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    ―2013年商事始め式で社長挨拶―
 
 

誠意・創意・熱意で「3M」解消し、さらなる成長を
―2013年商事始め式で社長挨拶―

2013年1月4日

2013年1月4日、東京都千代田区の本店15階ホールで商事始め式が開催され、当社社長の工藤泰三から次のメッセージがありました。
 
皆さん、明けましておめでとうございます。2013年の商事始めにあたり、一言ごあいさついたします。
 
「景気概況」
2012年を振り返りますと、世界の主要な国々で首脳の交代や大統領選が行われた年でした。米国・中国・ロシア・韓国・フランス、そして日本でも年末に衆議院議員の総選挙が実施されました。今後各国の新政権による政治経済運営が、中長期の世界および日本経済に大きく影響を及ぼすものと思われます。
中国は、2012年7-9月期で、実質GDP成長率が前年同期比7.4パーセントにまで落ち込み、景気の減速が指摘されていますが、むしろ以前のような毎年2桁での成長率が続いたことが特異な状況であったと理解すべきであり、今後も安定的な成長が見込める重要な市場と考えます。一方中国の約半分の人口と3割の経済規模を持つASEAN経済は、中国の賃金高騰や尖閣諸島問題に端を発するいわゆる「チャイナリスク」の顕在化により、中国から東南アジアに生産拠点を一部移管するなどの動きもありますが、依然活況を呈しています。
他方、先進国の経済ですが、欧州では欧州中央銀行の南欧国債無制限買い入れ表明や銀行監督制度の一元化の動きを経て、目先の破綻はひとまず回避された格好ですが、不安定な状況に変わりありません。
米国経済は、好調な自動車販売や住宅販売の回復、シェールガス革命などで回復基調にありますが、大型減税の失効問題、いわゆる「財政の崖」への対処という難題に直面しており、少なくとも短期的には新たな試練を迎えると考えるべきです。
中東では、「アラブの春」以降いまだ混乱が続いていますし、イランとイスラエルの緊張関係が大変憂慮されます。中東の情勢が世界のエネルギー需給に及ぼす影響は大きく、今後も動向を注視する必要があります。
 
「事業環境」
このような、まだら模様で複雑な世界情勢の中、海運・航空運送事業は、依然大きな需給ギャップにあえいでいる状況にあります。海運需要自体は、欧州を除き、北米がリーマン・ショック前のレベルを超え、緩やかながら成長軌道に復帰したのに加え、アジア・資源国の堅調な伸びが持続しており、世界レベルではペースは鈍化したものの着実に増加しています。従って現在直面している需給ギャップの原因が、リーマン・ショック前の急激な需要の伸びに対応した船隊整備の後遺症であることは、皆さんご承知のとおりで、この結果、この後遺症が解消するまで、われわれの事業環境は、極めて厳しいものとならざるを得ません。上期は何とか130億円の経常黒字を達成しましたが、通期200億円達成に向け、グループ一丸となって頑張る必要がありますので、新年にあたり大きな課題を抱える部門を中心に、現状と今後の見通しその対応策などを述べていきます。
 
「一般貨物輸送事業」
まずコンテナ船事業関連ですが、他の船種に比較し、需給ギャップが一番大きい部門です。調査グループの調べでは、本2013年に280隻強、約180万TEUという過去最高の新造竣工が見込まれています。この内8,000TEU以上の超大型船が100隻、約110万TEUを占め、仮にこれら全てが、アジア~欧州航路に投入されると、年間のスペース増加は550万TEUにも達します。現状アジア~欧州の年間荷動きが、およそ1,400万TEUですので、その凄まじい増加率に驚愕(きょうがく)させられます。来年の竣工量は本年と比較すると、かなり減少はするものの超大型船を中心に依然高水準といえ、需給ギャップ解消には少なくともあと数年を要すると考えるべきでしょう。
現在コンテナ船各社は、2011年度の巨額赤字計上から脱するべく、既にある大きな需給ギャップを、余剰船の係船や減速の深度化で対応し、何とか収支均衡レベルを維持していますが、本年度の大幅な供給圧力に抗し切れるか否か、はなはだ疑問と言わざるを得ません。幸いわれわれはリーマン・ショック後、発注済のコンテナ船を船種変更するなど、直ちにライトアセット化に(かじ)を切った訳ですが、正しい判断だったと胸をなで下ろしています。一方で、ライトアセット化を進めたわれわれは、この船余りの時期を逆にチャンスと捉えるべきで、安い用船・スペースと、われわれの武器である物流部門のコントラクト・ロジスティクスを最大限活用しつつ、コンテナ船部門ならびに郵船ロジスティクス株式会社と共に、お客さまならびに取扱量拡大を急がねばなりません。われわれの業容規模を測るものは、船・スペースなどのハードではなく、取扱量の(多寡(たか)()であることを今一度肝に銘じてください。
ところでわれわれの競争力を左右するのは、何といってもコスト競争力です。そして、そのコスト競争力を左右する最大の決め手は、ムダ・ムラ・ムリ、すなわち3Mの解消です。前述のとおりわれわれにとって、船のムダすなわち不要なコンテナ船は最小限です。後は保有するコア船隊を、さらに、ムダ・ムラ・ムリなく運航するかが重要です。同時にコンテナ船の場合、本船もさることながらコンテナ自体を、いかに、ムダ・ムラ・ムリなく回すかも極めて重要であり、むしろコスト削減効果は大きいかもしれません。復荷のない内陸地点向けに大量の往航の貨物を集荷した場合、空コンテナの回送費用を考慮して、本当に採算に乗っているのでしょうか。まさに皆さんの創意・熱意という人間力が問われます。
 
「不定期専用船事業」
次に不定期専用船部門ですが、依然需給ギャップが大きいものの、少なくともドライバルク部門に関しては、ギャップ解消の兆しが見えてきました。 例えば、2010年から2012年まで毎年200隻以上の新造竣工のあったケープサイズ・バルカーは、本年、来年の竣工が、おのおの100隻、40隻程度に減少します。一方で、毎年老齢船60~70隻程度のスクラップと、新興国向けを中心に40~50隻分の新規荷動き増加が見込まれますので、今年後半以降確実に需給ギャップが解消に向かうと思われます。現在当社のケープサイズ・バルカーの運航規模は約110隻です。その内約80隻は、長期契約投入船ですので、差し引き30隻が、表現は適切ではありませんが、ムダな状態にあるともいえます。しかしながら、2000年初めの運航規模が30~40隻程度で、長期契約船が約30隻だったことを思い起こせば、このムダよりも長期契約積み上げに成功したことを評価すべきだと考えます。幸い今後数年で高い用船料の船も返却できますので、それまではその船が本当のムダにならないよう、世界最大級の船隊規模を武器に長期契約積み上げ努力を重ねましょう。
一方で不定期船部門においても最大のムダはバラスト航海です。このバラスト・レグをいかに最小化するかが、コスト競争力を大きく左右しますのでこのバラスト・レグを最小化できる貨物獲得にも努力を重ねてください。またコンテナ船に比較し、不定期船部門は総じて減速運航の深度化が今一歩との印象を禁じ得ません。船余りの中、これこそムダだという意識を持ちさらなる減速運航に挑戦する必要があります。
 
「技術・安全・環境」
今年は懸案であった日本籍船への民間武装ガードの配乗を解禁する特別立法の法案が、通常国会で提出される予定で、海賊対策の面では行政からのサポートも期待できます。いずれにせよ、船舶・航空機の安全運航は、海運・航空運送事業の基本中の基本であり、当社グループのサービス品質差別化の最大のよりどころであります。その上で、当社グループが有する他社に卓越した知見や技術力を最大限活用し、さらなる燃節などを通じ二酸化炭素(CO2)やコスト削減を達成し、またそれらを営業活動での提案力にもつなげ、“More Than Shipping 2013”の実践に努める必要があります。
 
「コーポレート、コンプライアンス」
“More Than Shipping 2013”の戦略実行にはそれを支える仕組みが必要で、コーポレート部門はその重責を担っていることも繰り返し述べてまいりました。3M解消プロジェクトの徹底を通じたコーポレート部門の競争力強化が、会社全体の競争力を左右することを忘れないでください。またコンプライアンスは非常に重要な問題です。
あらためて、当社経営陣も含め、皆さん一人ひとりが、独禁法遵守、コンプライアンスの意識を高く持つよう心掛けてください。
 
「結び」
さて、2013年度は、“More Than Shipping 2013”の計画最後の年になります。欧米先進国経済の停滞、それに起因するコンテナ船を中心とした需給ギャップが顕在化する中、コンテナ船などのライトアセット化を推進する一方で、アジアなどの新興国関連を「従来型の海運業(プラス)α(アルファ)および「提案力」で事業を拡大させていく戦略に間違いはなかったと自負しております。海運・航空運送事業の空模様は依然として雨降り状態ですが、やまない雨はありませんし、物流は着実に増加し続けます。われわれには、「世界最大級の船隊規模と多岐にわたる船種」、「多様な事業ポートフォリオ」ならびに「世界を網羅するネットワーク」があります。あとは皆さんのNYKグループバリュー「誠意・創意・熱意」を通じた3M解消力と、それにわれわれの持つ豊富な知見・技術力を融合させたお客さまへの改善提案能力を発揮できれば、NYKグループのさらなる成長が約束されます。
 
最後に、皆さんとご家族のご健康、ご多幸を心より祈念して、私からのあいさつといたします。
 
 
                                                                                                                                以上
 
掲載されている情報は、発表日現在のものです。
その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。