プレスリリース

創業140周年を記念し社長があいさつ

当社は10月2日、本店15階ホールで創業140周年記念式典を開催し、代表取締役社長の曽我貴也が当社グループ社員に向けてあいさつをしました。

曽我のあいさつの様子

昨日、当社は創業140周年という極めて重要な節目を迎えました。

この長きにわたる歴史を刻むことができたのは、創業の礎を築き、それを守り抜き、先の大戦で全てを失いながらも不屈の精神で再興を果たし、事業を拡大・安定化させてきた先人たちの尽力、そして現在の会社を支える社員一人ひとりの熱い想いの賜物です。社長として、心より深く感謝申し上げます。

創業以来、当社に脈々と受け継がれてきたDNAとは、時代ごとの社会や人々のニーズを的確に捉え、それを実現しようとする使命感と誇りに他なりません。

岩崎弥太郎は、富国強兵・殖産興業という国家政策の中で、海運の果たすべき役割の重要性を見抜き、他国に支配されていた内航・外航を自国の手に取り戻し、日本海運の独立を確立しました。今日、経済安全保障の観点から自国海運の重要性が再認識されている今、その原点がまさにここにあります。
当社は、海運事業や物流事業を通じて我が国の経済と産業を支えるのみならず、客船によって平和と文化を世界に伝え、今や世界中の人々の暮らしと豊かさを支える企業グループへと成長してきました。140年の歩みは、常に社会の要請に応え、挑戦し続けてきた歴史でもあります。

以下、その歩みをいくつかの時代に分けて振り返ります。

1885年〜1945年:創業と拡大、そして喪失の時代
創業から太平洋戦争終結までの60年間は、自国海運の独立性を確立し、船隊を拡充しながら世界へと航路を広げた時代でした。しかし戦争により、運航船舶数の約85%にあたる185隻を失い、1万トン超の大型船で残ったのは氷川丸のみでした。さらに特筆すべきは、5,312名の社員が殉職されたという事実です。当社にとって、最も重要な資産である「人」と「船」を一挙に失った時代でもありました。

1946年〜1964年:奇跡の復興と再出発
戦後の復興期は、無からの再建という最大の挑戦でした。1951年の講和条約を契機に定期航路を再開し、高度経済成長の波に乗って爆発的に増加した日本の輸出入貨物を効率的に輸送するため、船舶の大型化・専用船化に挑戦し、大型タンカーやチップ船、鉱石船などが誕生した時代です。1964年には我が国の海運の国際競争力を高める目的で政府主導のいわゆる海運集約が行われ、三菱海運(株)との合併により、世界有数の船会社としての現在の日本郵船が出来上がりました。

1965年〜1984年:専用船化と装置産業化の進展
この時代には、コンテナ船、自動車船、LNG船などが次々と開発され、定航事業はコンテナ船のみならず、機器としてのコンテナ、そして専用のコンテナターミナルや付属機器への投資も必要とする一大装置産業へと変貌しました。大きな変化をいち早く察知して日本初のコンテナ船「箱根丸」の就航や、完成車の自走で荷役を行う自動車船、高度な安全技術を伴うLNG船の開発など、当時のマネジメントの先見性と決断力に敬意を表します。

1985〜2005年:構造転換と多様化への挑戦
1985年のプラザ合意による急激な円高は、当社の国際競争力に大きな影響を与えました。国際競争力維持の為に船員の多国籍化を進める中で、多くの日本人船員の退職を余儀なくされ、「緊急雇用対策」を実施した当時のマネジメントは断腸の思いであったに違いありません。奇しくも1985年は創業100周年にあたり、1986年には21世紀に向けての長期ビジョン「NYK21」が発表され、海運にとどまらず、高付加価値を生む多様な事業展開を目指し、海陸空にわたる総合物流企業への脱皮が打ち出されました。ちょうど日本貨物航空(NCA)の一番機がサンフランシスコに飛んだのも1985年でしたし、客船事業の再開もこの時期に実現し、今日の飛鳥ブランドの出発点となりました。

2006年〜2019年:激動の環境と戦略的再編
中国経済の台頭、それに伴う建造ラッシュ、その後のリーマン・ショックなど、激しく上下動する環境変化の中、リーマン・ショック後の低成長期が続きましたが、 NYKロジスティックスと郵船航空サービスの統合、定航事業の分社化によるOcean Network Express社(ONE社)の設立など、従来の常識を覆す戦略的な再編が行われました。これも当時のトップマネジメントの大きな決断と挑戦であったと思います。

2020年以降:サステナビリティと未来価値の創造
コロナ禍を経て、ESG経営/サステナビリティ経営を軸に脱炭素を成長戦略の大きな柱の一つとし、財務体質の大幅な改善を背景に新たな資本政策を実行し、そして世界中のグループ社員3万5千人が個性と能力を発揮できる風土づくりを進めています。さらに、北欧州のCTV専業会社の連結子会社化、NYK Energy Ocean社の設立、欧州域での大手ヘルスケア物流会社の買収など、将来の企業価値向上に向けた戦略的なM&Aも実行中です。創業100周年時の長期ビジョン「NYK21」では「総合物流業者への脱皮」が謳われましたが、現在の中期経営計画では、「総合物流の枠を超えて未来の価値を創造する」ことを掲げ、社会課題の解決にも挑む企業グループを目指しています。

当社の社史を読み返すと、どの時代においても「人間力」と「技術力」を重視し、財務状態が厳しい時でも常に成長投資を怠らなかったこと、一社では成し得ないことについては仲間作りを考え、今で言う「共創」という意識を持っていたこと、そして常に業界のリーダーとしての自己認識を有していたことがとても印象的です。これらは、社会的使命というDNAと並ぶ、当社の「見えざる財産」であると確信しています。

先日ニューヨークで参加した「持続可能な開発のための世界経済人会議」(WBCSD)の総会でも、「Sustainability」「Uncertainty」「Resilience」がキーワードとして語られていました。まさに、社会課題の解決を事業の一環と捉え、不確実性の中でもしなやかに対応し続けることが、現代における企業の本質的な強さであると感じます。

140年の歴史で培った見えざる財産を継承し、どんな状況にも柔軟に対応できるしなやかさと、新たなことへの挑戦を善しとする精神をもって、当社および当社グループのさらなる未来・新たな歴史を、皆で切り拓いてまいりましょう。

最後に、この140年の歴史を支えてくださった株主の方々、お客様、そして関連する海事クラスターや金融関係各社等あらゆる分野でのお取引先様への感謝を申し添えて、私の挨拶とさせていただきます。

以上

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