日本郵船の舞台裏私たちの働き方

世界初、再エネのみで動く洋上データセンターが実証実験を開始 ——開所式を支えた若手社員に聞く

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2026年3月、横浜港にて洋上浮体型データセンターの実証実験が幕を開けました。再生可能エネルギー100%での運用を目指す、世界でも前例のない大きな挑戦です。そのお披露目となった開所式を、縁の下からひとりの若手社員が支えていました。

“海に浮かぶデータセンター”に高まる注目

2026年3月25日、横浜港大さん橋ふ頭。日本郵船・NTTファシリティーズ・ユーラスエナジーホールディングス・三菱UFJ銀行・横浜市の5者が共同で取り組む、再生可能エネルギー100%での運用を目指す「洋上浮体型データセンター」(以下、洋上DC)が、横浜港のミニフロート(浮体式係留施設)上で実証実験のための稼働を開始しました。

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横浜大さん橋ふ頭に設置されている実証プラント全景

開所式では、共同事業者によるテープカットセレモニーや、洋上DCを見学するサイトツアーが実施されました。クラウド事業者、データセンター事業者、官公庁、報道陣などが多数駆けつけ、この取り組みへの関心の高さが示されました。

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開所式で行われた共同事業者によるテープカットセレモニー。左から横浜市、 ユーラスエナジーホールディングス、日本郵船、NTTファシリティーズ、三菱UFJ銀行の各代表者

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将来的に実現を目指す洋上データセンターのイメージ図

洋上DCは、2022年に日本郵船の社員有志がワーキンググループを立ち上げ、試行錯誤を重ねながら事業化へと漕ぎ着けた、世界でも先進的なプロジェクトです。その革新性は広く認められ、2026年2月には内閣府主催の日本オープンイノベーション大賞総務大臣賞を受賞しました。

生成AIやクラウドサービスの普及によりデータセンターへの需要は急拡大する一方、電力消費の増大と脱炭素の両立、建設コストの高騰、用地確保の困難といった課題が山積みになっています。洋上DCはこうした問題を一気に解決しうる構想として生まれました。コンテナ型データセンター・太陽光発電設備・蓄電池設備を浮体上に設置し、世界で初めて洋上のデータセンターを再エネのみで稼働させます。さらに将来的には海水冷却の活用も予定されており、これにより通常の運用コストを3〜4割削減できる可能性も見込まれるといいます。

この事業が目指す未来の姿については、プロジェクトの中心メンバーたちが語ったインタビュー記事「日本郵船「洋上データセンター」商用化へ。未来へのモチベーション 」に詳しく紹介されています。将来は洋上風力発電所の近くに設置し、陸上の電力系統に依存しない耐災害性を備えたデジタルインフラの実現へ。海のポテンシャルを最大限に引き出す挑戦は、2030年ごろの本格的な事業化を見据え、着実に前進しています。

インタビュー

前例のない仕事が、人を育てる。若手社員が語る新規事業の舞台裏

そんな壮大なプロジェクトの開所式を、縁の下から支えた若手社員がいます。会場手配や関係各所との調整業務のリーダーに抜擢されたのが、2025年入社、イノベーション推進グループの韓です。大仕事を終えたばかりの彼女は、いま何を感じ、どんな未来を描いているのでしょうか。開所式直後にインタビューしました。

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イノベーション推進グループ 先端事業・宇宙事業開発チーム 韓さん

不安の末に得られた大きな達成感

―― 準備から当日までを振り返ってみて、率直な気持ちをお聞かせください。

開所式を無事終えて、まずは正直ほっとしています。始まってからは一気に駆け抜けた感覚で、終わった今もまだ実感が追いついていないところもあります。開所式の準備は、昨年冬ごろから進めてきました。会場手配や関係各所との調整では、直前まで変更が相次ぐなど難しい局面もありましたが、無事大きなトラブルもなく素晴らしい式典にすることができ、今は安堵と達成感に浸っています。

本音を言えば、「新入社員の私に務まるのだろうか」という不安はずっと頭のどこかにありました。でも、わからないことがあればチームの先輩に臆せず相談し、多くの方々に助けていただきながら、なんとかここまで来ることがでました。それだけに、今日この景色を一緒に見られたことが、本当に嬉しくて。新卒1年目で、こんな経験をさせてもらえるとは思っていなかったので、ありがたいという気持ちでいっぱいです。

―― 開所式を経て、この事業への見方に変化はありましたか。

クラウドサービスや生成AIの普及により、データセンターの需要が急速に高まっていることは知識として理解していました。でも、今回の開所式でいらっしゃった方々の熱気を肌で感じ、洋上DCが有力な選択肢として大いに期待されていることを、実感を伴って感じました。準備を進める中で、各分野のプロフェッショナルの方々と接する機会が多くありましたが、皆さんが洋上DCに真剣に向き合っている姿を間近で見るたびに、この事業の将来性をひしひしと感じていました。今日の開所式はその実現に向けた手応えを感じた一日になりました。

チームから学んだ、新しい道を切り拓く姿勢

―― そもそも、イノベーション推進グループへの配属はどんな経緯だったのでしょうか。

日本郵船と聞いて海運会社というイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、実は洋上DC事業や宇宙事業、電子通貨事業など、さまざまな新規事業に積極的に挑戦しています。イノベーション推進グループは、そうした新たな事業領域の創出と、社内のイノベーション文化を育てる役割を担っています。

入社時のアンケートに「いつか新規事業に携わりたい」と書いたくらい、私にとって、イノベーション推進グループは憧れの部署の一つでした。だから、配属が決まったときは、正直「えっ、本当に?」という気持ちでした。嬉しい反面、これほど早くチャンスが訪れるとは思っていなかったので、驚きの方が大きかったかもしれません。現在は、洋上DC事業と宇宙事業のサポート業務を担当しながら、日々奮闘しています。

―― 実際に配属されてみて、なにか変化はありましたか。

驚くほどたくさんの学びを得ることができた一年でした。特に物事を捉える視点や考え方の幅が、想像以上に広がったと実感しています。洋上DCをはじめ、新規事業には教科書がないことばかりです。前例のない課題に次々と向き合っていくなかで、「新しい道を切り拓くって、こういうことなんだ」と実感する毎日です。特に印象深いのが、チーム員を中心とした周囲の方々の動き方や考え方です。課題に直面したとき、立ち止まらずにどんどん判断して進んでいく。そんな姿勢を間近で見て、「仕事ってこうやって動かすんだ」と日々多くの学びを得ています。

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開所式が無事に幕を閉じ、コンソーシアムメンバーの笑顔あふれる一枚

―― ご自身が仕事を進める上で、難しいと感じた場面はありましたか?

開所式を担当し始めた頃は、関係企業や所管省庁との調整など多岐にわたる業務に圧倒される日々で、例えば、メール1本書くのにも必要以上に悩んでしまい、すごく時間がかかってしまうこともありました。そうした中でも、OJT (On-the-Job Training) 担当の先輩が丁寧フォローしてくれたおかげで、安心して取り組むことができ、少しずつ自信がついてきたのを感じます。

あと、自分でも意外だったのが、失敗を前向きに捉えられるようになったことです。もともとミスをすると、かなり落ち込んでしまうタイプでした。でも、周囲のメンバーが本当に温かくて、失敗しても責めるのではなく、一緒になって考えてくれる雰囲気があるおかげで、「今のうちにたくさん失敗を経験し、自分の引き出しを増やしておこう」と思えるようになりました。これがなによりの成長だと感じています。

未来へとつながる成長と挑戦

―― 今、描いている目標や将来のビジョンを聞かせてください。

直近の目標は、各分野のプロフェッショナルの方々と、担当プロジェクトについて対等に話せるようになることです。今は勉強することが多いので、まずはそこを目指したいと思っています。将来的なビジョンはまだはっきりとは具体化できていませんが、技術とビジネス、両方の知識を身に付けて、その橋渡し的な役割ができたらいいなと思っています。「私だからできること」を見つけて、自分なりの色を出して貢献していきたい。それが今の私のモチベーションになっています。

―― 最後に、就職活動中の学生へのメッセージをお願いします。

私が日本郵船を選んだ理由のひとつは、選考を通じて感じた社内の温かい雰囲気でした。この直感を信じて入社したおかげで、今は本当に貴重な経験と学びを得ています。学生時代は国際系の学部にいましたが、「卒業後にこれをやりたい」という明確な目標があったわけではなくて、それがずっと悩みでもありました。でも今思うのは、何も定まっていないことは、むしろ可能性の塊だということです。同じように悩んでいる人がいれば、そう伝えたいです。日本郵船は、一人ひとりの可能性を信じて、成長の機会を与えてくれる会社だと思っています。私のように直感がグッときたら、ぜひ一緒に頑張りましょう。