2026年04月08日
洋上風力発電を支える作業員輸送船の建造で3D技術を本格適用
効率的な設計・建造を実現、高度・複雑化する船舶性能要請に応える
当社はこのたび、株式会社小鯖船舶工業(岩手県釜石市)、株式会社スマートデザイン(長崎県佐世保市)と共同で、洋上風力発電事業を支える作業員輸送船(CTV:Crew Transfer Vessel)(注1)の新造プロジェクト(以下「本プロジェクト」)において、3D技術を中核とした設計・建造を実施しました。
本船写真(左)と3Dモデル(右)の比較
主機周辺写真(左)と3Dモデル(右)の比較
本プロジェクトでは、設計初期段階からフル3Dモデルを活用するなど、設計から建造に至るまで一貫して3D技術を適用することで、従来の2D図面中心のプロセスに代わる新たな設計・建造手法の有効性を確認しました。
背景
洋上風力発電施設に作業員を安全かつ迅速に輸送するCTVには、高い安全性や作業のしやすさ、保守・点検の効率性などが求められます。そのため、設計・建造段階で必要な検討内容は高度化・複雑化してきました。一方、従来の2D図面をベースにした設計・建造方法では設計意図の共有や変更箇所の管理などに課題があり、建造段階でのやり直し工事や調整工数の増大が問題となっていたため、3D技術の活用に着目しました。
本プロジェクトの概要
3D技術を活用した設計・建造
本CTVの設計では、船体構造や機器の配置、作業やメンテナンスのしやすさなどをフル3Dモデル上で立体的に検討しました。設計段階で部材や機器などの干渉を事前に確認することによって、機器などの配置検討の精度も高まり、建造段階での設計変更や手戻りを抑制する設計フロントローディング(注2)を実現しました。
建造工程では、設計時の3Dモデルを基準として建造を進め、途中で実際の建造物の3Dスキャンを実施することで設計データとの差異を可視化しました。アルミ製双胴船型(注3)特有の熱変形や組立誤差などを把握し、建造品質の確認および改善に活用しました。
3Dデジタル完成図書の整備
3Dデジタル完成図書のイメージ
本プロジェクトでは、仕様書や図面、建造時のコメント、実測情報などを3Dモデルと連携させ一元管理する3Dデジタル完成図書を整備しました。この完成図書は、3Dモデルを起点に機器や図書情報を直感的に確認できるため、就航後の点検やメンテナンスなど船舶管理業務の効率化が期待されます。
本プロジェクトの意義
本プロジェクトでは、3D技術を単なる設計支援ツールとしてではなく、設計から建造までのプロセス全体にわたる基盤技術として活用しました。今回の実船建造によって得られた知見は、今後のCTV後続船への展開に加え、他船種への適用や運航・保守フェーズへの応用、学術的研究への活用も視野に入れています。
当社グループは、3D技術を活用した船舶の設計・建造を通じて、次世代の船舶建造プロセスの確立と、洋上風力をはじめとする事業における技術競争力の強化を目指します。
本船概要
全長:約28メートル
型幅:約9メートル
総トン数:約145トン
建造造船所:株式会社小鯖船舶工業(岩手県釜石市)
(注1)洋上風力発電設備向け作業員輸送船(CTV:Crew Transfer Vessel)
洋上風力発電設備の建設や、発電開始後のメンテナンス用に作業員を輸送する長さ20~40メートル程度の船。高速航行時でも安定性が高く、洋上施設への乗降を安全に行える機器を搭載している。
(注2)フロントローディング
初期段階で企画や設計に多くのリソースを投入して作業を前倒しで進めることで、後工程での設計変更を減らし、品質や生産性を高めること
(注3)双胴船型
2つの船体を平行に連結した船型で、復原性が高く、洋上での安定性や作業性に優れている。
以上
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