今年も「紀州みなべのアカウミガメ調査」を実施

GPSで2頭の移動経路を追跡

   当社のウミガメ調査マーク

 当社は認定NPO法人アースウォッチ・ジャパン(注1)と協働で実施する「紀州みなべのアカウミガメ調査プログラム」において、GPS機能付き送信機によるアカウミガメ(注2)の追跡調査を今年も実施しました。

 和歌山県みなべ町は、絶滅危惧種に分類されるアカウミガメの産卵地として本州最大規模を誇る地域です。「紀州みなべのアカウミガメ調査プログラム」は、広大な海を回遊するウミガメに当社イメージを重ね、生態解明と保全活動を目的に2016年に始まりました。以降毎年7月、当社グループ社員と一般公募者からなるボランティアを現地に派遣し、本プログラムの主任研究者である松沢慶将先生(NPO法人日本ウミガメ協議会会長)の指導のもと、産卵のため夜間に上陸するアカウミガメの個体識別調査を実施しています。

 5年目となる今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ボランティアプログラムは見送りましたが、松沢先生を中心に現地調査を継続、2頭のアカウミガメにGPS機能付き「アルゴス送信機」を装着し、産卵期間後の回遊経路を追跡しました。

 「うみちゃん2号」、「はなちゃん2号」と名付けた2頭の位置情報は、松沢先生の解説とともに社内ポータルサイトで共有し、当社グループ社員が海洋環境への興味関心を深める一助となっています。

送信機をつけた「はなちゃん2号」

松沢慶将先生のコメント

 みなべ町千里浜で初めて産卵した「はなちゃん2号」に対して、「うみちゃん2号」は2015年と2017年に千里浜で産卵した回帰個体です。昨年の衛星追跡をふまえ、千里浜での産卵経験の有無が東シナ海への回遊ルートに関係するかにも注目しながら追跡しました。ウミガメ類には地磁気コンパスが備わっていて、目的地へ直線的に移動する能力があることが知られています。しかし、今年の2頭は索餌(さくじ)海域に向けて外洋を直線的に移動するルートは取らずに、千里浜を離れた後は、徳島県南部から高知県西部、大分県南部から宮崎県、鹿児島県東部沿岸を移動して、大隅海峡から東シナ海へ入り、その後、日本海に達しています。これまで産卵後のアカウミガメの回遊経路を追跡した研究で日本海への侵入事例はそれほど多くありません。近年、東シナ海における餌資源の減少や、温暖化の影響により索餌(さくじ)海域が北へシフトしてきた可能性もあり、今後も調査事例を増やして注視する必要があります。
 一方、岸伝いに移動するパターンも過去の追跡調査では限定的でした。その原因はまだ解明されていませんが、沿岸漁業による混獲死の危険が高くなるとの観点からは、極めて重要なテーマになります。現在、日本で産卵するアカウミガメの数は大きく低下しており、本州最大の産卵地でもある千里浜では、30年前には350回確認された産卵が、今年は63回にとどまっています。
 本プロジェクトで衛星追跡調査を重ねていくことで、産卵後のアカウミガメがどこでどのような脅威にさらされているのか解明できれば、本種の保全に大きく貢献していくことが期待されます。

「うみちゃん2号」の動き

「はなちゃん2号」の動き

当社はESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の中心に据え、今後も事業に密接な関わりがある海洋環境、生物多様性の保全活動に取り組みます。

(注1)認定NPO法人アースウォッチ・ジャパン 
アースウォッチは、1971年にアメリカ・ボストンで設立された、世界各地で生物の多様性と生息地などの野外調査を、「資金」と「人手」の両面で支援する国際環境NGO。派遣された市民ボランティアは、一流の科学者の手ほどきを受けながら、実証的な調査活動をしている。アースウォッチ・ジャパンは、1993年にこの活動を日本に広めるために発足。
https://www.earthwatch.jp/


(注2)アカウミガメ
産卵地である海岸の開発や侵食、漁業による混獲などの影響により生息数が減少し、国際自然保護連合(IUCN)が作成するレッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)で絶滅危惧II類に指定されている。

※本プログラムは参加者が自然環境や生物の変化に対する理解を深め、持続可能な環境に向けた行動を促すことも目指しており、SDGs(持続可能な開発目標)の以下目標達成に寄与します。

以上

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その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。