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社長就任あいさつ

新中期経営計画とともに前へ

就任あいさつをする曽我貴也社長

4月3日、本店15階ホールにて曽我貴也社長より就任あいさつがありました。


皆さん、おはようございます。
4月1日から社長に就任しました曽我です。
当社およびグループ全体の業務執行の責任を担うに当たり、グループ社員の皆さんに、私の考えをお伝えしたいと思います。

<前中期経営計画を振り返って>

この期間では本当にいろいろな、予想もつかないことが起きました。新型コロナウィルス感染症のまん延はもとより、ロシアのウクライナ侵攻、米中間の緊張、英国のEU離脱もその一つでしょう。これらは世界の政治・経済のみならず、当社グループの事業遂行にも、そして私たちの生活にも大きな影響を与えています。

当社の連結の業績では、幸いにも2期続けて1兆円規模の利益を計上する見込みで、世間的にはどうしてもこの数字に目を奪われやすいですが、前中計で掲げてきた経営課題への取り組みとその成果についてもしっかり認識しておく必要があります。

一つは、新しい事業体としてのOcean Network Express社(ONE社)の基盤固め。ONE社には当社ならびに当社グループの多くの社員が出向し同社の事業活動のけん引役として活躍してくれています。発足当初の生みの苦しみを乗り越え、競争力のある確かな事業体としての地位を築くに至っています。

二つ目はドライバルク事業の構造改革。リーマンショック前後で仕込んだ高コスト船隊の存在は長らくドライバルク事業の収支面での足かせでしたが、ドライバルク事業部門の皆さんが地道に進める四つの戦略とともに、構造改革の名の下に行った高コスト船の処理もほぼ終え、市況に対する耐性の強化を図ることができました。

三つ目は航空運送事業への取り組み。コロナ禍にあって航空運送事業の価値や重要性、特に日本をベースとする貨物専用航空事業会社の存在が再認識されたのは紛れもない事実ですが、この唯一の価値ある事業会社を未来にわたって存続させる最善の方法が何であるかを悩み抜き、最終的にANAホールディングス(株)への譲渡という方向を決めました。

四つ目はESG経営の推進について。2021年をESG経営元年として長澤前社長の強いリーダーシップの下で進めてきたこの活動で、ESG経営の意味、当社グループにとっての重要性が多くの社員に理解されるようになると同時に、今後の展開に向けた幾つもの種まきがなされ、E、S、Gそれぞれに絡めて私たちの今後の打ち手、私たちが進むべき方向性がようやく具体的に見えてきたといえます。
このように、いくつかの重い経営課題に道がついたということで、私たちは今、新しいフェーズのスタート地点に立っていると理解しています。

<新中期経営計画>

こうした中で作り込み、発表したのが、新しい中期経営計画、”Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing –” です。既存の中核事業の深化と、脱炭素化を機会と捉えての新規事業の成長・進化による両利きの経営(AX)、さらに事業の見方を少し変えての事業変革(BX)、これらを支えるための人事・組織の変革(CX)とDigital Transformation(DX)、そしてネットゼロ達成に向けたEnergy Transformation(EX)という5つのXを遂行し、社会に貢献し、社会に必要とされ、持続的成長を続ける企業グループを実現しようというものです。

その個々についてはここで繰り返しませんが、私自身が重要と思っている点を四つ、「人と技術」「環境」「ガバナンス」「株主やお客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまへの姿勢」について述べたいと思います。

まず「人と技術」。
私は常日頃から当社および当社グループの強みは「人と技術」だと思っています。一人一人の強い責任感とチームワークの意識、これは当社グループで長年培われた文化です。また一人一人が持つ安全への意識とそれを支える技術力も大きな財産です。本中計期間ではこれをさらに高めていきたい。その為には、一人一人の個性や個別の事情を心から尊重し合う組織、その個性が遺憾なく発揮できてみんながワクワクしながら働けるような組織にしていきたいです。日本郵船本体の人事制度改革も現在フェーズ3に入っており、個性尊重の意識と個人個人の自律的成長を高める制度設計になっていますが、何よりも大事なこととして、ポストコロナとなった今、先輩後輩・上下左右の仲間ともっともっと会話を増やして多様な考え方や経験を共有してほしいと思っています。これが自己成長の源だと思います。
技術の面においても、当社グループは、船舶や安全運航に関する技術力や低炭素船・脱炭素船開発に伴う技術力のみならず、お客さまのサプライチェーンの一翼として価値を高めるような物流の技術力も世界レベルにあると思っています。「人と技術」をさらに高めることは当社グループの企業価値向上に直結します。これを今まで以上に外にアピールして差別化の大きな力にしていきたいと思います。

次に「環境」について。
2050年ネットゼロに向けて私たちが何をやらねばならないか、何が課題かは以前に比べてだいぶ見えてきており、燃料転換を中心とした長期シナリオも描いておりますが、足元では各国の環境規制策が自国優遇の産業政策色を濃くしており、それが例えばEU-ETS(欧州連合域内排出量取引制度)のような制度となって、間もなく実施されようとしています。それにどううまく対応ないし対抗していくか、喫緊の課題であり待ったなしの状況といえます。今後進めていく脱炭素化に向けた具体的なアクションとプランを含め、今般新たに立ち上げたESG戦略本部を中心に、当社および当社グループが一丸となって取り組んでいく必要があります。
ここであえて確認の意味で補足しますが、石油や石炭といった既存エネルギーや素材の輸送を担当している事業部門の皆さんは、それらの輸送継続に怯む(ひるむ)必要はありません。輸送先のお客さまもそれぞれの産業ごとあるいは個社ごとに、いかにネットゼロを達成するか、その移行計画を、今必死に描こうとしています。その達成のために、今しばらくは既存エネルギーや素材を必要としているお客さまや社会のために、その輸送に私たちが従事することで、社会全体のネットゼロへの移行を私たちが支えているのだという使命感を持って日ごろの業務に当たってもらいたいと思います。ただ、私たちの輸送そのものでの低炭素化・脱炭素化に最大限の努力をする必要があることは言うまでもありません。

三つ目は「ガバナンス」について。
10年以上前の当社および当社グループ会社で発生した独占禁止法違反案件、また数年前に発生した海外現地法人での不祥事など、社員にとって、また会社にとってもつらく痛い経験を経て、当社の内部統制のシステムは随分と進化してきています。統制制度をしっかり備えておくことは社会の要請でもあります。内部統制という言葉の響きは個人の行動の制限を連想させますが、私たちの内部統制制度は、会社を守るための装置である以上に、皆さん個人個人を守るための仕組みでもあることを理解してほしいと思います。しかしながら、ことコンプライアンスに関しては、どんなに立派な器、制度を作っていても、結局は個々人の思いや考え方が一番重要な防波堤です。かつての事件や不祥事とは何だったのか、なぜ起きたのか、常に思い返す姿勢が重要です。

四つ目は「株主やお客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまへの姿勢」について。
社長としての私の使命の一つは、一人でも多くの株主や投資家の方々、お客さまに当社・当社グループの魅力を伝え、ファンになっていただくことです。株主の方々も投資家の方々も、時には「顧客」のごとく私たちの至らぬ部分を叱咤(しった)してくれたり改善の施策を提案してくれたりしますし、時には「パートナー」のごとく私たちの事業展開をサポートしてくれます。決しておもねることなく、時に「顧客」のように、時に「パートナー」のように接し、こちらからの発信や対話を深め、一人でも多くの方々に当社および当社グループの使命とその事業計画を理解してもらうよう努めます。またお客さま、なかんずく海事産業の方々も私たちの事業遂行になくてはならない存在であると同時に、この大変革期を乗り切っていくために協働・共創していく大切なパートナーであることを忘れてはなりません。

<柔軟かつ機敏に>

さて、この新しい中計をこれからの行動指針として今日から業務執行の指揮を執っていきますが、今まで以上に思ってもみないことが発生して、事業環境が大きく変わるかもしれません。その時は、マネジメントとして柔軟にそして機敏に仮説の修正を行っていくつもりですし、皆さんのしなやかな行動力にも大いに期待しています。
私たちの使命は不変です。不透明感の拭えない今日ではありますが、ミッションに掲げている“Bringing value to life.”、世界中の人々の暮らしや生活を守り、社会に貢献し、社会から必要とされる企業グループとしてさらに成長していきましょう。

最後に一つ、茶道の有名な言葉を皆さんとシェアしたいと思います。
「和敬(わけい)清(せい)寂(じゃく)」。これは千利休が「一期一会」とともに茶道の根本精神として掲げた有名な言葉です。「和」はお互いを認め合うこと。「敬」は人の尊厳を敬うこと。「清」は心や場(今流にいうと職場や組織)を清らかに保つこと。「寂」は物事に動じないこと。
今流に解釈すると、個性や多様性を認め敬い、不祥事を許さぬ清らかな組織をつくり、ちょっとのことでは動じない強い意志をもって事に当たる、ということです。
古い言葉でありながら、今まさに求められているものに相通じる意味がある点、ちょっと驚きです。人としての不変の真理なのかもしれません。

この精神を心に置きながら、皆さんと一緒に、よい日本郵船グループをつくっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

以上

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