Greenの取り組み
ESG経営を推進する当社グループは、再生可能エネルギーをテーマに次世代に向けた新たな価値創出を目指し、2019年4月にグリーンビジネスグループを創設しました。
水素・アンモニア等の次世代燃料、洋上風力発電事業、LNG燃料供給事業、CO2輸送やカーボンクレジット等さまざまな取り組みを強化しています。
2022年4月にはグリーンビジネスの浸透を図るため、新ブランド「NYK GREEN EARTH」を策定。脱炭素社会の実現に向けた活動を通じ、企業と社会の持続的な発展・成長とともに、新たなエネルギーバリューチェーンの構築を目指しています。
新ブランド「NYK GREEN EARTH」

当社は、当社のグリーンビジネスによる低・脱炭素に向けた新しい価値創造の取り組みを集約し、「NYK GREEN EARTH」という新ブランドを立ち上げました。
ブランド名称は、海から地球を美しく、との思いをわかりやすく伝えるため、環境を意識した「GREEN」と「EARTH」をシンプルに組み合わせました。
対象とする事業は、洋上風力関連、次世代燃料開発、アンモニア・水素サプライチェーン参画、LNGバンカリング、CO2輸送・貯蔵、カーボンクレジット、海洋エネルギー関連、スタートアップ支援などとなります。
LNG燃料供給への取り組み
当社グループは船舶の脱炭素化を喫緊の課題と位置付け、ゼロエミッション燃料への移行に向け、世界に先駆けてLNG燃料船を実用化させてきました。LNG燃料の具体的な取り組みは関連リンクを参照下さい。
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船舶では従来、重油が燃料として使用されてきましたが、LNG(液化天然ガス)へ燃料転換することで、重油使用時と比較してCO2(二酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)、SOx(硫黄酸化物)を大幅に削減することが出来ます。当社グループは、舶用LNG燃料をゼロエミッション燃料が実用化するまでのブリッジソリューション※と位置付け、業界のフロントランナーとしてLNG燃料供給事業を展開しています。
当社グループは船会社の立場から需要と供給の双方に関与出来るほか、世界各地の重要拠点に参画しながらLNG燃料のバリューチェーン構築を進めています。
- ※当社グループではLNG燃料について、船舶のゼロエミッション化が可能な燃料として有望な燃料アンモニア・水素燃料等に切り替えるまでのブリッジソリューションとして位置付けている。

世界初LNG燃料供給船の導入

当社グループは環境課題に対応する布石として、2017年に世界初のLNG燃料供給船”Green Zeebrugge”の運航を開始しました。当初よりZeebrugge港(ベルギー)を拠点に北欧州域内でのLNG燃料供給事業に関与し、当社子会社のUECC社をはじめ次世代燃料船のバリューチェーン構築に貢献しています。
今後はゼロエミッション燃料の供給も視野に、脱炭素社会を実現していきます。
日本初LNG燃料供給船の導入

(セントラルLNGマリンフューエル社提供)
2020年9月に当社、川崎汽船(株)、(株)JERA、豊田通商(株)が共同で出資するセントラルLNGマリンフューエル社が運航するLNG燃料供給船“かぐや”を竣工させ、中部地区においてShip-to-Ship方式による船舶向けLNG燃料供給事業を本格的に開始しました。本船は、国内で稼働する初めてのLNG燃料供給船として引き続きLNG燃料の安定供給に務めています。
九州瀬戸内地区でのLNG燃料供給拠点整備
当社は九州電力(株)、伊藤忠エネクス(株)、および西部ガス(株)と共に、九州瀬戸内地域における燃料供給の事業化に向けた共同検討に関する覚書を締結致しました。
4社は、九州瀬戸内地域での船舶向けLNG燃料供給の事業開始に向け、2023年度に竣工予定となっている九州電力(株)向けのLNG燃料石炭専用船などに代表される具体的な供給先や、LNG燃料供給船の建造・保有方法について共同で検討を進めています。
次世代燃料への取り組み
当社グループは、日本の2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという目標へ向けて、水素やアンモニアといった次世代の燃料普及に向けて取り組みを進めています。
アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発


当社は、2021年10月にグリーンイノベーション基金事業※の一環である国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)助成事業の公募採択を受け、共同開発パートナーと共に「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発」を開始しました。
燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しないアンモニアを燃料とすることによって、航海中の温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下「GHG」) 排出量を従来よりも大幅に削減することが可能となります。当社は船舶のゼロエミッション化実現を目標に取り組みを進めます。
- ※グリーンイノベーション基金事業
「2050年カーボンニュートラル」に向けてエネルギー・産業部門の構造転換や、大胆な投資によるイノベーションといった現行の取り組みを大幅に加速するため、NEDOに2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業等に対して、最長10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援する基金制度。グリーン成長戦略において実行計画を策定している重点14分野を中心に支援が行われる。
次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合(AHEAD)
水素社会の早期実現に向けて、当社は2017年から次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合(英語名:Advanced Hydrogen Energy Chain Association for Technology Development、以下「AHEAD」)に参画しています。
AHEADは2020年にNEDO助成事業の公募採択を受け、MCH(メチルシクロヘキサン)を用いて世界初となる水素国際サプライチェーンの実証を完了しました。
また、2021年からはENEOS(株)が国内で実施するMCH実証事業へブルネイで生産したMCHを供給します。
- 関連リンク:
パートナーシップ
新たな分野への挑戦には「技術力」x「協創」の組み合わせが必要であり、「協創」はイノベーションを推進する原動力です。わが当社は更なる「協創」を生み出すべく、以下のネットワークに参画しています。
今後も世界トップクラスの国内外のパートナーとの協創により、海運業界のみならず社会全体の脱炭素化に取り組んでいきます。
パートナーとの協創事例
- クリーン燃料アンモニア協会
- 水素評議会(Hydrogen Council)
- The Maersk Mc-Kinney Moller Center for Zero Carbon Shipping
- Getting to Zero Coalition
- 水素バリューチェーン推進協議会
洋上風力への取り組み
日本近海における洋上風力発電市場は急速な拡大が見込まれています。当社グループは、海運事業を通じて長年培った技術力、日本における規制や法制度に関する知見に加え、オフショア事業の実績、全国に展開しているグループ会社ネットワークを最大限に生かし、洋上風力のバリューチェーン全体に積極的に関与していく事を検討しています。

SEP船 (Self-Elevating Platform:自己昇降式作業船)

当社はオランダのVan Oord Offshore Wind BV社と共同で、洋上風力発電設備の設置作業に使用する自航式SEP船(Self-Elevating Platform:自己昇降式作業船)の保有および日本国内での運航の実現に向けて検討を進めています。船籍対応など日本特有の条件を満たしながら、大型化が進む風車の据付に対応可能なSEP船の日本国内マーケット投入を目指します。
CTV(Crew Transfer Vessel)

当社はスウェーデンのNorthern Offshore Group AB社(以下NOG社)と洋上風力発電向けの作業員輸送船(Crew Transfer Vessel、以下「CTV」)事業における協業を発表し、NOG社のオリジナル船型をベースとした国内仕様CTVの建造を目指しています。更に、今後の洋上風力発電の全国的な展開に向けて、全国各地でCTVの運航体制を構築していきます。また、同社との協業の一環として、2022年よりNorthern Offshore Services AS社(NOG社の100%子会社であるCTV運航会社、以下「NOS社」)が欧州で運航する新造船“Energizer”を当社が買船・保有し、NOS社との人材交流も進めています。
地質調査船

当社は、応用地質株式会社(以下、「応用地質社」)およびオランダに本社を置くFugro社と、国内洋上風力発電設備向け海底地盤調査サービスにおける協業を発表しております。
国内最大手の地盤調査会社である応用地質社と、世界各地での洋上風力向け地盤調査事業の実績を持つFugro社の強みを活かし、国内洋上風力発電事業における総合的な地質調査サービスの提供を目指します。
海事コンサルティング

(株)日本海洋科学は、当社グループの海事コンサルティング会社として港湾や洋上風車等の海域環境調査を実施しています。洋上風力発電プロジェクトでは、立地環境の調査及び風車の規模・仕様に係る事業者様の検討支援、操船シミュレーターを活用した風車設置工事中・完成後の航行安全対策、風車運用中の潜水点検、作業船乗組員への操船訓練、海域監視システム等、お客さまのニーズに応じて総合的なコンサルティングサービスを提供しています。
風車輸送ビジネス

当社グループは重量物運搬船社として100年を超える歴史を有しており、現在では重量物船(Heavy Lifter)とモジュール船(Deck carrier)を運航する唯一の邦船社です。
海外の洋上風力発電プロジェクトにも参入しており、台湾向けにナセル(発電機)を重量物船で、ジャケット(基礎部)をモジュール船で輸送した実績があります。
2021年9月には、800トン吊りの重量物船も船隊に加わり、日本国内の洋上風力発電案件にも積極的に取り組んでいきます。
その他の取り組み
当社グループは、海運だけでなく社会全体の脱炭素化に向けたエネルギーバリューチェーン全体での再生可能エネルギー関連事業へ積極的に参画しています。
スタートアップアクセラレータープログラム:Startupbootcamp
当社は、2021年6月より三菱商事(株)と共同で低・脱炭素社会の実現に寄与するスタートアップ企業を支援・育成するプログラムを開始。スタートアップブートキャンプ・オーストラリア社をパートナーとして起用し、2021年には低・脱炭素のテーマで募集した世界中のスタートアップ企業から10社を選定した上で、事業化に向けた支援プログラムを実施しました。
当社はこのようなプログラムを通して、有望な企業を発掘し、将来的な協業も視野に入れながら、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
つばめBHBへの出資
当社は、20年6月に東京工業大学発のベンチャー企業である「つばめBHB(株)」へ出資。
同社は東京工業大学の細野秀雄栄誉教授が発明したエレクトライド触媒を用い、従来の技術より低温・低圧でアンモニア生産できる技術の実用化を目指しており、当社は革新的な技術の商業化をサポートし、環境負荷の低減に貢献します。
豪州カーボンクレジット供給会社への出資

当社は、豪州で原生林再生プロジェクトを通じたCO2の吸収とカーボンクレジットの販売を手掛けるAustralian Integrated Carbonに、三菱商事(株)と共同設立した持ち株会社Japan Integrated Carbonを通して出資。この取り組みを通じ、当社はカーボンクレジット創出ビジネスの経験とノウハウを獲得し、世界の船舶の温室効果ガス排出量のネットゼロ化を支援することで当社の目指すESG経営を具現化できると考えています。
脱炭素に向けbp社とStrategic Partnershipを締結
当社は国際的統合エネルギー企業であるbpと脱炭素をさらに推進するための戦略的パートナーシップに関する覚書を締結。従来の船舶用燃料から液化天然ガス(LNG)、バイオ燃料、メタノールなどの代替燃料への移行を協力して促進し、アンモニアや水素などの将来的なゼロエミッションの船舶用燃料を開発していきます。また、二酸化炭素(CO2)の海上輸送やその他のソリューションを提供することによって、重工業や発電で使用されるアンモニアと水素のサプライチェーンへの参画も模索していきます。
三菱造船(株)とCO2輸送技術の共同開発
当社は、カーボンニュートラル社会においてグローバルに需要拡大が見込まれる、大型船による二酸化炭素(CO2)輸送技術の共同開発を三菱造船(株)と開始。この共同開発事業を通じ、CCUSバリューチェーン構築に必要な、CO2の輸送を担う液化CO2輸送船(LCO2船)を含む各種技術の開発に尽力し、CCUSバリューチェーンへ参画していきます。

液化CO2の海上輸送・貯蔵事業への参画

当社は2021年12月に、ノルウェーのKnutsenグループと合弁会社Knutsen NYK Carbon Carriers AS (“KNCC”)を設立。KNCCは液化CO2の海上輸送・貯蔵事業を全世界で商業展開することを目指しています。既に普及している液化CO2の輸送技術の活用に加え、常温で液化して輸送・貯蔵する技術(PCO2®)の開発にも着手しています。当社はKNCCを通じて、カーボンニュートラルな社会を実現するために有効かつ必要な炭素回収・利用・貯留(CCUS)のバリューチェーン構築に務めていきます。