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代表取締役社長 工藤泰三、就任挨拶

2009年4月1日

     皆さん、おはようございます。

私は本日より社長に就任致しましたが、この機会に、今、私の考えていることを皆さんにお伝えしたいと思います。
 
私は海・陸・空にまたがる物流事業に携われたことを大変誇りに思っています。物流事業は世界経済にとっての血管です。安定したモノ運びという我々の事業そのものが、世界のより豊かな生活・経済に貢献出来る訳であり、これほど幸せなことはありません。と同時に、大きな責任を感じています。わが社グループが本拠とする日本は資源が全くなく、貿易立国たらざるをえません。その日本にとってなくてはならない、という側面を持つ極めて重要な事業です。加えて、国際物流はグローバル社会のインフラであり、わが社グループが事業展開している各国においても極めて重要な社会的意義を持つ事業だからです。
 
社会的に重要な意義を持つからこそ環境に対する配慮は欠かせません。更に、安全は最優先されねばなりません。責任・環境・安全、この重要なキーワードを、皆さんと先ず再確認して置きたいと思います。
 
さて、米国の過剰消費に依存する非合理な経済モデルが崩壊した今、世界経済は、百年に一度と言われる大混乱に陥り、その修復には若干の時間を要すことでしょう。
 
海運などの物流事業は、正に、この世界経済がその市場であると同時に、収縮局面では在庫調整圧力が加わるため、悪化の度合いは増幅されてしまいます。
 
しかし基本的に人口の関数である世界経済にとって今回の混乱も長い目でみれば、単なる調整局面に過ぎず、数年後には必ず拡大基調に復帰するはずです。従って、我々も今回の危機を将来の更なる飛躍のための体質改善・充電期間と位置付けるべきです。つまり、緊急対応と同時に、混乱後を見据え、事業ポートフォリオを如何に組替えるべきかなどを皆さんと一緒に考える期間なのです。その点、今回の危機は、好況時には認識できなかった我々の戦略で優れていた点や、逆に問題点を浮き彫りにしてくれています。この優れた点を更に伸ばすこと、問題点は早急に解決・改善することが、将来のあるべきポートフォリオ組成の礎となってくれるはずです。
 
実はこの取り組みが今回の宜候プロジェクトであることは、皆様もお気づきでしょう。
従って、私がまず最重要課題として取り組むべきことは宜候プロジェクトの完遂です。更に、結論を先に申しますと、数値目標の見直しは必要ですが、宜候プロジェクトにおいて対応すべき課題の大半は、NEW HORIZON 2010の中で既に述べられております。結局、宜候プロジェクトとは中期経営計画を着実に達成する運動だということがお分かり頂けるはずです。その辺りのことを、今までを振り返りながら若干お話したいと思います。
 
1996年当時、10億トンであった鉄鉱石・石炭・穀物の三大バルクの世界荷動きは、2007年には約19億トンへと、また、日本からの完成車輸送も300万台から600万台強へと倍増しました。世界のコンテナ荷動きも4億トンから12億トン強へと更に、急拡大を示しました。当然、この急拡大に対応すべく各部門とも、船隊拡大を急ぎました。
 
ただ、バルクエネルギー部門は過去の苦い経験から、長期契約重視の姿勢を堅持したため、船隊整備が遅れ、需要急拡大に対応出来ない時期もありました。また、その反動で、最近の船隊整備が少々、急速過ぎたという反省もありますが、影響は極めて限定的です。むしろ、「安定した長期契約」重視が危機に際し、如何に重要であったかを再認識出来たことは、大変重要だったと考えます。更に中国、インドのお客様との長期契約拡大は、両国の回復が予想通り早い状況にあり、今後の成長の観点からも正しい判断であったと思います。
 
自動車船部門も昨年夏まで、10年間続いた恒常的なスペース不足が一変し、荷動きが一挙に半減する異常事態に直面しております。ただ、過去に荷動きが半減する事態を経験していたことが幸いしました。船型が極めて特殊で短期傭船マーケットが存在しないため、スペースを増強する際、常に荷動きが急減することを想定してきました。償却が終了した船をスクラップ或いは係船すれば船隊規模を直ちに縮小できる範囲内に新造船の発注を絞って来た結果、今回も機敏に対応出来ています。
 
また、自動車輸送契約は一部を除き長期契約が存在しないため、需給逼迫の間もお客様に運賃値上げを要求せず、逆に、新造船の船型の統一や、トランシップポートを活用したコスト削減などを積極的に提案し、安定した相互信頼関係構築を最大の営業方針として来ました。そのお蔭で、今回の危機に際し、お客様からの運賃値下げ圧力は軽微です。自動車船部門の船隊整備・提案型営業姿勢は今後とも、変えてはなりません。
 
さて、コンテナ船部門ですが、大変残念ながら、需給ギャップが一旦顕在化すると、運賃下落に歯止めが掛からず巨額な赤字計上となる事を改めて再認識させられています。単独ベースか、コンソーシアムベースかの違いはありますが、頻度など各社のサービスは均質です。又、純粋なハード面でも造船所は限定され、配乗ソースも同一ですので船価差は僅少です。にも拘わらず、長期契約が存在しない訳ですから、需給ギャップが拡大すれば運賃の急落は当然の結果ですし、事実、過去に幾度も経験してまいりました。
 
ところが、特に最近の荷動き急拡大と需給逼迫とで、過去の苦い経験を忘れ、各社は一斉に船隊拡大を図ってしまったのです。残念ながら、我が社も、その例外ではありませんでした。結果は明らかな通り、運賃の大幅な下落とスペースの大量不稼動という、二重の大きな痛手を被っております。
 
それでは、コンテナ船事業から撤退すべきなのか?答えは当然ノーです。荷動きは確実に増加する成長市場ですし、我々のサービスを必要とされるお客様の為にも放棄してはなりません。又、現在の異常事態のお蔭で新造発注は完全にストップしていますし、スクラップも加速するでしょうから、早晩、需給ギャップは解消します。
 
それまでに、巨額な赤字の原因となる船舶投資を先行させるモデルから大きく舵を切り、持続可能なビジネスモデルへと、今度こそ変身させて置く必要があります。
 
船は効率的な配船など、創意・工夫によるコスト低減には大事なツールですが、持ち過ぎは結局コストアップ要因だと位置付け、極力スリム化する事が不可欠です。むしろ、足りないスペースは積極的に他社から借り受け船費の可変費化を図るべきです。とにかく、コンテナ船部門は巨額な投資に対して、資本コストを加味したあるべきリターンへの意識が希薄すぎました。
 
その上で、更に重要な課題は同じレベルの運賃・サービスであれば、我が社グループを選んで頂ける強い営業力の構築です。
 
強い営業力とは、一言で言えば、お客様が直面する問題を解決する力です。その際、お客様にとってコンテナ船輸送はもはや、全体の一部に過ぎず、且つ、均質なサービスは何時でも確保できるということと、抱える問題があるとすればその大半が世界各地での倉庫・陸送などの部分だということを認識すべき点です。
 
我々は、以前よりこの問題に対して総合物流を最重要戦略と位置付け、積極的に展開してきた訳です。
 
但し、物流事業を始めただけでは、なんら問題解決にはなりません。サービスの品質・コストがより重要です。物流事業はハードの効率的稼動も重要ですが、極めて労働集約的であり、一年を通じて作業を平準化するといった創意・工夫と、それによる改善活動・現場力が、大きなコスト差として跳ね返ってくる大変難しい事業です。
 
ところが、物流事業も今回、ハードの過多、改善活動・現場力不足が若干顕在化し、苦戦を強いられています。又、コンテナ船部門との連携も今一歩です。これでは、コンテナ船の営業力強化の目玉としての位置付けにも全く逆行しています。
 
我々は、コンテナ船、トラック、倉庫というハード別の切り口で各々が事業展開するのではもはや生き残れない、生き残るには、「お客様の抱える問題を解決する」との視点で事業展開する事を決めたはずです。即ち、コンテナ船部門、物流部門ではなく、総合物流部門としてのお客様対応です。この意識の徹底、並びに更なる創意・工夫の拡大が、コンテナ船部門、物流部門再生の鍵なのです。この戦略は間違っていないと、私は確信しております。足りなかったのは、総合物流に必要な広範囲に亘る業務知識を有する人材確保・育成のスピードだったと反省しており、早急に対策を講じます。
 
次に、昨年前半、それまでの大変な努力により、運航・整備体制を含め完全自立化にやっと目処を付けた航空輸送部門です。残念ながら今回の危機において、物量では最大の影響を受けております。しかし、航空運送も中長期的には着実な荷動き拡大が期待される事業ですし、燃費効率や騒音対策等の環境性能が極めて優れた新機材投入を控えています。正に今が正念場です。今までの血の滲むような努力を無駄にしてはなりません。
 
さて、これまで営業部門にスポットをあててお話をしましたが、収益面で競合社に劣る部門の責任は本当に営業部門だけにあるのでしょうか?我々のファイナンスは競争力があるのでしょうか? IT部門は? 船員費、ドック費用は?などなど、コーポレート部門も、本当に創意・工夫を凝らし、競争力のあるサービスを営業部門に提供しているのでしょうか?
 
また、純粋なハードでの差はないと述べましたが、逆に、少しでも差があれば大変な競争力となる訳です。環境問題が最重要課題の一つとなった今、この点からも技術部門の重要性は愈々増していますし、この部門こそ正に創意・工夫の世界です。
 
結局、多くの部門で創意・工夫がキーワードになってしまいました。創意・工夫は人間力の領域であり、企業にとっての最重要資産が「ヒト」だと言われる所以です。私は「ヒト」への投資を決して怠りません。創意・工夫には熱意が必要です。また、一人では達成できません。達成するには、お客様、仲間のサポートが欠かせませんし、それを支えるものは誠意です。
 
環境、安全に「誠意・創意・熱意」。
お客様、現場に「誠意・創意・熱意」。
NYK全グループの仲間に「誠意・創意・熱意」。
 
そして、皆さん、「誠意・創意・熱意」を持って宜候プロジェクト完遂に向け、私と一緒に努力して下さい。
 
最後に、皆さんと、ご家族のご健勝を心より、祈念して、私のご挨拶と致します。ご清聴ありがとうございました。
 
以上
 
掲載されている情報は、発表日現在のものです。
その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。