Digitalization and Green
技術本部長メッセージ
技術本部が持つ力を結集させ、加速度的に価値を創出する
専務執行役員
チーフセーフティーオフィサー(マリン)(CSO(Marine))
チーフインフォメーションオフィサー(CIO)
グループIT政策会議議長
技術本部長(上級環境管理責任者:ECEM、技術戦略会議議長)
小山智之

当社グループのESG経営推進において、安全と環境への対応は最重要課題であり、技術本部の持てる力をどれだけ結集できるかが鍵だと考えています。2018年発表の未来のコンセプトシップ「NYK SUPER ECO SHIP 2050」の環境(E)要素も含め、2050年までの研究領域とタイムフレームを示した「船舶の技術・イノベーションロードマップを策定し、安全運航の実現と船舶の脱炭素化に向けた研究開発を進めています。
また、船舶からのCO2排出量削減とサプライチェーンへの波及効果を見込んだ中長期環境目標を掲げています。中長期環境目標の達成に向け、まずは新造計画に合わせながらLNG燃料船の導入を検討していきますが、それだけではGHG削減効果は限定的です。水素・アンモニア燃料船の開発といったゼロエミッションを目指した燃料転換や、船型開発によるハードウェアの改良のほか、お客さまのご協力も得ながら、配船や荷役を含めた停泊時間の短縮など、運航効率の向上も掛け合わせることで目標達成を目指します。これらにデジタライゼーションを組み込むことで、その効果は飛躍的に高まると考えています。
当本部には工務、海務、環境、デジタライゼーション、情報企画、技術本部統轄の各グループがあり、130名規模のスタッフで構成されています。加えてグループ会社に(株)MTI、(株)日本海洋科学、(株)NYK Business Systems、Symphony Creative Solutions Pte. Ltd.という4つのラボを持ち、この技術集団は唯一無二の強みです。この組織力と実績があるからこそ、舶用メーカーや造船所、海事系以外の企業ともオープンコラボレーションが実現できるのです。2020年7月には、マースクゼロカーボンシッピング研究所(The Maersk Mc-Kinney Moller Center for Zero Carbon Shipping)の設立に参画を決め、海事産業の燃料転換による脱炭素化を促進する研究に寄与する考えです。
当本部には2つの大きな機能があります。事業を支えるインフラ技術(土台)と差別化を図る技術(先端技術)です。前者は、船舶の発注、船員の採用、教育、配乗を含めた船舶管理、ITインフラなど事業根幹を支える技術であり、これがなければ1日たりとも事業を継続することはできません。後者はデジタライゼーションを含む未来に向けた半歩先の技術です。先端技術の先駆けとして、2008年に導入した船舶パフォーマンスモニタリングシステム「SIMS」により運航データに加え、気象・海象データなどがビッグデータとして蓄積し、エンジン性能解析、状態基準保全(CBM※)のほか、有人自律運航船のシステム開 発 にもつなげています。また、2019年から本格稼働した船舶管理業務共通プラットフォーム「NiBiKi」により、船上業務のHuman Elementもビッグデータ化が可能となりました。SIMSやNiBiKiで収集されたデータを、当社グループの技術集団によって解析していく力こそ差別化の根幹であり、将来のビジネスリターンにもつながると考えています。
- ※Condition Based Maintenance:船内に搭載された各機器の状態を常時監視して、状態に応じて都度メンテナンスを行う予防保全。これにより高度な機関プラントの運用が期待できる
Digitalization and Greenの考え方
当社グループは、2018年3月に中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を発表しました。タイトルにある“Digitalization and Green” (D & G)は、当社グループが生き残っていくために向かうべき道であり、グループを挙げてこれを推進していきます。
Digitalization推進には、同業他社はもちろんのこと他業界とのコラボレーションが重要であり、ソフトを活用し、事業の差別化を図ります。当社グループのDigitalizationの代表例は、2008年に開発した運航データをリアルタイムで収集・解析できるシステム「SIMS」です。
蓄積した大量の運航データをいずれはAI(人工知能)を使って解析し、航行時の危険や不具合の予知に活用していきます。将来の有人自律運航船にもつながると考えています。
“Digitalization”と“Green”をキーワードに新たな価値創出

Greenについては、3つの側面で取り組みます。
- 12020年のSOx排出規制をはじめとする環境規制への対応
既存船におけるSOx規制への対応には、硫黄濃度の低い燃料(適合油)への切り替え、排ガス浄化装置(スクラバー)の船舶への搭載のいずれかの対応が必要となるなか、2019年4月に社長をプロジェクトリーダーとする社内横断的な推進体制を構築。大きなトラブルもなく、2020年1月1日からの規制開始を迎えています。
- 2GHG排出量の削減推進
外航海運のゼロエミッション化は、大変な努力と困難を伴いますが、達成すべき重要な課題です。
併せて、貴重な海洋生態系保全のためにも、徹底した安全運航が我々の責務です。当社グループは、中長期環境目標(SBT認証取得済み)を掲げ、長期的な視点で取り組む課題を特定するとともに、着実に技術開発を進めています。
2021年9月には、当社グループの外航海運事業に関連するGHG削減長期目標を「2050年までのネット・ゼロエミッション達成」とすることを決定しました。
- 3グリーンビジネスの推進
2019年4月にグリーンビジネスグループを立ち上げ、再生可能エネルギーをテーマに次世代に向けた新たな価値創造を目指し取り組んでいます。
- 関連リンク:
ESGブランド「NYK GREEN EARTH」と「Sail GREEN」
当社は、当社のグリーンビジネスによる低・脱炭素に向けた新しい価値創造の取り組みを集約し、「NYK GREEN EARTH」という新ブランドを立ち上げました。また、当社自動車輸送本部が2021年から展開している「Sail GREEN」ブランドの対象を他事業本部にも拡大します。
今後、「NYK GREEN EARTH」と「Sail GREEN」の両ブランドのもと、グリーンビジネスの取り組みや海上輸送を主とする物流事業における低環境負荷サービスの拡充を図ります。同時に、当社の低・脱炭素化に関する取り組みやサービスをより多くのステークホルダーの皆様に知って頂けるよう、両ブランドを展開していきます。
- ※「NYK GREEN EARTH」および 「Sail GREEN」は、日本郵船株式会社の商標または登録商標です。
NYK GREEN EARTH
<ブランドコンセプト>
日本郵船のグリーンビジネスを通じた、低・脱炭素に向けた新しい価値創造の取り組みを対象としたブランド。
<ブランドロゴ>

Sail GREEN
<ブランドコンセプト>
日本郵船における、海上、陸上、ターミナル等のモードを問わず、モノ運びを通じてGHG排出を低減し、お客様のサプライチェーンに還元していく取り組みを対象としたブランド。
<ブランドロゴ>

- 関連リンク:
NYKデジタルアカデミー
企業の持続的な成長において最大の推進力となるのは人材です。
当社グループを取り巻く環境は、デジタル技術をはじめ、従来のビジネスモデルを根本から見直せねばならないほどの大きな変化が起きています。社員の考え方や業務プロセスをまるで違うレベルへと進化させる研修プログラムが必要と考え、真の顧客ニーズを洞察し、主体性をもって革新・改革に取り組むビジネスリーダーを育成するため、2019年9月にNYKデジタルアカデミーを創設しました。
本アカデミー修了生は、2021年度下期までで延べ51名になりました。
育成する人材像:
- 新たな市場の開拓や新規事業の創造・社内変革を起こし、企業を牽引するビジネスリーダー
- 個々の社内改革・新規事業を実務者として推進するプロジェクトリーダー
講義時間:
1回2時間/週(受講総時間124時間/人)
講義スケジュール:
基礎学科(2カ月間)、演習(4カ月間)
卒業時に、終了証と社内資格を授与
フォローアップ:
6カ月の研修後半年間
デジタルトランスフォーメーション(DX)の外部評価
当社は、経済産業省と東京証券取引所および(独)情報処理推進機構が共催するデジタルトランスフォーメーション調査に毎年参加し、「DX銘柄」や「DX注目企業」に選ばれています。 これは、経産省が策定したデジタルガバナンス・コードに基づいて進めている、当社のDX人財教育・統合データレイクやIT/ネットワーク基盤などの整備を通じた「DX実現能力の強化」と、船員向け金融プラットフォームMarCoPayに加え、データに基づく船舶の安全で効率的な運航システムや次世代船舶の開発などの多様な「DX活動による企業価値の増大」が高く評価された結果です。
当社は、DXをESG(環境・社会・ガバナンス)課題の解決に向けた様々な取り組みを実現する能力として捉えております。 当社は、引き続き当社グループ全体のDX実現能力の着実な強化と人工知能(AI)や量子コンピューティングなどの新技術の適用を進めることにより、多様なデータの正確・適時な活用を全社に拡げて、当社事業のESG競争力の強化に加えて、お客さまへの的確なサプライチェーン情報の提供、ひいてはGHG排出の削減といった社会的な課題の解決に取り組んでまいります。
当社グループの選定状況:
- 攻めのIT経営銘柄2016・2017
- DX銘柄2021
- DX注目企業2022