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建造契約で合意した船舶の「実海域性能」の評価方法を確立

原油タンカーで1年間の船速、主機馬力などデータ集積し、検証

当社とジャパン マリンユナイテッド株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:灘 信之 以下「JMU」)は波風のある中での船舶の推進性能(以下「実海域性能(注1)」)を建造前に推定する取り組みを進めてきましたが、このほど当社運航の原油タンカーでの1年間の実海域性能の検証が完了、技術的・客観的な実海域性能の評価手法を確立し、両社で合意しました。今後は様々な船種で同様の取り組みを進め、新造船の建造契約時に船舶の実海域性能を推定・評価できる仕組みづくりを目指すとともに、燃費性能の高い船舶の調達を図ることでGHG排出削減を進めていきます。

背景と課題

これまでの造船契約では、波風の無い平穏な気象海象下での船速と馬力の関係(以下「平水中性能(注1)」)から保証速力を設定・合意し、建造中に行われる海上試運転において造船所と海運会社が相互に保証速力を確認する手法が一般的でした。しかし就航後の実航海では波風の影響を強く受けるため、保証された平水中性能は実海域性能と大きな乖離が出ることがありました。

船舶からのGHG排出削減を進める当社にとって実海域性能に優れた船舶の調達は重要な課題であり、同時に実海域性能の向上に関する技術開発を進めてきたJMUにとっても実海域性能の評価手法の確立は大きな課題でした。当社とJMUは2020年9月に海運業界では世界で初めて建造契約に実海域性能保証の条項を導入し、波風がある中での船舶の燃費性能を検証する取り組みを行ってきました。

実海域性能検証の概要

1. JMUで設計・建造した新造原油タンカー2隻を対象船とし、2022年の竣工から1年間、船速、主機馬力、風向、風速などの本船データを収集しました。

2. 実海域性能保証契約で事前に合意した保証カーブ(注2)に対し、両社で相互に達成度を検証しました。評価手法には保証カーブと本船データとの差を風向き(向かい風、横風、追い風)ごとに整理し、平均値を算出する方法を採用しました。

3. 相互検証の結果、事前に合意した実海域性能の保証カーブの推定精度が高いことを確認しました。特定の航路において、実海域性能を技術的・客観的に評価できる精度の高い解析・評価手法を確立し、両社で合意しました。

4. 新造原油タンカー2隻のうち1隻は、平水中性能ではなく実海域性能を向上させるJMUの新技術を採用しており、今回の両社の検証により推定通りの有意な実海域性能差を確認することができました。

今後の展開

今回確立した手法を新しい船型開発に役立て、さらなる実海域性能の向上を目指すともに、他の船種の実海域性能の評価についても両社共同で取り組む予定です。当社は今後も実海域性能を重視した船舶の性能評価を行い、新技術を積極的に導入していくことで、燃費性能の高い船舶の調達を進めていきます。

(注1)平水中性能と実海域性能について
平水中性能:波風の無い平穏な気象海象下で直進する際の推進性能。各造船所には長年の知見があり、新造船契約時に精度の高い推定が可能。平水中性能は、水面より下の船体形状の影響が大きい。

実海域性能:波風のある気象海象下での推進性能。新造船契約時点では、投入航路や航行時に遭遇する気象海象がわからないため、精緻な推定は難しい。実海域性能は、水面より上の船体形状の影響が比較的大きい。

(注2) 保証カーブ
船舶の船速と馬力の関係を表したグラフ曲線。2020年9月の建造契約締結時に、本船の性能を保証するものとして当社とJMUとの間で合意をしている。

日本郵船グループは、中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 - A Passion for Planetary Wellbeing - ”を2023年3月10日に発表しました。“Bringing value to life.”を企業理念とし、2030年に向けた新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、ESGを中核とした成長戦略を推進します。

今回の取り組みが特に貢献するSDGsの目標

以上

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