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日本郵船 BVTL Magazine大学!世界が見える海運ゼミナール 数字で見る海運の“底力”。世界貿易における圧倒的存在感

LNG船

NewsPicksプロピッカー
日本郵船株式会社 調査グループ グループ長
林光一郎が教えます!

このトピックスをご覧の皆さんは多少なりとも海運や貿易に興味や関心をお持ちだと思います。世界貿易の主役は、実は海運です。輸送手段ごとの比率や品目別内訳から、海運の圧倒的な存在感を数字でひも解きます。

◆ここがポイント
世界の国際貿易輸送量において海運は約86.6%を占める
トラックと鉄道輸送を合わせても海運の6分の1以下の規模
航空輸送は輸送量では0.2%だが付加価値の高い貨物が中心
海運の輸送量の約8割は資源関連(バルク貨物+液体貨物)
貨物船の船種別船腹量ではバルカーが最大シェアを占める

「海運が世界の貿易の中でどれくらいの割合を占めているのか?」

そんな素朴な疑問を持ったことはありませんか。日本の貿易に限れば、実に99.5%(トン数ベース)が海運によるもので、この数字はインターネットで簡単に見つけることができます(出所:日本海事広報協会『日本の海運SHIPPING NOW 2025-2026』)。

なお、最新版の公開リンクはこちらです。
日本の海運 SHIPPING NOW | 日本海事広報協会

でも世界の海運については案外見つからないんですよね。そこで国際貿易における海運の存在感を数字で探ってみることにしましょう。調査機関や発表のタイミングが違うため、全体量ではなく比率を中心にご説明します。

国際貿易に海運が占める割合

国際貿易における海運の割合を見てみましょう。日本は島国なので貿易の手段は海運か航空のいずれかですが、陸上国境を持つ国ではトラックや鉄道による貿易も発生します。この四つの輸送手段ごとの比率を比較します。比率の計算方法には重量(トン)、輸送量(重量×距離=トンキロ)、金額(ドル)などがありますが、今回は輸送手段ごとの輸送能力に注目するため輸送量を用います。下記のグラフは経済協力開発機構(OECD)傘下機関であるITF(国際交通フォーラム)のデータです。

円グラフ
世界の貿易の輸送手段別輸送量(単位:10億トン・キロメートル)
出所:ITF Transport Outlook 2017

世界の貿易における輸送量の割合は、海運が86.6%と圧倒的です。鉄道とトラックを合わせても海運の6分の1以下に過ぎません。トラックや鉄道による貿易は隣接国間に限られ、距離も短いため輸送量は小さくなってしまうのです。

航空輸送は0.2%で、重量の影響が大きく出るため他の輸送手段と比べて非常に小規模です。ただし、航空輸送貨物は重量当たりの価格が高い高付加価値貨物であることが多く、金額ベースでは存在感が増します。

海上輸送の品目別内訳

次に、海上輸送量の品目別内訳を見ていきましょう。海上貿易量は、運搬する船の種類ごとに区分するのが一般的です。

・バルク貨物:鉱石、石炭、穀物、セメント、肥料など
・液体貨物:原油、石油製品、液体化学品、液化ガス(LNG、LPG)など
・コンテナ貨物:コンテナ化された貨物全般
・その他貨物:自動車、プラント貨物など

この区分での内訳は以下の通りです。Clarksons社という世界トップの海事情報会社が発表したデータです。

円グラフ
世界の貿易の輸送手段別輸送量(単位:10億トン・キロ)
出所:Clarkson Shipping Review and Outlook March 2024

見てお分かりの通り、バルク貨物が48.7%と全体のほぼ半分を占めます。この数値に液体貨物を加えると約8割となり、資源系の荷動きが大部分を占めていることが分かります。一方で、一般消費財や工業部品など、サプライチェーンでよく耳にする品目の輸送量は2割強にとどまります。

船種別の船腹量

最後にこれら貨物を運ぶ船の量を種類別に見てみましょう。

輸送量に対応する値ですので、隻数ではなくトン数、それも載貨重量トン(Dead Weight Ton:DWT)で集計します。載貨重量トンとは船そのものの重量ではなく搭載できる貨物の重量を示したもので、海運の世界ではトン数とだけいえば載貨重量トンを指すことが普通です。

海上貿易量の品目に対応した貨物船の種類は、バルカー、タンカー、コンテナ船、その他貨物船です。この区分での内訳は以下の通りです。

円グラフ
世界の船種別船腹量(単位:百万DWT)
出所:Clarkson Shipping Review and Outlook March 2024

世界の貨物船の総量は22.7億トン(DWT)、内バルカーが4割強を占め、以下タンカー、コンテナ船と続きます。おおむね海上輸送量の品目別内訳と対応していますが、バルカーの比率がやや低く、タンカーの比率がやや高くなっています。

〈まとめ〉
世界貿易における海運の圧倒的な存在感を数字でご紹介しました。輸送量ベースでは海運が86.6%を占め、しかもその大半が資源系貨物です。こうした事実は、日常的に貿易や物流に関わる方にとっても新鮮に感じられるのではないでしょうか。今後は国別の比率や時系列での推移についても取り上げていきたいと思います。