当社は、デジタル技術を活用した安全運航の達成と船上業務の効率化を目指して、最新の自律運航システムをはじめとするマリンDX機器を搭載した自動車専用船（以下「本船」）を発注済で、本船は2026年3月に竣工する予定です。自律運航システム、大動揺防止システム、船内全域をカバーするWi-Fiネットワークを本船に搭載し、実際の商用航海中にトライアルを実施して効果を検証します。

近年、船舶の大型化や交通量増加に伴って操船の難易度が高まっているほか、搭載機器の複雑化などにより乗組員の負担が増しています。また、航海中の事故の原因の７割近くはヒューマンエラーに起因しており、安全運航の達成にはその予防と船上業務の効率化が不可欠です。

1． 自律運航システム

船員の監視のもと、自動で衝突・座礁を回避し、安全な航行を支援します。従来操船者が手動で行っていた航海当直時の情報収集、状況分析、避航計画の立案などをサポートすることで操船者の負担を軽減し、安全性の向上を目指します。公益財団法人日本財団が進める無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」（注）で開発されたもので、AIを活用した画像認識技術や、レーダーターゲットの自動解析技術などにより周囲の情報を収集して状況を分析し、衝突リスクなどの情報を可視化するほか避航計画を立案して、自動で操船を行います。なお、従来通りの乗組員による操船へ随時切り替えも可能です。

2． 大動揺防止システム

海象条件が同じでも、船の針路や速力によって船体の挙動は大きく異なり、場合によっては非常に大きな動揺が発生して貨物の荷崩れなどの危険が生じることがあります。専用のレーダーによって観測された波浪データをもとに本船コンディションに応じた船体動揺をシミュレートした結果に基づき、最も揺れにくい針路と速力を操船者に提案することで大きな動揺の発生を予防し、貨物の保護と安全性の向上を目指します。

3． 船内全域をカバーするWi-Fiネットワーク
衛星通信の発達により船陸間の通信環境は改善が進んできていますが、船内では船橋や居住区など通信が可能な場所が限られているのが現状です。機関室や甲板上、貨物艙内などの現場では、オンラインマニュアルや資料の閲覧のほか、リアルタイム映像でのトラブル状況の確認、傷病者発生時の陸側医療機関とのコミュニケーションなどが困難な場合があります。また、船体は金属でできているため、船内コミュニケーションに使うトランシーバーが届きにくい場所が存在し、日常業務に支障をきたすことがあります。
これらの課題を解決し船上業務の効率化と安全運航を実現するため、本船には船内全域にWi-Fiアクセスポイントを設置し、船内の通信環境を大幅に改善します。

船種：自動車専用船
全長：199.95メートル
全幅：38.00メートル
竣工予定時期：2026年3月31日
造船所：株式会社新来島豊橋造船


（注）内航海運の少子高齢化に伴う人手不足、ヒューマンエラーによる海難事故といった社会的課題の解決と日本の海事産業や関連産業の強化を目的に、無人運航船の実用化を目指して技術開発を進めるプロジェクトで、当社グループも参加している。