世界が見える海運ゼミナール 海運を学ぶための書籍と講義案内
公開日:2026年03月11日
更新日:2026年03月10日

NewsPicksプロピッカー
日本郵船株式会社 調査グループ グループ長
林光一郎が教えます!
◆ここがポイント!
海運を体系的に学べる一般向け入門書は実は少ない
最初の一歩には無料で読める『日本の海運 SHIPPING NOW』が最適
世界標準の教科書は『マリタイム・エコノミクス』
イノベーションの衝撃を知るなら『コンテナ物語』
実務家から直接学べる松山大学の公開講座は国内屈指の内容
海運をもっと深く知りたい方へ。書籍と講義という二つの入り口から、海運の全体像とダイナミズムに触れるための最良の学び方を紹介します。
海運を学ぶお薦めの書籍3冊
このトピック「日本郵船 BVTL Magazine大学!世界が見える海運ゼミナール」は、当初想定していたよりもはるかに多くの方に反響をいただいており、外航海運(海外と日本を結ぶ海運)というマイナーなテーマにこれほど多くの方が興味を持ってくださること、ありがたく思うだけでなく、それ以上に驚いています。
その熱意にお応えすべく、今後も興味を持っていただけるように記事を書きたいと思いますが、今回は「それだけでは足りない、もっと海運について学びたい」という方向けの情報ソースをご説明します。
学ぶための情報ソースという観点で真っ先にご紹介すべきは入門書、テキストでしょう。しかし、新書レベルの手頃な入門書、気楽に手に取ることができ、かつ海運のメカニズム(仕組み)をある程度理解できる書籍は、なかなか見当たりません。
その種の入門書は「海運」ではなく「船」の入門書であったり、物流の入門書の一部として海運が書かれている(そして海運の理解に必要なことは書かれていない)ものであったりする場合が多いのです。
こうした入門書の手前の段階として、海運について知りたい方が最初に手に取るテキストとしては、日本海事広報協会が毎年発行しているパンフレット『日本の海運 SHIPPING NOW』をお薦めします。海運に関わる際に必要な情報を幅広くカバーした、非常に優れた資料です。日本海事広報協会ウェブサイトから無料でダウンロードできます。
日本海事広報協会『日本の海運 SHIPPING NOW』
https://www.kaijipr.or.jp/shipping_now/
この水準を超えて、海運の世界で起きていることのメカニズムを知りたいと考えたときには、いきなり大学レベルの教科書になります。
大学レベルのテキストに本気でチャレンジしたいという方には『マリタイム・エコノミクス』(マーティン・ストップフォード著、日本海運集会所)をぜひ手に取っていただければと思います。
『マリタイム・エコノミクス』は、世界標準になっている海運経済学(海運を経済の視点で分析する学問)の教科書の決定版です。上下巻で合計1140ページ、6600円という大著ですが、特殊な予備知識は必要なく、興味深いエピソードも豊富に盛り込まれています。一気に読み切るのはきついということであれば、必要な部分を辞書的に使うことも可能です。
海運の面白さやダイナミズムに触れられれば、海運の全体像が網羅的・俯瞰(ふかん)的にカバーされていなくても構わない、という方には、『コンテナ物語』(マルク・レビンソン著、日経BP)を最初の1冊としてお薦めします。
『コンテナ物語』はあまりにも有名な本で、いまさらと思われるかもしれませんが、海運の一角で起こったイノベーションが世界をガラリと変えた衝撃をリアルに感じさせてくれる点で、唯一無二の存在です。
松山大学の「海事経済論」公開講座
海運を学ぶ情報としては、テキストの他に講義があります。こちらは、松山大学「海事経済論」公開講座をご紹介したいと思います。
松山大学が開講しているM汽船寄付講座「海事経済論~世界経済を担う愛媛の海運産業~」(※2026年度開講日程未定)
海運業界以外の人にはあまり知られていませんが、愛媛県には、造船業と船主業(船を所有・運航する事業)を中心とする、世界でも有数の規模の海事クラスタ(関連産業が集積した地域)が存在します。この講義は、松山に拠点を置く、船主業のM汽船の寄付講座(売名が目的ではないため匿名)で、学外の人でも無料で受講できる公開講座です。
松山大学「海事経済論」公開講座のパンフレット(2025年度)
全15回の講座の内、大学教員による講義は2回で、それ以外は海運会社、石油会社、銀行、造船業、総合商社、海上保険、港湾など、さまざまな業種の実務家が講師を務めます。私も「日本の海運業」の回で講師を担当しました。
本講座は海運に関するトピックを包括的にカバーし、それぞれのトピックを専門家が講義する、日本で最良の海運講座だと考えています。
講義は松山大学キャンパスでの会場参加のみですが、全15回を通して受講するだけでなく、興味関心のある回を単発で受講することも可能です(パンフレットには明記されていませんが、確認済みです)。
近隣在住の方以外でも、観光を兼ねて受講を検討してみてはいかがでしょうか。ちなみに松山大学のキャンパスは市内中心部にあり、松山城の隣という観光にも便利な立地です。
〈まとめ〉
今回の記事では、海運に関するお薦め書籍として『日本の海運 SHIPPING NOW』『マリタイム・エコノミクス』『コンテナ物語』の3冊を、講義として松山大学「海事経済論」公開講座をご紹介しました。読者の皆さまが、海運に関する見識(知識と理解)を広げる参考になれば幸いです。






