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平成15年度商事始め式 社長挨拶

2003年1月6日

皆さん、明けましておめでとうございます。平成15年の年頭に当たり、私の思うところをお話しし、NYKグループの新たなステージに向けて皆さんと気持を一つにして、商事始めとしたいと思います。

今年の干支は羊です。漢字の中で「羊」という字は多くの場合、価値のあるものを意味する言葉に含まれています。例えば、美しいという字、善悪の善、正義の義などです。これはその昔、ユーラシアでは羊が最大の財産であり、価値であったからだそうです。また、明治以降の羊年について見てみると、歴史的な大事件があった年はあまり無く、例えば1871年は、かの津田塾の創始者であり、当時何と6才だった津田梅子をはじめとする5少女による女性の米国留学第1号の年、1895年には富士山頂で初の気象観測、1919年には小林一三が宝塚歌劇場を開設するなど、むしろ時代を先取りするようなセンスのある事や楽しい出来事が多くあったようです。私たちのこの1年も、そのような平穏で、かつ時代を先取りするような有意義な1年でありたいものですけれども、昨年来の緊張が続くイラク・中東情勢をはじめとして、世界中で多発するテロ、北朝鮮問題、そして地震の脅威と、残念ながら逆に大波乱含みの1年となりそうです。有ってほしくないことですが、イラクについては、早ければ1月末ないし2月初めにも米軍による攻撃が始まるものと万全の備えをしておく必要があります。

経済面においてもイラク情勢などの波乱要素がからんで、世界的に本格的景気回復の先行きは見えておりません。唯一の例外は中国です。日本政府は構造改革とデフレ対策のはざまで苦闘中であり、不良債権処理や道路公団民営化については抵抗勢力の反対圧力で思うに任せず、残念ながら日本経済はこう着状態が続いています。日本は一体どこへ行くのか、このままでは甚だ心もとない気がします。

翻って当社の業績について見れば、2002年度上半期は皆さんの努力の結集である「プロジェクト“C” Phase I」のおかげで、連結ベースで何とか前年同期並みの業績を挙げることができました。ただし、下半期は全社挙げての奮闘にもかかわらず、コンテナ・不専部門とも低調が予測されており、さらにもろもろの不透明要素もあって、連結経常利益で前年同期比50億円ダウンの予算となっています。そんな中で、タンカーおよびドライバルク部門では昨年10月以降マーケットが急速に回復し、一部のグループ会社の業績好調にも助けられて、情勢が平穏に推移すれば収益向上につながる可能性があります。それでも、「NYK21−新世紀宣言」でコミットした2002年度連結経常利益600億円にはなかなか届きそうにありませんが、社員の皆さんは少しでも目標に近づけるべく、ラストスパートをお願いします。そのためには「プロジェクト“C” Phase I」の常態化、すなわちコスト競争力向上運動の継続が必要です。特に依然として赤字体質を脱していない定航部門においては、格段の努力をお願いします。

新たな2003年度に関していえば、何と言っても定航の黒字化が喫緊の課題です。業績浮上のための環境は決して悪くありません。十分な戦術、すなわちPLANはすでに策定済みです。考える季節は終わりました。熟慮のあとは断行あるのみ。これから4月にかけては、まさにDO、すなわち行動の時です。2002年度の赤字帳消しをミニマム・ターゲットに、あらゆる努力を尽くしましょう。グループ全体としては、「NYK21」での約束、すなわち連結経常利益600億円を1年遅れで何としても達成したいものです。

次に当社グループの中長期経営ビジョンについてお話ししたいと思います。現在進行中の「NYK21−新世紀宣言」は、2002年度をもって終わります。従ってこれをフォローする次の中長期戦略の策定が必要です。思えば、「NYK21」は、プラザ合意後の極めて不透明な経済環境下、当社の経営指針として1986年に第一次が策定されたもので、今回の新たな「NYK21」は数えて第5次の「NYK21」となります。昨年の商事始め式での私のあいさつ、および創立記念日のメッセージでも触れた通り、この前段作業としての各ビジネス・ユニットによる、「プロジェクト“C” Phase II」での作業は、昨年中に完了しています。また、この取りまとめのためのタスクフォースは昨年10月に発足済みで、現業部門と協力しながら精力的に作業中であります。

ところで、当社は今から3年後の2005年に創立120周年を迎えます。今回の作業は120周年、すなわち3年後の2005年に向けて私たちは何を目指すのか、を考えていくことになります。そこで、今作業しているこの第5次「NYK21」のニックネームを、“FORWARD 120”としてはどうかと考えています。120周年に至る約3年間、激しい国際競争に打ち克つためには、私たち自身も、私たちグループのビジネスモデルも大転換を遂げねばなりません。この3年間こそ、新たなNYKグループのアイデンティティーを確立する、重要な道のりとなるのです。それゆえ、大転換・大変革のための新たな戦略策定と行程作りが、今次「NYK21」の最大の眼目であることは申すまでもありません。この機会を借りて、皆さんのこれからの戦略策定に当たって、私の考えるところを2、3コメントしておきたいと思います。

先にも申し上げた通り、小泉首相の構造改革は、志とは裏腹に、なかなか思うに任せる展開とならず、今後の行方が心配されます。ただ、改革の主要命題の一つである行政改革、これは何としても成功してほしいと願っています。何となれば、その思想は当社の構造改革に大いに通じるものでもあるからです。

小泉内閣の行政改革の3本柱は、(1)規制緩和、(2)地方分権、(3)特殊法人などの整理統合 ですが、この3つはいずれも21世紀を生き抜く日本にとって解決すべき基本的課題であります。そして同時に当社の変革、Change/Challenge/Create−3C、の柱でもあるのです。まず規制緩和について言えば、タグ・パイロット問題を含む港湾諸制度における規制、内航運営をめぐる諸規制などの外なる規制の緩和が業務上重要であることは当然ですが、当社の中で解き放たれざる内なる規制も多々あり、内部改革のためには、この「内なる規制」を打破していくことが何にも増して必要であります。

例えばこれまでの終身雇用制度一辺倒をやめて,多様な就労形態の導入を図ろうとする、あるいはまたそれに伴って年功給与一辺倒から業績評価給与加重へ転換しようとすると、これに対する抵抗感ないし規制的圧力が、マネジメントの内からも社員の内からも色濃く漂ってくる。また、女性の戦力化ということについて言えば、この言葉は進んだ企業ではすでに死語になっているくらい、世間では当たり前のことであるのに、当社においてはまだまだ固いカベ=規制があります。制度設定はできているのに、意識的にか、無意識的にか、道路族以上に規制堅持を専守する力学によって、実体化が大きく出遅れています。このほかにも当社にはまだまだ「内なる規制」が有るのではないでしょうか。年初に公表された日本経団連の奥田ドクトリンとも言うべき「新ビジョン」では、今後20年を待たず、「企業の論理が個人を支配する時代は終わり、企業と個人が共生する時代、企業中心から自立した個人中心の社会が来る。」と、明快に言い切っています。私たちは、時代を先取りして「内なる規制」からの開放を急がねばなりません。

次に地方分権です。小泉さんが言う地方分権を当社に当てはめれば、ビジネスのグローバル展開のことにほかなりません。定航は、国際競争にいち早くさらされ、世界5極体制の確立という一応の分権化を果たしました。ところがほかの2つは、物流、不専の順で立ち遅れています。物流はまだまだ東京が重い。大胆に急ピッチで各地域の現場への分権、重心移動を行いましょう。また、不専の立ち遅れがとりわけ目立ちます。日本のチーズが日々やせ細っていくことから目を背け、自分の責任期限だけ何とかやり過ごそうという精神は、問題解決を先送りしようとする行政官の安易な姿勢に通じます。不専も大きくカジを切りましょう。当社における現業部門の「地方分権」は、本年の大きな課題と認識しています。私としても組織・人事面から強くてこ入れを図っていきます。

また、グローバル人事制度の面でも、当社は改革すべき点が多々あります。前述の女性社員に対する偏見と相通じる内なる規制が、この面での地方分権を遅らせています。ただし、先日初めて海外からナショナルスタッフ多数の参加を得て開催した、人事グループ主催のイベント「NYK Week」は、この殻を破るものとして評価できる、大変良い試みでした。関係者の皆さんの労をねぎらい、その成功に心から拍手を送りたいと思います。ぜひ毎年続けてください。

3番目は特殊法人などの整理合理化です。これは当社にあっては、連結経営時代に対応する組織の合理化・効率化を意味します。これについては、本社機構の見直し・効率化、グループ会社のスリム化・効率化、さらには連結会計システムの抜本改革などなどやるべき事が多々あります。

これまでも、グループトータルの強化策として、分社・統合等の手を打ってきたのはご承知の通りですが、まだ道半ば、これからが仕上げの時期です。そのためには、個々のグループ企業において、人材の強化・適材の人員配置がMUSTになります。

特殊法人に共通する最悪の問題点が各法人に巣食う監督官庁OBの目に余る天下りの実態にあることは、ご承知の通りです。当社の場合も、グループ会社に対し、当事者能力を問うことなしに、天下りのための天下りを行うことは断然排除し、極力プロパーの人材を生かす努力を怠ってはなりません。そのためには新たなOB処遇策も必要となりましょうが、これまた、時代の要請に沿った改革をちゅうちょすべきではないと思います。

さて、行政改革3本柱から少し話がそれますが、筑波大学名誉教授で著名な科学者である村上和雄さんは“Something Great”「生命(いのち)の暗号」という本の中で、平均一人60兆個あるといわれる人間の遺伝子は、ほとんどは眠ったまま、すなわちOFF状態で、実際に働いている、つまりON状態なのは、わずか5〜10%程度だと述べておられます。村上さんは、日常生活をはつらつと前向きに生きる、すなわち「イキイキ、ワクワク」する生き方、プラス志向の生き方こそが、人の遺伝子をOFFからONにしてくれる、そして人の能力を大きく伸ばしてくれるということを強調されています。どうか皆さん、改革を行うに当たっては、そこに夢を求めて、自分の中に眠っている遺伝子をONにして、思いもかけない力を発揮してください。皆さんのそれぞれの遺伝子をあと5%ONにできれば、NYKグループは3年後にはすばらしい企業集団に成長すること請け合いです。もっとも、私が「変われ、変われ」と言うからといって、「変わったフリ」をして攻撃をかわそうなどと決して考えないでください。単なる徒労だし、第一すぐにバレます。

さて、“FORWARD 120”を前にして、私はなぜか第35代アメリカ大統領John F. Kennedyの就任演説を思い起こします。このスピーチを借りて、皆さんに次の言葉を贈りたいと思います。「会社があなたに何ができるかを問い求めるな。あなたが会社に何ができるかを問うてほしい。」“Ask not what your company can do for you,ask what you can do for your company.”どうかこの言葉をかみしめてください。

以上の私からのメッセージも考慮しながら、新しい「NYK21“FORWARD 120”」を皆さんの手でダイナミックに練り上げてください。新「NYK21」のリリースは4月1日を予定しています。

さて、昨年10月の創業記念式典で申し上げた通り、私たちのグループの将来の夢を載せて、「ちきゅう」プロジェクトがいよいよ今年からスタートします。本プロジェクトの推進本部長である海洋科学技術センターの平朝彦氏、三菱重工業の西岡社長の参加を得てセミナーを行い、続いて「地球交響曲 ガイアシンフォニー」の上映会を、「地球生命体〜夢への挑戦〜」と銘打って、来る2月6日に開催します。NYK社内はもとより、グループ会社からもぜひ多数参加してください。

どうやら今年もまた油断も隙も無い年になりそうです。皆さん、安全・環境・ガバナンスにかかわる危機管理に余念無きようお願いします。一方いつも申し上げていることですが、NYKグループの守りと攻めに当たって欠くべからざるもの、それは人材、すなわち皆さん一人ひとりの力を措いてほかにありません。どうか、皆さんと皆さんのご家族の健康管理には万全を期してください。そのために会社としてもできる限りのことをします。

さあ、世界中のNYKファミリーの皆さん、120周年はあとわずか3年後です。NYKグループの新しい幕開け、120周年に向けて私たちの意識と行動を真に変革しつつ、手に手を取って、前へ前へ、そしてもっと前へと進んで行きましょう。

この“未(ひつじ)年”が皆さんにとって価値ある年でありますよう、心からお祈りして、私のあいさつを終わります。

以上

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