プレスリリース

再使用型ロケット洋上回収システムのコンセプト承認(AiP)を取得

3Dモデルも公開 海洋×宇宙の融合が拓く新たなビジネスチャンスの土台に

当社が宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)の宇宙戦略基金事業の採択を受け、開発を進めている再使用型ロケットの洋上回収システムについて、7月24日に一般財団法人日本海事協会(以下「ClassNK」)から全体システム構成のコンセプト承認(Approval in Principle、以下「AiP」(注1))を取得しました。当社は、三菱重工業株式会社(以下「三菱重工」)をはじめとするプロジェクトパートナーとのワークショップでの議論を経て、AiP取得に至りました。船舶を含む宇宙開発関連のシステムに対する、ClassNKからのAiP取得は初です。

同日には、当社内で報道機関向け説明会を開催し、洋上回収システムの3Dモデルを公開しました。当社は、設計した3Dモデルを基に引き続き関係者と協議を重ね、2028年度中に予定されている実証実験の成功に向けて取り組みます。

証書授与式の様子
左から
三菱重工 兵頭 翔洋  宇宙事業部 技術部 次期輸送開発担当
ClassNK 松永 昌樹 常務理事技術本部長
当社 山本 泰  執行役員
湯原 慶  イノベーション推進グループ長

AiP証書

洋上回収システムにおける回収船  

司令船と回収船

ロケット回収の流れと回収船および司令船の役割

ロケットは、燃料と酸化剤を燃焼することで推進力を得て打ち上げられますが、上段を分離したロケットの下段部(1段目)は宇宙に向かわずに落下します。この1段目の多くには、洋上回収船の位置を正確に把握し、自動で着地する機能が搭載される見込みです。

洋上回収システムは、ロケットの1段目が着地する回収船と回収プロセスを支援する司令船の2隻で構成されます。落下地点には、回収船が待機しており、落下してくるロケットの1段目の着地地点としての役割を果たします。回収船にはダイナミック・ポジショニング・システム(DPS)が搭載されており、潮流の影響などを考慮しながら、特定の位置に正確に留まることが可能です。回収船はロケット回収時には完全無人化で運用され、ロケットは回収船上に着地した後、安全に固定化されます。ロケット着地後には司令船が回収船と連携しながら安全な運搬を行い、港へと帰還します。

なお、公開したロケットの洋上回収の流れおよび3Dモデルはコンセプトに留まります。今回のワークショップを踏まえ、今後洋上回収システムにおける船型や体制、一連の回収の流れについても更に協議を進めます。

ロケットの洋上回収の流れ(注2)

背景・意義

国土面積が限られた海洋国家の日本では、安全かつ効率的にロケットを回収するための洋上回収技術が注目されており、我が国の宇宙技術戦略において非常に重要と位置付けられています。また、宇宙関連産業の市場規模も急速に拡大し、各国ともに官主導の宇宙開発から官民連携への宇宙開発へと移行しつつあります。産学官による宇宙活動を加速するべく、日本政府は、JAXAに宇宙戦略基金を設置し、設定した技術開発テーマに対して民間企業等が複数年度にわたって大胆に技術開発に取り組めるよう支援しています。 当社は2024年12月20日に宇宙戦略基金事業に採択され(関連リンク参照)、海事分野の豊富な知見を生かし、三菱重工と連携しながら再使用型ロケットの洋上回収システムの研究開発および事業化に取り組んでいます。

報道機関向け説明会の様子

当社が目指す事業化のイメージ

・宇宙関連の輸送需要拡大
ロケットの打ち上げ回数が増えることで、ロケットの製造部品や衛星などの輸送ニーズの拡大が見込まれます。当社は総合物流企業としての強みを生かし、宇宙開発に関連した輸送ビジネスチャンスを獲得します。

・海洋×宇宙が広げる新たな可能性
洋上回収船の開発が進展することにより、再使用型ロケットの打ち上げ回数の増加や、それに伴う高頻度の衛星打ち上げも期待されます。例えば、高速通信インフラが整備されることで、自律運航船技術の発展や船員の船上での生活利便性向上につながります。さらに、リモートセンシング衛星(注3)を用いた、航路最適化や船舶からの温室効果ガス排出量の観測が可能となります。このように「海洋と宇宙がつながる」ことで、海事産業と宇宙産業の双方にメリットが生まれ、今後海洋国家・日本のさらなる発展に貢献していきます。

(注1)コンセプト承認(Approval in Principle:AiP)
基本設計前の初期概念に対する技術的妥当性を確認したことを示すもの。

(注2)ロケットの洋上回収の流れ
公表した画像はコンセプトであり、ロケットの洋上回収の流れは今後協議予定。

(注3)リモートセンシング衛星
センサーが搭載された人工衛星。地表の状態を把握することで、気象や海象などの情報を提供する。

以上

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その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。