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力を合わせて前に進もう
-第127回創業記念式典で社長挨拶-

2012年10月2日

 当社の第127回創業式典が10月2日、東京都千代田区の本店15階ホールで開催され、社長の工藤泰三は次のように挨拶しました。

 まず冒頭に申し上げますが、先日独占禁止法違反の嫌疑により、日米当局による調査を受けたことは大変遺憾であります。当社といたしましては、当局による調査には全面的に協力し、真摯に対応を続けてまいります。また、社員の皆さんにおかれましては、従前にも増して独禁法コンプライアンスを十二分に意識の上、業務を遂行願います。

「景気概況」

 さて現在の経済・景気概況を俯瞰(ふかん)しますと、まず、日本は、東日本大震災からの復興需要や、エコカー補助金といった政策効果に支えられた特需はあるものの、慢性的な需要不足という根本的な問題は解決されておらず、依然外需に頼らざるを得ないという構造に何ら変化はありません。ところが、為替は、対応できるレベルをはるかに超えた円高水準で定着化しつつあります。

 一方、海外に目を転じると、米国は個人消費や鉱工業生産、設備投資などが回復基調にあることは事実ですが、今ひとつ力強さに欠けています。欧州は、南欧諸国が次々と債務危機に陥り、その度に綱渡りでユーロ圏やIMFの支援を取り付けて当座の破綻を回避するということが繰り返され、マイナス成長が危惧される状況です。また中東ではイランとイスラエルの緊張が高まり、シリアでの内戦も激化しており、近隣のアラブ諸国への波及、ひいては世界経済への影響が懸念されます。

 幸い、世界経済をけん引することが期待されるアジアは、中国・インドなどで成長ペースが鈍化しているものの、総じて堅調な成長を維持しているのが、唯一の救いといえるでしょう。ただ、最近急速に緊張が高まった日中関係が当社グループの中国市場拡大に大きな影響を与えかねず、動向が大変懸念されます。

「NYK業績」

 このような経済状況にもかかわらず、過去、需要の急拡大時に発注した新造船の竣工ラッシュが現在ピークを迎え、需給ギャップが急速に拡大中で、当社のドライバルカー部門や原油タンカー部門でも、長期契約を持たない所謂フリー船の収支が最悪の状態に陥っています。逆に、そのほとんどが、長期契約船であるLNG(液化天然ガス)船事業は、一定の業績を維持しており、あらためて長期契約を有する事業の重要性を再認識させられます。また、昨年度に東日本大震災とタイの大洪水の影響で輸出量が大幅に減少した自動車部門の収支回復は、明るい材料です。

ただ今回の収支回復で特筆すべきは、何といってもコンテナ船事業でしょう。需給ギャップという点では、バルカーやVLCCと同様か、あるいはさらに悪い状況であるにもかかわらず、運賃が大幅に上昇しほぼ収支均衡レベルまで回復を示しています。しかしながら、後ほど触れますが、実は全く安心できる状況にはありません。

 いずれにせよ、不定期船部門におけるフリー船の大幅な赤字、ならびに、欧米市場への依存度が高い航空運送事業と客船事業の苦戦を長期契約事業などで何とか補完しているというのが、本年度上期の状況です。経常利益は通期で400億円という目標を掲げていますが、目標達成に向けて、下期もグループ一丸となって頑張りましょう。

 それでは、各事業部門の状況と今後の対処すべき課題を、少し詳しく触れてみましょう。

「一般貨物輸送事業」

 まずコンテナ船事業ですが、大きな需給ギャップを抱えているにもかかわらず、収支が改善しつつあると申し上げました。リーマン・ショック後の09年度は、急激な荷動き減少でコンテナ船各社は、巨額赤字計上を強いられましたが、10年度にはリーマン・ショック前を超える水準まで、荷動きが急回復した為、需給が一時的に締まり、運賃ならびに収支が急回復しました。しかし、一方でリーマン・ショック前の荷動き急増に対応した船舶拡大の余波が残るにもかかわらず、急騰する燃料費対応で差別化を図ろうと、燃費効率に優れる超大型コンテナ船の発注ラッシュが同時に進行しました。このような状況の中、欧州の通貨統合の矛盾がついに表面化し、11年度の欧米向け荷動きは大幅に鈍化してしまい、コンテナ運賃は急落、業界はリーマン・ショック後の09年度並みの巨額赤字計上を余儀なくされてしまいました。流石(さすが)にこの状況には到底耐え切れず、さらに一段上の合理化に踏み切りました。コンソーシアム再編・集約化は、その端的な例といえます。その結果、何とか収支均衡を図れるまで、状況が回復したというのが、実情ですが、大変脆弱(ぜいじゃく)な状況にあり、且つ、2014年まで需要をはるかに上回る新造船ラッシュがさらに見込まれる中、今後のマーケットは全く予断を許しません。従って、われわれは、コンテナ船隊整備は当面、最小限に抑え、一方で、NVOCC※1事業を中心とした物流事業を拡大するMore Than Shipping戦略を着実に推進していきましょう。特に、堅調な新興国、とりわけ、当社グループが得意とするアジア市場での物流事業拡大を図っていかねばなりません。
 一方、欧米市場が事業環境を大きく左右する航空運送事業も、当分の間大変厳しい状況が続くと予想されますので、徹底したムダ・ムラ・ムリの排除によるコスト削減を継続し、環境・運航性能に優れる保有機材の特性を最大限生かしつつ、チャーター便、海外市場拡大に向け、地道な努力を重ねてください。

※1 NVOCC: Non-Vessel Operating Common Carrier。船舶を所有せずに国際複合輸送を取り扱う輸送業者

「不定期専用船事業」

 次に、不定期専用船事業ですが、自動車船部門は日本およびタイ出し輸出の回復と堅調な三国間の荷動きに支えられ、上期はまずまずの状況で推移しました。ただし、下期は経済の悪化に伴い、欧州向け輸送需要のさらなる減少が懸念されます。トンマイルの長い欧州向けの不調は影響が大きく、今後海上荷動きの拡大は余り期待できない状況なので、ここでも、燃料費を中心にコスト削減の深度化やムダのない効率的な配船を徹底せねばなりません。一方で、アジア・新興国における自動車販売は確実に増加傾向にありますので、これら地域でのRORO※2ターミナル、PDI※3、内陸輸送などのこれまたMore Than Shippingの領域である自動車物流事業拡大にさらに力を注ぐ必要があります。

 リキッド部門については、原油や石油製品のマーケットが、日本・欧州の需要減に加え、最大需要国であるアメリカのシェールガス生産の本格化により、非常に厳しい状況になっています。ただ必ずしも悲観的になる必要はありません。オイルメジャーの安全基準の厳格化は、中小オペレーターの退出を促し、むしろわれわれの高い品質基準、すなわちMore Than Shippingが再評価されるチャンスと捉えるべきでしょう。

 LNG関連では、本年6月に米シェブロン社が豪州で推進するウィートストーンLNGプロジェクトに東京電力(株)殿、三菱商事(株)殿と共同で参画することを決めました。ガス開発の権益を取得するのは邦船社としては初めてであり、プロジェクトへの参画を通して、貨物輸送の機会獲得に近付くとともに、日本へのエネルギー安定供給に当社グループが貢献できることに大変意義を感じますし、これもまたMore Than Shippingの事例です。今後の懸念は、世界的に需要が伸び続ける天然ガスを運ぶLNG船事業が、成長事業として業界でも大きな注目を集めており、競争が激化していることです。既に、コモディティー化が始まりつつあるLNG船事業において、いかに「+(プラス)α(アルファ)」を創出し、お客さまの評価を得るか、知恵の絞りどころです。

 シャトルタンカーやドリルシップなどの海洋事業も成長分野ですが、高い技術を必要とすることから、当社の強みを発揮できる有望な事業と考えています。長期契約を積み重ねて、業容を着実に拡大させていきましょう。

 ドライバルカー部門については、リーマン・ショック前に発注されたケープサイズなどの竣工がラッシュし、供給圧力がピークを迎え、スポット用船料は、直接船費も賄えない惨憺(さんたん)たる状況です。当社のケープサイズ新造船の大半は長期契約を前提にしたものでしたが、荷動きの急激な鈍化により、もくろみが外れた新造船ならびに中期用船が増加したことも事実です。スクラップ、係船など船隊のスリム化を急ぐ一方で、地道に中長期の貨物輸送契約獲得を重ね、一刻も早くカーゴロング※4の状態に復帰せねばなりません。また当社の場合、用船マーケット高騰の折、中長期契約貨物獲得のために手当てした用船料の高い船が、順次返船時期を迎えますので、カーゴロングの状況にしておけば、ケープサイズ部門も従前のような収益事業に必ず復帰します。もちろんカーゴロングへの回帰には、新規顧客開拓が必須ですが、市場拡大が止まった日本には多くを期待できず、NYK Bulkship (Asia)社、NYK Bulkship (Atlantic)社など海外での営業強化が必須です。

※2 RORO:Roll on/Roll off。自走、またはけん引車での荷役
  ※3 PDI :Pre-Delivery Inspection。完成車の納品前点検・補修・部品補給サービス
  ※4 カーゴロング:自社船隊のスペースに対し、中長期輸送契約の貨物量を多めに確保すること

「客船事業」

 客船事業については、クリスタル・クルーズが昨年度に3期連続赤字となり、大変な苦境に陥っています。従前のプロダクト・アウト的な考えを改め、お客さまのニーズをタイムリーにキャッチする柔軟な商品づくりが肝要です。ムダ・ムラ・ムリを徹底的に排除したコストパフォーマンスに立脚した上で、最高のおもてなしを提供することが客船事業のコアコンピタンスであることを忘れてはなりません。

「技術・安全・環境」

 さて、当社は、各船種の自社管理船に海上ブロードバンド通信装置の導入を決めました。当該装置の導入は、コンテナ船の「IBISプロジェクト」に代表される最適経済運航を追求する取り組みには必須であり、気象・海流予測情報、運航データなど最適運航追求に必要な大容量データを海陸間で同時に共有でき、燃費削減へ大きく寄与します。また本年7月には、当社が開発に携わった世界初の主機掃気バイパスによる空気潤滑システムを搭載した石炭運搬船“SOYO(双洋)”が竣工しました。いずれの事例もまさに「More Than Shipping」を実践するものです。二酸化炭素(CO2)・硫黄酸化物(SOX)・窒素酸化物(NOX)・バラスト水などの環境対策や、高騰する燃料油価格はわれわれが対処すべき重要な課題ですが、これら問題への対応能力・技術力が他社との差別化につながることを十分意識してください。

「コーポレート」

 現在、ムダ・ムラ・ムリの解消、いわゆる「3M解消プロジェクト」を全社展開していますが、特にコーポレート部門の改革は重要だと考えています。「会計」・「仕組船関連」・「総務CSRの業務の見える化」・「業務委託関連」・「IT関連」がターゲット項目として挙げられていますが、船などのハードでの差別化が極めて困難なわれわれの業界において、今やコーポレート部門の競争力がNYK全体の競争力を左右するといっても過言ではありません。
 また、コンプライアンスも極めて重要な経営課題です。コンプライアンスに違反した企業の代償は極めて大きく、市場から追放されるケースさえあります。特に独禁法への抵触は会社の命運を左右しかねません。冒頭にも触れました通り、従前にもまして社員1人1人が高い意識を持って独禁法遵守に努めることを強く望みます。

「結び」

 以上、各部門の現状と対処すべき課題について述べてまいりましたが、課題解決には、矢張り、誠意・創意・熱意、すなわちNYKグループのDNAを十分に発揮しながら「More Than Shipping」を地道に追求するしかありません。また、当社グループの事業拡大には、成長するアジア経済に関連する海外市場開拓がいよいよ重要となっていることも、皆さんが既に体感されている通りです。従って今まで以上にグロバール市場で通用する人材確保・育成を急がねばなりません。われわれの進んでいる方向に決して間違いはありません。皆で力を合わせ、この難局を乗り越えていきましょう。

 最後に、皆さんとご家族のご健康、ご多幸を心より祈念して、私からの挨拶といたします。

以上
 

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その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。