日本郵船ってどんな会社?イベント

来たれ!未来の航海士。日本郵船のキッザニア福岡出展に込めた熱い思い

シミュレーターと子どもたち

日本郵船がキッザニア福岡に出展したパビリオン「船舶トレーニングセンター」。操船シミュレーター体験などを通じて航海士の仕事が体験できるとあって、2025年7月のオープン以来、人気を博しています。そもそもなぜ日本郵船はキッザニア福岡への出展を決定したのでしょう?その背景には海や船に興味を持ってもらいたいという熱い思いがあったのです。

子どもたちに海の仕事の魅力を伝えたい

「皆さま、本日はお忙しい中、キッザニア福岡『船舶トレーニングセンター』のグランドオープニングにお越しいただき誠にありがとうございます。この度、新しいパビリオンを通じて夢を育む機会を提供できることを大変うれしく思っております。子どもたちが航海士としてLNG(液化天然ガス)運搬船の操縦をシミュレーターで体験し、海上交通ルールや操船に関する知識を学び、仲間と協力して船を動かす喜びや達成感を味わってほしいと願っています。私たち日本郵船は、1885年の創業以来、海を通じて人々の生活を支えてきました。海運とは単に船で物を運ぶだけでなく、世界の人々をつなぐ大切な役割を担っています。『船舶トレーニングセンター』で、子どもたちに海や船に興味を持ってもらい、将来、海運業界の一員になる夢を抱くきっかけを持ってもらえればと考えております」

グランドオープンを前に実施したメディア取材会では、日本郵船の河野晃副社長は「チャンスがあれば“機関士の仕事体験”も加えたい」と語りました。

グランドオープンを前に実施したメディア取材会では、日本郵船の河野晃副社長は「チャンスがあれば“機関士の仕事体験”も加えたい」と語りました。


2025年7月21日、日本郵船「船舶トレーニングセンター」がキッザニア福岡にオープンしました。冒頭で紹介したのはオープン初日に行われた河野副社長のスピーチ(要約)です。日本郵船の熱い思いが凝縮されていました。

全ては4年前。ある社員の気づきから始まった

(左)サステナビリティ経営グループ サステナビリティイニシアティブチーム 長澤香 (右)サステナビリティ経営グループ 鈴木雄一

(左)サステナビリティ経営グループ サステナビリティイニシアティブチーム 長澤香 (右)サステナビリティ経営グループ 鈴木雄一

「当時4歳の娘と東京・豊洲のキッザニア東京に行ったときのことです。いろいろな職業体験をして、ああ楽しかったね、また来ようね、と話していたら、娘が『飛行機や自動車や電車のお仕事(パビリオン)はあるのに、どうしてパパの会社の船のお仕事はないの?』と尋ねられたのです」。そう語るのは日本郵船サステナビリティ経営グループ(当時広報グループ)の鈴木雄一。

キッザニア東京には、自動車や電車、飛行機に関わる職業を体験できるパビリオンはあるものの、船を体験できるパビリオンはありませんでした。

「日本郵船という会社は一般消費者向けにサービスを提供していないこともあり、いわば縁の下の力持ち、社会の中ではあまり目立たない存在なのかもしれない」(鈴木)

あらためて調べてみると、船乗りという仕事が、いわゆる『子どものなりたい職業』のトップ100にも入っていないことも分かりました。ちょうどその頃、日本郵船では将来の海運業を担う人材不足に目を向けているタイミングでもありました。そこで、社内の課題解決プロジェクト支援の枠組みを使って提案したのが、キッザニア福岡へのパビリオン出展だったのです。

船舶シミュレーターの航路である関門海峡付近の海図は、実際に航海士が使用するものを参考に制作。手書きメモは日本郵船の航海士が記入

船舶シミュレーターの航路である関門海峡付近の海図は、実際に航海士が使用するものを参考に制作。手書きメモは日本郵船の航海士が記入

「キッザニアへのパビリオン出展の提案は、社内で理解を示してくれる人は多かったものの、経営判断として『狙いは分かるがBtoB企業の日本郵船がなぜキッザニアに出展するのか?』という部分の理解を得るためには、時間が必要でした」と、日本郵船サステナビリティ経営グループ サステナビリティイニシアティブチームの長澤香がその後の経緯を語ります。

「キッザニアは子どもにとって初めての社会との接点であり、大人目線になれる場所です。仕事を体験するパビリオンに参加したことがないと、やはりイメージを膨らませにくいこともあり、キッザニアを通じて海運業や物流が子ども達にどう伝わるものなのかを一つひとつ丁寧に経営層に説明する必要がありました。キッザニア側と何度も議論し、他社事例や他社パビリオンに対する子どもたちのフィードバックを収集したり、社員へのヒヤリングを行ったりしました。その過程でキッザニア世代の子どもを持つ、海上職だけでなく陸上職の若手社員からも『子どもを連れて行きたい』という声を聞けたときは、社員のエンゲージメントを高めることにもつながり、案件を進めることは間違っていないと感じた瞬間でした」(長澤)

現在のパビリオンは航海士の仕事を船舶トレーニングセンターという形で表現していますが、「機関士と航海士の両方がいないと船上での仕事を見せているとはいえないのではないか」という意見があがり、どうしたら機関士の仕事を盛り込めるか議論を重ねました。日本郵船の機関士ほぼ全員にアンケートを実施してアイデアを募るなど、時間をかけて検討した結果、最終的にはキッザニア福岡では機関士と航海士の両方の仕事を一つのパビリオンで表現できなかったのですが、このような過程があったことで、プロジェクトに係るメンバーも納得感をもって船舶トレーニングセンターの構築に集中して進めることができました。

そして、経営陣との議論の中で、「キッザニアに視察に行きたい」というコメントを得られるまでになりました。
実際に現地で子どもが目をキラキラさせて仕事体験をしているのを目の当たりにしたことで、社長、副社長ともにプロジェクト最大のサポーターになってくれました。そして「日本郵船として出展する以上はグループ会社の協力も得て全力で!」とプロジェクト始動の承認を得るきっかけとなったのです。


<パビリオンオープンに先駆けて16日に実施したセレモニーの写真>

セレモニーに出席した日本郵船船長の樋口常務執行役員。「今この瞬間もどこかの海の上、どこかの船の上で行われているコミュニケーションをなぞり、全長約300mの巨大なLNG船の操船シミュレーションを体験してもらいます」

セレモニーに出席した日本郵船船長の樋口常務執行役員。「今この瞬間もどこかの海の上、どこかの船の上で行われているコミュニケーションをなぞり、全長約300mの巨大なLNG船の操船シミュレーションを体験してもらいます」

「船を知らない」ことがスタート地点だった

日本郵船は事業規模が大きく企業向けのビジネスが主体。キッザニアの主役である子どもたちに職業体験を楽しんでもらうにはどうすればいいか?

「最初にお話をいただいて思ったのは、“海運”という仕事のどこを切り取れば子どもたちの興味を引き出せるか、ということでした」。そう語るのは、国内のキッザニアを運営するKCJ GROUP事業開発本部コンテンツ部部長の杉原和馬さん。

日本郵船とキッザニアがミーティングを重ねて導き出したのが“航海士の仕事”でした。具体的には「航海士の仕事を船舶シミュレーターで再現し操船体験してもらう」こと。目指すゴールに向けて、課題を一つひとつクリアしていきます。

KCJ GROUP事業開発本部コンテンツ部部長の杉原和馬さん(右)と同部マネジャーの長田有紀子さん

KCJ GROUP事業開発本部コンテンツ部部長の杉原和馬さん(右)と同部マネジャーの長田有紀子さん

“航海士の仕事”では、船長の指示~復唱、操作~操作完了の報告など、チームワークやコミュニケーションが重要。さらに、舵を切るのが左なら「ポート」、右なら「スターボード」といった専門用語も登場します。だからこそ航海士という職業に成り切れるおもしろさや喜びがあるともいえますが、半面、体験のハードルを上げてしまうことも考えられました。

そこで、まずはキッザニアチームが船の専門用語や機器の働き、操舵室の中での航海士の動きや役割を把握した上で、船舶シミュレーターにどのように反映するかを検討しました。日本郵船の航海士が実際に訓練用として使っている船舶シミュレーターも研究しました。

船長役のスーパーバイザー(左)が子どもたちの操船をサポート

船長役のスーパーバイザー(左)が子どもたちの操船をサポート

船長役のスーパーバイザーの存在も欠かせません。船舶シミュレーターには3人一組で行う会話劇(ロールプレイ)の要素と、操作シミュレーションの要素がありますが、それぞれの動きがスムーズに行われるよう、スーパーバイザーがタイミングよく指示や操作を促し、3人の動きに目を配りながら“航海”の無事をサポートしています。

日本郵船が「船舶トレーニングセンター」を提供するからには、“本物の航海士”の職業体験を追求しました。船舶シミュレーターは実際の航海士が訓練用に使うプロスペックを盛り込み、船内マイクや操舵輪、エンジンテレグラフや羅針盤(コンパス) も本物の機材を使用しています。制服も、異なるのはサイズだけといってもいいほど細部まで再現されています。

日本郵船のグループ会社、日本海洋科学の協力により導入された船舶シミュレーター

日本郵船のグループ会社、日本海洋科学の協力により導入された船舶シミュレーター

航海士着用の制服・制帽を忠実に再現。制帽には本物のバッチを使用。ボタンもオリジナルの特注品

航海士着用の制服・制帽を忠実に再現。制帽には本物のバッチを使用。ボタンもオリジナルの特注品

緊張と興奮のわくわく体験。来たれ、未来の航海士!

「フルアヘッドエンジン、キャプテン!」
「スターボード10、キャプテン!」
「汽笛ならします! 」

スーパーバイザーの指示を受け、3人の子どもたちが画面に映し出された全長約300mのLNG運搬船の操船を行います。制服と制帽を着用した子どもたちは、小さいながらもこのときばかりは立派な航海士です。

船舶シミュレーター体験を含めて約30分のアクティビティを無事終えた子どもたち。最高の笑顔でその興奮をこんな風に伝えてくれました。
「他の船と連絡を取るなどコミュニケーションの大切さを学びました」
「役割を分担して協力して船を運転しているのが新鮮で楽しかったです!」
「船の仕事には航海士やキャプテン以外にどんな仕事があるのか調べたくなりました」

船舶トレーニングセンター

人口の減少によって労働力が不足していく状況は着実に海運業界にも影響を及ぼし始めており、将来の船員不足は早急に取り組むべき課題です。キッザニア福岡での仕事体験の思い出が心の片隅に残り、「日本郵船に入社しました!」と言ってくれる将来世代が1人でもいてくれたら、それは本当にうれしいことです。もしそうはならなかったとしても、子どもたちの夢を育むお手伝いを通じて、日本の将来世代の成長に少なからず寄与できる会社となることが、社会とつながるアプローチの一つだと思っています。

大人の日常は子どもの非日常。船の仕事は知らないことばかりですが、だからこそ、大人も子どもも興味や好奇心をくすぐられるはずです。

来たれ、未来の航海士!

おすすめの年齢は5~15歳ですが、3歳から体験可能なため、スーパーバイザーが的確に対応し、記憶に残る航海士体験を演出

おすすめの年齢は5~15歳ですが、3歳から体験可能なため、スーパーバイザーが的確に対応し、記憶に残る航海士体験を演出

船舶シミュレーターで操船するLNG運搬船。丸いタンクが並ぶ特徴的なフォルムであることもこの船が選ばれた理由の一つ

船舶シミュレーターで操船するLNG運搬船。丸いタンクが並ぶ特徴的なフォルムであることもこの船が選ばれた理由の一つ

キッザニア福岡 日本郵船出展「船舶トレーニングセンター」 https://www.kidzania.jp/fukuoka/activity/vessel-training-center.html

キッザニア福岡 日本郵船出展「船舶トレーニングセンター」
https://www.kidzania.jp/fukuoka/activity/vessel-training-center.html