• プレスリリース

アンモニア燃料アンモニア輸送船の 基本設計承認(AiP)を取得

世界初の代替設計承認に向けたリスク評価を実施、船舶のゼロエミッション化へ前進

日本郵船株式会社
株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
株式会社IHI原動機
日本シップヤード株式会社

日本郵船株式会社(以下「日本郵船」)、株式会社ジャパンエンジンコーポレーション(以下「ジャパンエンジン」)、株式会社IHI原動機(以下「IHI原動機」)、日本シップヤード株式会社(以下「日本シップヤード」)の4社は、研究開発中のアンモニア燃料アンモニア輸送船 (AFAGC: Ammonia-fueled Ammonia Gas Carrier)について、9月7日に一般財団法人日本海事協会(以下「日本海事協会」)から基本設計承認(Approval in Principle 以下「AiP」)を取得しました。

現時点で、アンモニアを舶用燃料として利用するための国際規則は存在していません。そのため、既存の重油燃料やLNG(液化天然ガス)燃料を利用する船舶と同様の安全性をアンモニア燃料アンモニア輸送船において担保するべく、4社は研究開発を進めてきました。
2026年度の実証運航の実現に不可欠となる代替設計承認(注2)を見据え、4社はアンモニアを舶用燃料として利用する際の安全性について、HAZID(注1)を通じてリスク評価を実施しました。HAZIDにより安全性の担保は可能との見解に至り、日本海事協会からAiPを取得しました。コンセプトに留まらず代替設計承認を見据えたリスク評価及びAiPの取得は世界初となります。
4社は今後も研究開発を進め、国際競争力のあるアンモニア燃料船の開発を実現することおよび日本が主導するアンモニア燃料船に係る安全ガイドライン・法規制等の整備に貢献することを目指します。

1. AFAGC開発の経緯

アンモニアは燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しないため、地球温暖化対策に貢献する次世代燃料として期待されており、今後の大量輸送需要が見込まれています。また、貨物としてアンモニアを運搬し、航海中はそのアンモニアを燃料として航行することにより、航海中の温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下「GHG」) 排出量を従来よりも大幅に削減することが可能となります。
本研究開発は、日本郵船、ジャパンエンジン、IHI原動機、日本シップヤードの4社が2021年10月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業(注3)の公募採択を受けた「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発」の一環で行っているものです。
次世代燃料船の早期の社会実装を目標として、4社は、①船舶推進用の2ストロークのアンモニア燃料エンジン、②船内給電用の4ストロークのアンモニア燃料エンジン、③安全性と環境性を実現する船体を開発し、本船建造、商業運航化まで一貫して連携し検討を進めています。

2. プロトタイプ船の基本設計を完了、AiP取得

アンモニア燃料船の設計開発の課題として、主に以下の点が挙げられます。

➀ 難燃性でエネルギー密度の低いアンモニアの使用比率を高めながら、エンジンで安定的に燃焼させ運用する必要があること。 
② アンモニアを燃焼させるとCO₂を発生しない代わりに亜酸化窒素(N2O:CO₂の約300倍の温室効果)が発生する可能性があるため、発生を抑制する燃焼制御が重要になること。
③ 毒性があるアンモニアを漏洩しない設計とする一方で、万が一漏洩した場合には安全対策を取る必要があり、従来の船舶と同等水準の安全性を確保するため、リスクアセスメントを通した対策が求められること。

4社は、本プロジェクトにおける開発船型をアンモニア海上輸送の汎用船型であるMGC(Medium Gas Carrier、アンモニア積載容量:約38,000立方メートル以上)と設定し、従来船と同等以上のアンモニア積載量を確保しながら、主機や補機の開発および搭載機器選定、また機器配置の工夫により、限られた船内スペースにアンモニア燃料関連機器を安全かつ実用的に搭載する事で、上記課題点を克服しうるプロトタイプ船の設計を完了し、日本海事協会による所定の審査の結果、AiPを取得することができました。今後は更なる設計最適化に取り組みます。

AFAGCのイメージ

証書授与式(Gastech2022、イタリア・ミラノ)
(左から)
ジャパンエンジン 山本 哲也 執行役員
日本シップヤード 前田 明徳 代表取締役社長
日本郵船 河野 晃 専務執行役員
日本海事協会 菅 勇人 常任理事
Niigata Powers System(Europe) B.V. 木野 康郎 Managing Director

※2021年10月26日付リリース「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の社会実装に向けた実証事業を開始」もあわせてご参照ください。

各社概要

<日本郵船株式会社>
本社:東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 長澤 仁志
ウェブサイト:http://www.nyk.com/

<株式会社ジャパンエンジンコーポレーション>
本社:兵庫県明石市
代表者:代表取締役社長 川島 健
ウェブサイト:https://www.j-eng.co.jp/

<株式会社IHI原動機>
本社:東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 赤松 真生
ウェブサイト:https://www.ihi.co.jp/ips/indexj.html

<日本シップヤード株式会社>
本社:東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 前田 明徳
ウェブサイト:https://www.nsyc.co.jp/


この件に関するお問い合わせ先

◆日本郵船株式会社 広報グループ 報道チーム
電話:03-3284-5177  メールアドレス:NYKJP.ML.MEDIA@nykgroup.com

◆株式会社ジャパンエンジンコーポレーション 総務広報課
電話:078-949-0800  メールアドレス:pr_info@j-eng.co.jp

◆株式会社IHI原動機 管理本部総務部(担当:舶用事業部 国内営業部)
電話:03-4366-1203  メールアドレス:ips-webmaster1@ihi-g.com
 
◆日本シップヤード株式会社 管理部 人事総務グループ
電話:045-212-8205  メールアドレス:info@nsyc.co.jp

(注1) HAZID: Hazard Identification Study)
新しい構造物やシステムを作る場合に、人命や財産の安全、環境などにどのような影響を及ぼすかを様々なシナリオを想定し、潜在的なリスクに基づく項目の洗い出しを通して評価を行う安全性評価手法の一つ。

(注2) 代替設計承認
現状では国際規則が定まっていない船舶の設計を行うに際し、既存の国際規則で規定されている安全性と同等を確保できていることを立証し、主管庁の承認を得ることを指します。
アンモニア輸送船においてアンモニアを舶用燃料として利用することは、現時点ではSOLAS条約(海上人命安全条約、International Convention for the Safety of Life at Sea)の規定から逸脱します。一方で、SOLAS条約に基づく「IGCコード(液化ガスのばら積み輸送のための船舶の構造及び設備に関する国際規則、The International Code of the Construction and Equipment of Ships Carrying Liquefied Gases in Bulk)」の関連各章に規定されている安全性と同等を確保できている場合、規定されていない燃料を利用する設計が可能となり、アンモニアを舶用燃料として利用できることになります。
今回4社はアンモニア燃料アンモニア輸送船についてAiPを取得したため、今後はより詳細な設計を行い、船舶の建造開始までに代替設計承認を取得することを目指します。

(注3) グリーンイノベーション基金事業
「2050年カーボンニュートラル」に向けてエネルギー・産業部門の構造転換や、大胆な投資によるイノベーションといった現行の取組みを大幅に加速するため、NEDOに2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業等に対して、最長10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援する基金制度。グリーン成長戦略において実行計画を策定している重点14分野を中心に支援が行われます。

以上

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その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。