新規事業を生み出し、挑戦する人材を育てる――「NYKデジタルアカデミー」第9期生が語る、挑戦と成長
公開日:2026年05月13日
更新日:2026年05月13日

多様なバックグラウンドを持つメンバーが集い、学習と実践を通じて新たな価値を創造する——。日本郵船の人材育成プログラム「NYKデジタルアカデミー」の第9期を修了した受講生たちが、9カ月間の学びと挑戦、そこで得た気づきや成長について語り合いました。
NYKデジタルアカデミーとは
NYKデジタルアカデミー(通称「デジアカ」)は、2019年に日本郵船が創設した独自の研修プログラムです。リベラルアーツとビジネスの基礎を組み合わせた15回の座学、シンガポールとフィリピンでの海外短期合宿、そして3〜4名のチームで新規事業に挑む約半年間の演習——3つのパートを通じて、ビジネスリーダーとしての素養を実地で磨いていきます。年齢・部署・国籍を問わず日本郵船グループから公募で集まったメンバーが、デジアカならではの「非日常体験」を通じて成長していく場です。
【2019年の創設以来、108名の卒業生を輩出してきたNYKデジタルアカデミー】
9カ月間の集大成となる最終報告会
2025年5月、13名の受講生を迎えてスタートした第9期。座学、海外研修、そして新規事業演習と、約9カ月にわたる体系的なプログラムが幕を開けました。
【講義を行うNYKデジタルアカデミーの石澤直孝学長】
2026年2月5日、その集大成となる最終報告会の日を迎えました。 Ultimate White、Shocking Pink、Hunter Green、Wild Blackと名付けた4チームが壇上に立ち、社外の専門家やさまざまな企業と積み重ねてきた対話と試行錯誤の成果を次々と披露。グループ役員・社員約180名が見守る中、会場には緊張と熱気が入り交じった空気が漂っていました。
すでに協力先企業と事業化に向けて動き出しているものもあり、どれも具体的で夢のある事業案です。発表会の後、受講者全員に卒業証書が授与され、第9期は幕を閉じました。曽我社長は総評でこう語りました。「悩み抜きながら、最終発表までたどり着いたことに敬意を表したいです。全てのチームが『人』を中心に据えたテーマに取り組んでいたことに、時代の潮流と、それぞれの真摯さを感じました」。
9カ月間の試行錯誤や印象深い出来事、そして受講を通じて変わった自分自身について、各チームの代表者たちが一堂に会し、率直に語ってくれました。
【座談会】コミュニケーションを重ねることで生まれた、チームの一体感
第9期の各チーム代表メンバー。それぞれ部門や職種はさまざま
―― デジアカには国内外の日本郵船グループ企業から、年齢や部署、国籍を問わず多様なメンバーが集まっています。面識のなかった参加者同士が一つのチームとして動き出すため、どんな工夫があったのでしょう。
塩﨑:私たちのチームは、郵船クルーズと郵船ロジスティクス、日本郵船の社員3名で構成されました。それぞれ横浜、品川、丸の内に勤務しているのですが、ミーティングはできるだけ対面で行うことを意識していました。ざっくばらんなアイデアを書いた付箋をホワイトボードに次々と貼り付け、位置を入れ替えながら活発に議論を重ね、新規事業の方向性を探っていく。そうした地道なコミュニケーションの積み重ねが、チームの土台となりました。
日本郵船DX推進グループ スマートワークチーム・塩﨑さん、Hunter Greenチーム所属
小野:私たちも対面でのコミュニケーションを重視していました。3名全員が日本郵船本店で勤務していましたが、年齢も部署もそれぞれ違う。最初は手探りでしたが、互いの経験や強みを持ち寄り、どのスキルがどんな事業につながるかを洗い出すところから始めました。
NYK LNGシップマネージメント 安全品質グループ 安全環境品質管理チーム・小野さん、Ultimate Whiteチーム所属
海﨑:メンバーの1人が海外勤務中だったので、時間を決めてオンラインで対話しました。新規事業の議論がメインでしたが、あえて雑談も取り入れることで、互いが徐々に打ち解けていきました。意見を出しやすい関係性が、自然と出来上がったと思います。
日本郵船 イノベーション推進グループ デジタルアカデミーチーム・海﨑さん、Wild Blackチーム所属
田嶋:演習が始まった9月は、メンバーの都合が合わずなかなか時間が取れなくて。それなら11月の海外研修で一気にアイデアを詰めようと決めました。海外研修はまとまった時間を一緒に過ごすので、距離もグッと縮まりましたね。
日本郵船 DX推進グループ データマネジメントチーム・田嶋さん、 Shocking Pinkチーム所属
小林:コミュニケーションを密に取ることを、とにかく意識しました。普段面識のないメンバーが打ち解けるには、やはりそれなりの時間が必要。短期の講座ではなかなか難しいですが、デジアカの9カ月という期間が、チームの絆を深めてくれたと感じています。
日本郵船 サステナビリティ経営グループ サステナビリティ経営チーム・小林さん、 Shocking Pinkチーム所属
年齢、部署、国籍の違いが、新たな視点を引き出す
―― 背景もスキルも異なるメンバーが集うからこそ、一人では気付けないことがある。そんな化学反応が、各チームで生まれていました。
小野:演習では、異なるバックグラウンドを持つメンバーによって生み出される相乗効果を強く感じました。誰が指示するわけでもないのに、それぞれの得意分野を生かして、気付けば役割分担ができている。チームワークってこうして自然に生まれるものなんだと、あらためて実感しました。
海﨑:私も同感です。それぞれが得意な部分を生かし、苦手な部分は補い合う。そのバランスがうまく働いて、非常に良い関係性でプロジェクトを進められたと感じています。
小林:私は海上職ですが、同じチームの田嶋を見ていると、まったく違う視点を持っていて、「なるほど!」と感じるポイントは多かったですね。新規事業に携わるのは初めてだったので、本当に頼りにしていました。
田嶋:いえいえ、私も手探り状態でしたよ(笑)。チームで話していると、思いがけないアイデアが飛び出してくることの連続で、とても刺激的でした。
塩﨑:私たちのチームにはロシア出身のメンバーがいて、その発想が印象的でした。「コンフォートゾーン(心理的に快適な空間)」という彼女が提示したキーワードが、そのまま新規事業の核につながっていったんです。海外でさまざまな挑戦を積んできた経験があるからこそ出てきた言葉だと思います。多様な視点に触れる機会として、本当に良い経験になりました。
最終発表を終えて修了証を受け取った、NYKデジタルアカデミー第9期受講生たち
試行錯誤の連続が、気付きと成長につながる
――演習では、課題設定から仮説構築、外部ヒアリングまで、事業化に向けた土台を一から積み上げていきます。どこで壁にぶつかり、どう乗り越えたのか。それぞれのリアルな声が集まりました。
田嶋:一番難しかったのは、なんといっても最初のテーマ設定ですね。まずテーマを決めないとその先の方向性が定まらない。何度も振り出しに戻りながら、ようやく前に進めるようになるまでかなり苦労しました。
小林:本当にそうです。座学で学んだメソッドに何度も立ち戻って考え直しました。チームで話し合い続けることで、少しずつ突破口を見つけていきました。
小野:2つのテーマに取り組んでいましたが、片方のテーマは企業へのヒアリング段階で壁にぶつかりました。「事業化するには現実的でない」と厳しい意見をいただくこともあって。 最終的に事業化プランには至りませんでしたが、どう相手に伝え、納得してもらうかを試行錯誤した経験は、何物にも代えがたいものでした。
塩﨑:私たちもヒアリングが難関でした。テーマの大枠は早めに決まっていたのですが、いざ話を聞いてみると、事業化の壁がどんどん出てくる。それをまた3人で集まって考えるのですが、スケジュールの兼ね合いも大変で……その繰り返しでしたね。
海﨑:私たちはテーマ設定とヒアリングの両方で苦労しました。12月の時点でもテーマが決まらず、半ば諦めモードに入っていたくらいです(笑)。1月にようやく決まって、そこからはアクセル全開。時間がないことがかえって「やるしかない!」という気持ちに火をつけてくれて、結果的には良かったのかもしれません。
田嶋:時間があるとかえってダラダラやってしまうリスクもありますよね。リミットがあるからこそスイッチが入る、みたいな部分は私たちのチームも同じでした。
海﨑:全員が納得できないと、結局どこかで停滞してしまう。だからこそ時間が全てではないと、演習期間を通じてあらためて感じました。
海外研修が、大きなターニングポイントに
――成長を感じたフェーズはそれぞれ異なりますが、2回の海外研修は特に印象深い経験として語られました。
小野:7月のシンガポール研修が、特に心象深い経験になりました。街の人に声をかける街頭インタビューの課題があって、緊張しながらもやってみると意外に楽しくて。そこで一つ、自分の殻を破れた感覚がありました。その経験が、演習での企業ヒアリングにも確実に生きたと思っています。
塩﨑:私は11月のフィリピン研修が印象深いですね。「海技者の環境をより良くしたい」というテーマで取り組んでいたので、当社が共同経営するマニラの商船大学「NYK-TDG Maritime Academy」の学生へのヒアリングが事業の方向性を明確にしてくれました。「日本郵船でナンバーワンの海技者になりたい」と覚悟を持って地元を出てきた18歳の学生の言葉には、思わず身が引き締まる思いでした。
海﨑:ターニングポイントは二つあります。まず演習です。企業にアポを取り、アイデアをプレゼンして納得してもらうという経験が、私には初めてのことでした。最初は不安でしたが、回を重ねるごとに度胸がついていく実感がありました。もう一つは海外研修です。英語でのディスカッションの難しさを痛感すると同時に、もっと勉強しようというモチベーションにもなりました。
小林:私は全期間を通して成長できた感覚があります。デジアカは全てがつながっていて、フェーズごとに異なる新たな視点が生まれていきました。
デジアカを経て変わった、スキルと価値観
――9カ月を終えた受講生たちは、何を得て、何が変わったのか、振り返ってもらいました。新規事業やイノベーションへの見方も、受講前とは大きく変化していました。
田嶋:意識していたのはプレゼンテーション力です。ヒアリング結果を分析し、いかに説得力ある形で伝えるか。それを常に念頭に置いて取り組みました。以前より確実に成長できたと感じています。そしてもう一つ、デジアカを通じて築いた人脈は、今後も大切にしていきたい財産です。
海﨑:明らかに変わったのは、意図を正確に伝えるための文章・資料づくりのスキルが上がったことです。デジアカで得た思考を、これから具体的に業務へ落とし込んでいきたいと思っています。
塩﨑:新規事業において、共感を生み出すことの重要性をあらためて実感しました。いかに相手の心を動かすか。各チームの事業案はどれも魅力的で、自分のモチベーションにもなりました。引き続きチーム一丸となって事業化に向けて進んでいきたいと思っています。
小野:新しいことに挑戦する心理的ハードルが、以前より確実に下がりました。入社してから、船舶管理を中心に業務に携わってきたので、正直なところ、新規事業なんて自分には縁遠いものだと思っていました。でも実際に飛び込んでみたら、純粋に楽しいと感じられたんです。それが一番の発見でした。
小林:私も同じです。数年後には海上勤務に戻ることを考えると、新規事業は自分には関係ない世界だと決めつけていたところがありました。でもデジアカを経て、イノベーションは特別な人だけがやるものじゃない、誰にでもチャンスがあるものだと、認識が大きく変わりました。
挑戦が生み出す、新たな価値の可能性
新しい価値をつくる「挑戦」こそが、日本郵船の原動力といっても過言ではありません。デジアカで生まれた新規事業の芽は、すでに次のステージへと動き始めています。第10期ではどんなアイデアが生まれるのでしょうか。デジアカで培われた知識とスキル、そして行動力が、日本郵船グループの次なる挑戦を生み出す原動力となっていくはずです。







