自動運航を見据えた情報統合型船橋で海難事故ゼロ

2018年9月27日

―航海当直の効率化を追求し安全航海―

 当社は船橋(せんきょう、注1)の新たなコンセプトを完成させ、当社グループが船舶管理を行う大型コンテナ船に採用しました。情報統合型船橋と呼ぶ新コンセプトでは、船橋および航海計器のデザインと配置を人間工学に基づいて最適化するとともに、機器のIoT面を強化して、航海の安全と効率の向上を図ります。

1. 背景
 海難事故の半数が、航海士による誤認識や誤判断などのヒューマンエラーに起因していると言われています。当社は、2007年から舶用機器メーカーや造船所などと連携し、航海士の航海当直(注2)中の業務効率向上や、ヒューマンエラー低減を可能とする船橋に関する研究を重ねてきました。

2. 新コンセプトの概要
(1)情報統合型の着座式コンソール(操作卓)

 一般的な船橋では、様々な航海計器や操船機器類が独立して配置されています。そのため航海士は船橋内を移動して航海に必要な情報を収集し、立って操船しています。
 これに対し新コンセプトでは、主要な航海情報の確認や機器の操作を手元で同時に行えるよう従来比3分の2程度のサイズのコンソールに統合配置するとともに、周囲の状況把握に集中しやすいよう着座式としました。
 さらに、衝突を避けるための避航操船も着座状態で容易に行えるようジョイスティック式オートパイロットを採用したほか、緊急時の手動操舵用のミニホイール(舵輪)をコンソールに設置するなど安全に配慮しました。

(2)船橋全体の最適化
 窓の大型化や窓間部分での死角の最小化、ワイパーの遠隔操作機能の採用、船橋形状の最適化などを図り、着座位置から十分な視界を確保し、航海当直時の労働環境向上や疲労低減が可能な配置設計をしました。
 また、出入港や離着桟時など、ウイング(注3)での操船を考慮し、大型窓と床窓を採用し、遠隔操作スタンド(注4)やマルチファンクション・ディスプレイ(注5)を配置したコンソール等を設置しました。

(3)船舶運航支援装置「J-Marine NeCST」の導入
 航海士と水先人による船橋内での情報共有を効率的に行うため、当社が株式会社MTI、日本無線株式会社と共同で開発した「J-Marine NeCST」を導入しました。多くの船舶が行き交う輻輳海域などで航海士の当直人数を増やした時でも容易に情報を共有でき、BRM(注6)効果の向上が期待できます。

3. 今後の展開

 情報統合型船橋は、自動車専用船・原油タンカーへの採用が決まっており、他の船種への採用についても検討が進められています。将来的には、自動運航船の実現も視野に入れ、情報統合型船橋をさらに進化させる予定です。

 当社は今年3月に策定した新中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green” で持続的な成長を遂げるための戦略を示しました。現場のユーザー視点を生かして、デジタライゼーションや効率化を推進し、さらなる安全・効率運航の実現し、新たな価値創造に取り組みます。


(注1)船橋:操船などを行う場所。ブリッジともいう。
(注2)航海当直:航海士が4時間交代の3シフト制で、操船や周囲の船舶の動きなどの監視を24時間体制で行うこと。
(注3)ウイング:船体左右に出ている船橋の張り出し部分。
(注4)遠隔操作スタンド:主機関・舵・バウスラスターを遠隔で操作できるようにウイング端部に統合配置された操作台。
(注5)マルチファンクション・ディスプレイ:航海情報、レーダー、ECDIS(電子海図情報表示装置)の表示や操作等の複数のタスクを実行できるワークステーション。
(注6)BRM(Bridge Resource Management):ヒューマンエラーや機器の故障による重大事故を予防するための体制を船橋内で構築する手法。

CG完成図(真上)


画像提供:日本無線株式会社

CG完成図(右前)

画像提供:日本無線株式会社

CG完成図(全体)


画像提供:日本無線株式会社

実物(左前)


実物(コンソール)


実物(ウイング外部)


実物(ウイング内部)

<関連プレスリリース>
2017年5月17日発表:航海情報管理の新時代に向け「J-Marine NeCST」を共同開発
http://www.nyk.com/news/2017/1187859_1521.html

<参考情報>
株式会社MTI
本社:東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 田中康夫
ウェブサイト:https://www.monohakobi.com/ja/

日本無線株式会社
本社:東京都中野区
代表者:代表取締役社長 荒健次
ウェブサイト:http://www.jrc.co.jp/jp/index.html

以上

 
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