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「日本郵船これくしょん」Vol.7モジュール船編 巨大かつ重い“モジュール”を運ぶ特殊船

モジュール船は、巨大で重量のあるモジュールを運ぶために設計された特殊な船で、低くフラットで広大な甲板が特徴です。重量物運搬船の一種に分類されます。

モジュール船が運ぶ“モジュール”って何?

この分野で用いられる「モジュール」とは、プラント建設において大型設備をあらかじめ工場などで組み立て、一つの機能的な単位としてまとめたものを指します。現地で一から設備を建造するのに比べて、あらかじめ組み立てたモジュールを現地で据え付ける工法には多くのメリットがあります。例えば、人件費の削減、遠隔地での労働力の不足や工期の遅延といった建設現場リスクを抑えられ、さらに環境リスクやその対策にかかるコストを低減できることなどが挙げられます。

モジュール船は、巨大で重量のあるモジュールを運ぶために設計された特殊な船で、低くフラットで広大な甲板が特徴です。重量物運搬船の一種に分類されます。

また、モジュール船では、プラント建設向けの輸送に加え、再生可能エネルギーの開発に関連したモジュールや部材の輸送も行っています。

洋上風力発電の基礎部材運ぶモジュール船 Project: TPC offshore windfarm Phase 1 Project – Demonstration Contractor: Consortium Jan De Nul n.v.-Hitachi Ltd.

洋上風力発電の基礎部材運ぶモジュール船
Project: TPC offshore windfarm Phase 1 Project – Demonstration
Contractor: Consortium Jan De Nul n.v.-Hitachi Ltd.

モジュール船が運ぶのは、数百トンから数千トンにもなる超重量級のモジュールです。形状も特殊で、安全な荷役や航海のためには緻密な計算が求められます。加えて、船自体にさまざまな特別な機能が備えられています。

甲板は広くフラットで、重い貨物にも耐えられるよう甲板の厚さは一般的な商船の約3倍!

甲板は広くフラットで、重い貨物にも耐えられるよう甲板の厚さは一般的な商船の約3倍!

超重量級の貨物を広い甲板に搭載

日本郵船グループの一員であるNYKバルク・プロジェクト(以下、NBP)は、日本におけるモジュール船運航のパイオニアです。前身である日之出汽船は1912年創業。当時、世界でも稀な重量物輸送専業船社として発展してきました。1978年には超重量貨物や超嵩高貨物の輸送ニーズに応えるべく、日本初のモジュール船「GULF BRIDGE」を就航。その技術力とノウハウは屈指といえる存在です。

その後、NBPを代表する外航モジュール船として、同一設計に基づいた姉妹船「YAMATAI」「YAMATO」が2010年に建造されました。本船の全長は162m、総トン数1万4538トン、貨物を積載する甲板は縦130m、横36mと広大で、一般的な商船のおよそ3倍の面積を誇ります。数千トン級の貨物を積載可能で、モジュール化された多様な大型貨物を輸送しています。

甲板の下には貨物倉(ホールド)がなく、満載時の喫水はわずか6.34mに抑えられており、岸壁が低い港でも容易に着岸できます。また、Ro-Ro(ロールオン・ロールオフ)方式による荷役にも適しています。船体にはクレーンなどの荷役装置を備えておらず、通常は貨物の下にSPMT(自走式多軸台車)を配置し、そのまま移動させて積み降ろしを行います。

甲板上では、バラストタンクや燃料タンクの通気口を側面にまとめ、メインエンジンの煙突も脱着式にするなどの工夫が施されています。船尾の係船機は甲板下に配置。貨物を積載していないときのモジュール船は、船橋部分を除き、広大なステージのようにも見えます。

脱着式の煙突は荷役を妨げないための工夫の一つ

脱着式の煙突は荷役を妨げないための工夫の一つ

高い技術力が求められる荷役

形状の異なる超重量貨物をRo-Ro荷役で積み込むには、バラスト水の調整が欠かせません。甲板と岸壁の高さを合わせ、積み込み時に貨物が傾かないよう船体の平衡を保つ必要があります。

甲板下のバラストタンクには、「YAMATAI」「YAMATO」ともに、1時間に2100㎥もの海水を移動できるポンプが3台搭載されています。荷役時には、潮の干満や貨物の荷重を事前に計算してタンク内のバラスト水を調整。積み込み中は、貨物の重量による傾きを補正するための注・排水や、左右に分かれたタンクのバラスト水移動をきめ細かく行います。運航中は、波の高さや風力などから貨物にかかる加速度を測定計算し、リアルタイムでの揺れのモニタリングや海象予測データを活用して、貨物の安全を確保します。

さらに「YAMATAI」「YAMATO」ならではの大きな特徴が、空気循環システムの搭載です。船首側の船底から吹き出す気泡が船体表面に沿って流れることで、船体と海水との摩擦抵抗を低減します。三菱重工業と共同開発したこのシステムにより、約6%の燃料削減効果が実証され、「YAMATO」は“シップ・オブ・ザ・イヤー2010”の特殊船部門賞を受賞しました。

バラスト水の注・排水

バラスト水の注・排水

空気循環システム。空気を船底に送り込み、気泡の層で船体と海水の間の摩擦を低減

空気循環システム。空気を船底に送り込み、気泡の層で船体と海水の間の摩擦を低減

世界のニーズに応じて新造船にも着手

世界の海を舞台に活躍しているモジュール船ですが、本来の用途を離れて国内で大いに役立てられたこともあります。

2011年3月11日の東日本大震災の際、日本国内に停泊していた「YAMATAI」は、神戸港で民間企業32社や地方自治体、全日本海運組合、NPOなどから寄せられた救援物資を積み込み、同年3月24日にはいち早く被災地の青森・岩手・宮城の各市町村へ輸送しました。

主な救援物資は飲料水、食料品、乳児用品、衛生用品、生活用品などで、20フィートコンテナ24本分にもなりました。積み荷には日本郵船グループが用意した物資も含まれています。発災当初は広い甲板を生かした洋上ヘリポート運用も検討されましたが、最終的に緊急性の高い救援物資の輸送が優先されました。

バージ(艀)を輸送するモジュール船

バージ(艀)を輸送するモジュール船

オイル&ガスの生産設備の他、再生可能エネルギーに関連するプロジェクトにおいても、モジュール工法や、そのまま据え付けができる形での輸送が用いられる例は多々あり、脱炭素に向けた動きが強まるであろう状況下、モジュール船の需要は高まることが予測されています。

こうした情勢を踏まえ、NBPは2025年から、総トン数3万3000トン級の新たな大型モジュール船の建造に着手しました。活躍中の既存船に加えて、さらなる世界のニーズに応えていきます。