第124回創業記念式典あいさつ (当社代表取締役社長 工藤泰三)
2009年10月2日
皆さん、おはようございます。124回目の創業記念日を迎えるに当たり、一言ごあいさついたします。
昨年秋に発生したLehman Brothers(リーマン・ブラザーズ)社(米国)の経営破たんを引き金とする金融危機は瞬く間に全世界に飛び火し、100年に1度といわれる世界同時不況を引き起こしましたが、その影響はいまだ色濃く世界経済を覆っています。この状況に対し世界各国は協力して金融システムの安定化に取り組むとともに、大規模な景気刺激策を実施しています。
この結果、米国では最近になってようやく住宅着工件数、自動車販売台数など底入れの兆しが見え始めつつあります。しかしながら失業率は依然として高く、GDP(国内総生産)の7割を占める個人消費の本格的な回復には相当の時間を要すると思われます。また欧州でもドイツなどでは内需刺激策により一部底入れ感はあるものの、金融システムの回復にはまだ不安な面があり経済復調の足取りが重い状況です。一方で中国は4兆元(約53兆円)の大型内需刺激策が奏功し、いち早く回復基調にありますが安定成長には低迷中の欧米向け輸出の回復が必須であり、このままでは息切れが懸念されます。日本については2009年4~6月期のGDP速報値が5四半期ぶりのプラス成長となりましたが、これは公共投資に加え中国などアジア向けの輸出が回復したことが主因であり、その実態は極めて脆弱なものであるといわざるを得ません。
当然のことながら、海上・航空貨物の荷動きはこの経済状況をそのまま反映したものとなっています。今年度第1四半期の当社の欧米向けコンテナ積み取り量は、前年同期比約3割減、日本からの完成車輸送については半減以下、航空貨物についても4割減となりました。第2四半期に入りこれらの部門は若干の回復傾向を示していますが、力強いというには程遠い状況にあります。他方、中国は昨年月平均3,700万トンの鉄鋼石を輸入しましたが、リーマンショック発生後今年1月まではこの平均を下回ったものの、2月以降は5,000万トン前後という過去最高水準の輸入量を記録し速やかに回復傾向を示しました。この結果、当社のドライバルク貨物輸送も第1四半期後半から持ち直してきています。一方、先進国の需要動向に左右される要素が大きい石油関係の荷動きについては、依然として低迷が続いています。
このような荷動きを反映し、09年度第1四半期の当社連結決算は定期船部門が約190億円の赤字、また不定期専用船部門も15億円の赤字に転落し、航空運送部門の65億円の赤字などを合わせ270億円余りの巨額な経常赤字となりました。第2四半期はドライバルク部門の回復傾向に加え、荷動きおよび運賃に反転の兆しが見えたことで定期船・航空運送事業の悪化にようやく歯止めがかかってきた結果、若干の良化が見込まれるものの依然として約170億円もの経常赤字が予想されています。
私たちは、この厳しい状態から一刻も早く脱却せねばなりません。私は本日の創業記念式典を今年度下期の経常黒字復帰への決起集会と位置付けています。幸い、荷動きも徐々に回復しつつあります。ただその力強さは十分とはいえず、黒字復帰のためには私が社長に就任した際に皆さんにお願いした「宜候プロジェクト」の完遂しかありません。今回の危機がフォーカスしてくれた当社グループの抱える課題を早急に解決・改善する一方、優れている点をさらに伸ばすことです。
社長就任あいさつで申し上げた各部門のキーワードを繰り返すと、まず定期船・港湾・物流・航空運送部門は「過剰なアセットの徹底排除と現場力の強化」ならびに「幅広い業務知識の習得による、お客さまの抱える問題を解決する力」。コーポレート部門は「営業部門に対するコスト競争力のあるサービスの提供」。バルク・エネルギー輸送部門は「お客さま重視の安定した長期契約の維持・拡大」。自動車船部門は「下方柔軟性を常に持つ船隊整備と不断の改善提案による、お客さまとの相互信頼関係の堅持」。技術本部は「安全環境問題において業界をリードするフロントランナーとなること」そして「安全・環境問題をビジネスチャンスに変えること」でした。
これらのキーワードの中でも、特に定期船・港湾・物流・航空運送部門の「アセットのムダの徹底排除」とコーポレート部門の「コスト競争力の強化」が緊急課題です。返却・スクラップが可能な船や倉庫については既に対応済みですが、それができないものについては航空機も含めできる限り稼働させず、燃料代などの稼働・運航にかかわる固定費削減を徹底してください。定期船部門ではこのほかにもコスト削減活動をあらゆる分野で展開し、当初目標の500億円をはるかに超えて実現できそうですが、その手綱を緩めることなく知恵を絞ってさらなる上積みへの挑戦をお願いします。一方、日本貨物航空(株)(NCA)は独自に徹底したコスト削減に取り組んでいますが、荷動きの回復のテンポが遅いこともあり、ハードの効率性を一層高めるためには規模の経済の追求が不可欠との判断から、10年4月の開始をめどに(株)日本航空の貨物事業部門と事業統合する検討を開始しました。またコーポレート部門では船費や一般管理費の削減を中心に「宜候プロジェクト」を推進していますが、さらなる効率性の追求と、ムダを排除するために既存の業務プロセスを変更することも恐れない大胆かつ迅速なアクションを心掛けてください。
以上述べましたとおり荷動きの急回復が望めない状況下、早期に経常黒字に復帰するためにはまずはコスト削減活動にまい進せねばなりません。
次に緊急対応と同様に、あるいはそれ以上に重要な「宜候プロジェクト」の課題は今回の危機収束後を見据えた成長戦略の構築です。中国・インドにとってさらなる成長には、石油・鉄鉱石など資源関連の輸入拡大が不可欠です。世界人口の増加とともに、海上コンテナ・航空貨物・完成車の荷動きも必ず拡大します。また、自動車に関してはエコカーという新規需要も追い風となるでしょう。あらためて強調しますが、物流は、少なくとも量に関して言えば間違いなく成長産業です。
問題は船舶・航空機・トラック・倉庫というハードそのものでは他社との差別化が容易でないことであり、それをいかに克服し利益を生み出せる仕掛けを創出するかという点です。この課題に対処するキーワードは、私が社長に就任した折にも申し上げましたが、やはり「人間力」すなわちNYKグループ・バリュー「誠意・創意・熱意(Integrity、Innovation、Intensity:3 I’s)」をベースとした現場力ではないでしょうか。結局、人間力・現場力を発揮できる分野の発掘とその体制づくりが成長戦略ということになります。
いくつか例を挙げます。今後、石油開発は深海油田が中心となり、洋上での掘削作業のみならず生産から貯蔵・積み出しまでを一貫して行う船の需要が拡大するといわれています。これらの船の乗組員には船を洋上で定点に泊める技術や、原油タンカーやLNG船などで求められる大変厳しい安全基準に対応できる作業能力が不可欠です。私たちには地球深部探査船「ちきゅう」を運航してきた実績があり、その経験を生かしてブラジルの石油会社向け海洋掘削船の用船を成約することができました。
また今後、二酸化炭素排出量の削減や燃料油価格高騰への対応は当社グループの事業継続上、死活問題になってきますが、私たちは既に太陽光発電システムを搭載した自動車専用船や燃費効率を70%向上する未来のコンセプトシップ「NYK スーパーエコシップ 2030」などの開発に着手しています。これも、当社グループが持つ「人間力」に裏付けられた技術力のたまものです。この技術力を生かし、環境問題を大きなビジネスチャンスととらえ積極的に取り組んでいくべきだと考えます。
さらにお客さまからは、多様化する物流ニーズに対応する改善提案型ビジネスモデルが求められています。それに応えるためには海上輸送だけでなく、航空輸送・陸上輸送・倉庫・通関などの事業体とそれらの業務知識が欠かせません。当社グループはNYKロジスティックス各社、NCA、郵船航空サービス(株)などの企業を傘下に有する、世界でもまれな企業グループです。これらグループ会社の事業を有機的に融合すれば、ビジネスチャンスはいくらでも拡大するはずです。しかしながらビジネスづくりの決め手は、やはり海・陸・空にまたがる幅広い業務知識を持った人材であり、その育成のスピードアップが必要です。この観点から、既に7月よりグループ会社間の人材交流を活性化したことは皆さんもご承知のとおりです。このように私たちの持つ「人間力」を生かせる分野を数多く見つけ出し、それに対応できる組織・体制を構築することが「宜候プロジェクト」後半の大きな課題です。
「宜候プロジェクト」の2つの課題であるムダの徹底排除によるコスト削減と成長戦略の構築を完遂すれば、以前より一段と強いNYKグループに成長できる道が開けてきます。ただしそのベースには、安全運航の確保と環境活動を最優先としたCSR(企業の社会的責任)活動への取り組みがあることは言うまでもありません。
皆さん、この厳しい状況を乗り越え未来を切り開くため、一緒に頑張っていきましょう。
最後に、皆さんとご家族のますますのご健康、ご多幸を祈念して私のあいさつといたします。
掲載されている情報は、発表日現在のものです。
その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。
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