあります。昨今よく言われる「社員のやる気」、「エンゲージメント」にも直結する船内融和。上司も部下も話すことを大切にして、「安全に運航できる、乗っていて楽しい船」そんなIRIS LEADERでした。