2025年08月04日
中央大学と日本郵船、海洋生物から創薬資源を発見するための共同研究を開始
試行段階で「“顧みられない熱帯病”の病原生物に対する増殖阻害成分」を発見
学校法人 中央大学
日本郵船株式会社
学校法人 中央大学(以下「中央大学」)と日本郵船株式会社(以下「日本郵船」)は、このほど、海洋生物からの天然物探索に関する共同研究を開始しました。この共同研究は、船底に付着した海洋生物から、新規創薬資源をはじめとする人類に役立つ未知の物質を発見し、その作用を明らかにすることを目的としています。
共同研究の経緯とこれまでの成果
アオカビから世界初の抗生物質であるペニシリンが発見されたように、自然界の生物がつくる物質(天然物)には、画期的な新薬やその開発のヒントとなる物質が存在しています。特に海洋生物は、人類に有用な未知の天然物の発見が期待される重要な資源です。
中央大学理工学部応用化学科の生物有機化学研究室(岩崎研究室)と日本郵船は、2023年から試行的に、船底に付着した海洋生物を採集し、分析する活動に取り組んでいます。この活動の中で既に未知の天然物を発見し、その作用を東京大学大学院医学系研究科の野崎智義教授のグループと解析した結果、“顧みられない熱帯病”のひとつとして知られるアフリカ睡眠病(注1)の病原生物「ローデシアトリパノソーマ」の増殖阻害に効果を示すことが明らかになりました。この成果については、2025年3月に開催された日本化学会 春季年会で岩崎研究室所属学生が口頭発表(注2)しています。
プロジェクトの概要
これまでの試験的な活動における成果を踏まえ、さらに研究を加速させるために、中央大学と日本郵船は契約を結び、5年間の共同研究を開始します。中央大学は岩崎研究室で海洋生物の採集と未知の天然物の探索および有用性の評価を行い、日本郵船は主に海洋生物の採集環境の提供を行います。
中央大学からのコメント
未知の有用物質を発見するためには、その探索源の選定が非常に重要です。世界中で海にまつわる事業を幅広く展開する日本郵船と組むことで、大学の研究者では入手が困難な海洋生物資源を手に入れることができます。希少な生物資源から、私たちの健康で豊かな生活を支える基盤となる新しい物質の発見を目指します。(中央大学 理工学部応用化学科 岩崎 有紘 准教授)
中央大学
理工学部応用化学科
岩崎 有紘 准教授
日本郵船からのコメント
当社グループは、サステナビリティを経営の中心に据えた経営方針のもと、「海、地球、そして人々への恩返し」をテーマに掲げ、主体的に社会・環境の課題解決に取り組んでいます。本活動においては、当社が海運事業で培ってきたノウハウと、造船所などとの幅広いネットワークを活用し、研究者の方が単独ではアクセス困難な採集環境を提供するという当社らしい産学連携を実現しました。今後も中央大学をはじめとする社外パートナーの方々とともに、社会へ貢献する新しい価値を創出していきます。
(注1)アフリカ睡眠病
サハラ以南のアフリカに見られる、主にツェツェバエを媒介として感染する疾患。睡眠サイクルの障害が大きな特徴で、重症化すると死に至る危険性が高い。
WHO(世界保健機関)のデータを引用している厚生労働省検疫所の「感染症トピックス」アフリカ・トリパノソーマ症のファクトシート
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2017/02091028.html
(注2)2025年3月に開催された日本化学会 春季年会発表について
詳細は以下の講演情報の通り。
[[A]A305-4am-08] 2025年3月29日伊計島産海洋シアノバクテリア由来、新規シクロプロパン含有ポリケチド ikeiamide 類の単離及び構造決定
田島 旦斐1、岩﨑 有紘1、山中 遼2、上田 貴裕2、大東 鷹翔2 (1. 中央大学、2. 日本郵船株式会社)
https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/csj105th/presentation/A_A305-4am-08
※発表内容の閲覧には、同年会参加証記載のパスワードが必要です。
お問い合わせ先
中央大学
<研究に関すること>
中央大学 理工学部応用化学科 岩崎 有紘 准教授
E-mail: aiwasaki686[アット]g.chuo-u.ac.jp
<広報に関すること>
中央大学 研究支援室
E-mail: kkouhou-grp[アット]g.chuo-u.ac.jp
日本郵船株式会社
広報グループ報道チーム
E-mail : NYKJP.ML.MEDIA[アット]nykgroup.com
※[アット]を「@」に変換して送信してください。
今回の当社取り組みが特に貢献するSDGsの目標
以上
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