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2010年商事始め式 社長あいさつ

2010年1月4日

皆さん、あけましておめでとうございます。正月休みをゆっくり過ごすことができたでしょうか。2010年の商事始めに当たり、一言ごあいさつ申し上げます。

昨年を振り返りますと、一昨年秋に発生した金融危機を引き金とする世界同時不況の影響が本格化し、世界各国がその対応に追われた1年でした。年の後半から各国の大規模な景気刺激策・金融安定化策が奏功し、欧米・日本でも回復の動きが見え始めましたが、本格的な景気回復にはまだ時間を要することでしょう。
 
昨年の世界の荷動きについては、海上コンテナがアジア~欧米航路で前年比およそ15%減、また航空貨物も同じく15%程度の大幅な落ち込みとなりました。これらの落ち込みは想定の範囲内であったとも言えますが、日本からの完成車の輸出については、前年比ほぼ半減という予想をはるかに超えた落ち込みとなってしまいました。
 
一方、中国に目を転じますと、欧米の景気回復の遅れに引きずられ、中国発のコンテナの輸出は、前年比約20%減と苦戦を強いられましたが、素早い大型内需刺激策が奏効し、世界のドライマーケットに大きな影響を及ぼす鉄鉱石輸入量は、既に昨年2月より前年平均を上回るベースで推移しており、完全に成長軌道に復帰しました。これは正直なところうれしい誤算であり、この結果ドライバルク全体のマーケットは堅調に推移しました。
 
このような荷動きに対応すべく、まず過剰が顕在化したコンテナ船、自動車船、航空機、倉庫、トラックは、とにかく過剰部分を返却あるいはスクラップし、それができないものは稼動させずに燃料代や港費など稼動・運航にかかわる固定費を徹底的に削減することが「宜候プロジェクト」の緊急課題であったことは、皆さんご承知のとおりです。と同時に、コンテナ船・自動車船の減速運航も徹底いたしました。
 
その結果、減速運航も加味した実質的な稼動運航規模は、「宜候プロジェクト」を開始した昨年1月と本年1月との比較でコンテナ船が115隻・41万TEUから約90隻・35万TEUへ、自動車船は130隻が約90隻へと大幅な削減を達成しています。また、航空機に関しても保有10機中2機の駐機を継続中です。さらに特に欧州で余剰が顕在化した倉庫とトラックについて、85万平方メートルから76万平方メートルへ、1,500台から1,100台へとそれぞれに大幅なスリム化を実施しました。
これらのスリム化努力をさらに徹底し、とにかく本年度下期の黒字復帰を是が非でも達成せねばなりません。
 
ただ、今までお話してきたような自ら対応可能なスリム化だけでは、特にコンテナ船事業、航空運送事業の経常黒字化は不可能です。極端に下落した運賃水準を適正な水準に修復することが必要であり、そのためにはお客さまのご理解が欠かせません。幸い昨年の夏場以降、運賃修復に一定の成果が挙がり始めておりますが、これは私たちの最大限の自助努力があった上でのご理解だという点を忘れてはなりません。加えて荷動きも回復しつつあることから、赤字幅は縮小傾向にありますが、その額は依然として大きく、この状態が続けば事業継続が困難な状況にあることに変わりはありません。
 
 従って、当面はさらなるスリム化とあらゆるコスト削減を徹底し、お客さまのご理解をいただく努力を継続しつつ、一方で航空運送事業、コンテナ船事業をサステナブルな事業モデルへ転換すべく、体質の改善を急がねばなりません。これが「宜候プロジェクト」2年目の最大課題の1つです。詳細については今後さらに検討してまいりますが、およその方向性は昨年10月の中期経営計画の見直し時に示しました。すなわち、海上・航空フォーワーディングという利用運送業とコンテナ船・航空機による実運送業、いわゆるノンアセット事業とアセット事業とを車の両輪とする事業モデルの構築です。
 
航空運送事業およびコンテナ船事業は、完成品やその生産・補給のための部品が主要な輸送品目ですが、大半が消費財であるため、資源・エネルギー輸送と違い、運賃水準・輸送数量を保証する長期契約が存在しません。その結果、いったん需給が逼迫(ひっぱく)すれば運賃は急上昇し、逆に緩和すると運賃が急速に下落する大変ボラティリティーの高い事業です。
 
コンテナ船事業や航空運送事業は、世界人口の増加に比例して需要が拡大する成長産業ですが、このボラティリティーの大きさを持ったまま事業拡大することがいかに危険であるかは、昨年経験したとおりです。従って、今後当分の間はコンテナ船事業、航空運送事業の拡大はノンアセット事業に軸足を置いて対応すべきだと考えます。
 
ただしコンテナ船や航空機を持たないということでは、決してありません。ハード・アセットを持たなければ、創意工夫を生かしたコスト低減による他社との差別化の源泉をなくしてしまいますし、お客さまのご希望されるサービスを、機動的に構築することもできません。例えば、最近の航空貨物荷動きの回復を受け、お客さまからチャーター便の引き合い、成約が急増していますが、これはハードがなくては対応できません。また中長期的に成長産業である以上、各オペレーターの今回の苦い経験の学習効果と、燃料代高騰や環境問題を背景とした減速航行の常態化とにより、将来、需給ギャップが適正な水準で推移する可能性も十分にあります。その時にハード・アセットを持つことで得られる期待利益、アップサイド・ポテンシャルを完全に失うつもりはありません。
 
問題は長期固定アセットの持ち過ぎです。長期固定アセットは極力絞り、足りない部分は短期で借り、常時下方柔軟性を持つことを心掛けねばなりません。コンテナ船隊はこの長期固定の部分を2015年までに隻数で半分、スペースで3分の2にスリム化する予定です。
 
それでは、いかにフォワーディング部門を拡充するかですが、既に当社グループには、日本郵船の物流事業であるNYKロジスティクスと郵船航空サービスという二つの物流会社が存在します。 
 
NYKロジスティックスは倉庫、貨物集配の内陸輸送、通関、コンソリデーションなどのコントラクト・ロジスティクス事業が主体ですが、課題である海上フォワーディング事業拡張のためには、航空貨物を同時に引き受けるなど、お客さまの利便性を高めて取扱量を増やす必要があります。 
 
他方、郵船航空サービスは航空フォワーディング事業が主体ですが、若干出遅れていた海上フォワーディング、コントラクト・ロジスティクス事業に対するお客さまからの引き合いも増えており、それに十分対応できないことが課題でした。
   
その一方で、お客様の視点に立てば、同じNYKグループの別の2つの会社がコントラクト・ロジスティクスと航空フォワーディングというそれぞれ異なるサービスと、海上フォワーディングという同一のサービスを、別個にセールスに来るというお客さま不在の営業体制であったことは間違いありません。  
 
両社を統合すれば、この状況を解消でき、航空・海上フォワーディングとコントラクト・ロジスティクスの全てにワンストップで対応できる、お客さまから求められる体制の構築が可能です。
 
先般、両社統合の協議開始を決めた背景は以上のとおりです。ただし、両社を統合すれば問題が全て解決するわけでは決してありません。必要なのは、航空、海上、コントラクト・ロジスティクスの全てに精通する物流のプロを育成し、お客さまの抱える問題対応力を高める事です。
 
これができて初めて、統合の効果が現れるわけで、むしろこれからが勝負であり、「画竜点睛」を欠いてはなりません。この一環として、昨年夏より当社のコンテナ部門、NYKロジスティックスジャパン、郵船航空サービスほか、これらの部門の関係各社の間で積極的な人材交流を開始しております。
 
一方、宜候プロジェクトのもう1つの柱である攻め、あるいは将来の攻めのための準備も昨年1年間、着実に進めてまいりました。本年1月1日現在、新造船の発注残は約190隻あります。この内、約140隻がバルクキャリアーとエネルギー関係の船であり、発注残の大半を占めます。
 
発注済みのこれらバルクキャリアーを引き当てに、中国やインドの主要鉄鋼メーカーや、ブラジルの資源会社などとの長期契約ビジネスを拡大中ですし、今後も長期契約を前提に製鉄原料やエネルギー輸送分野への投資を積極的に展開してまいります。また発注残の中には昨年成約した大水深掘削船(ドリルシップ)も含まれますが、現在さらに他のオフショア事業への参入も積極的に展開中です。
 
ただし、世界的な金融情勢混乱の中にあって、これらの成長分野に積極的に投資していくには、堅固な財務体質が不可欠です。昨年末、増資を実行したのもさらなる成長のための下準備です。
 
このように振り返ってみると、昨年1月に開始した「宜候プロジェクト」は着実に進捗していることが分かると思います。仕上げの年となる本年の課題は真の「営業力強化」を図り、それをベースに適正なリターンが期待できる事業の拡大と投資案件を発掘しながら、当社の将来のあるべきポートフォリオを考えることです。
 
すなわち「成長戦略たる次期中期経営計画の構築」です。この課題こそ今回の「宜候プロジェクト」の最重要かつ大変困難な課題ですが、NYKグループ・バリュー「誠意・創意・熱意(Integrity、Innovation、Intensity:3 I’s)」をもって達成せねばなりません。
 
さて、営業部門関連の話が続きましたが、コーポレート部門の競争力強化も宜候プロジェクトにおける重要課題であることは、昨年の創業記念式典でも述べたとおりです。皆さんの努力により、コーポレート部門でもコスト削減が順調に進捗しており、前述のとおり財務体質の強化も達成しました。
 
本年はお客さまの視点、すなわちコーポレート部門にとってのサービス提供先である営業部門の視点に立ち、コーポレート部門の組織がどうすればムダのないスリムな、かつ、使い勝手の良い組織となれるのかをさらに徹底検証していただきたいと思います。
 
そして、スリム化によって供出できる貴重な人材には営業部門を含めた他の部門で活躍してもらい、組織をさらに活性化させましょう。人材のスリム化はコーポレート部門に限ったことではなく、営業部門にもあてはまります。非効率な人材活用は、社員にとって一番不幸な状況であることを全員で認識する必要があります。
 
安全運航は、引き続き当社にとって最優先の課題ですが、この安全運航能力がエネルギー輸送部門、オフショア事業への参画・拡大に今や必要不可欠です。この能力は当社にとって他社を凌駕する得意領域であり、この力を最大限発揮し、オフショア事業などをさらに拡大していきたいと思います。
 
また、燃料費の高騰と地球温暖化防止に向けた環境問題への対応は当社にとっても死活問題ですが、技術本部の皆さんの誠意・創意・熱意により、この分野でも他社に対しハード・ソフト両面でのさらなる差別化が進んでいます。
 
以上、各部門の今年の課題を述べてまいりましたが、この課題に取り組む前提として、すべてのNYKグループ社員が、おのおのの「人間力」を高める必要があることは繰り返し申し上げてまいりました。皆さん1人1人がNYKグループ・バリュー「誠意・創意・熱意」を実践することにより、個々の人間力を高め、この難局を乗り切っていきましょう。
 
最後になりますが、NYKグループ社員の皆さんとご家族の方々の、ますますのご健康・ご多幸を祈念して、私のあいさつといたします。

 

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