2002年 社長年頭挨拶
2002年1月4日
【1. 序】新年明けましておめでとうございます。昨年9月のテロ事件以来、世界の情勢は不安定かつ不透明な状態が続いていますが、皆さんは夫々に思いと希望を新たにして新年を迎えられたことと思います。私も、一刻も早く世界に平和と安定が齎され、又、わが社グループが引続き発展して行けるよう、今年の干支に因んで「馬力」で挑戦して行くべく意欲を新にし、2002年の年頭の所信を述べたいと思います。
【2. 昨年の回顧】さて、昨年は激動の年であったと同時に、大きな転換の年でもありました。世界経済は、昨年前半から特にそれまで10年以上にわたり好調を維持してきたアメリカ、欧州も下降局面に入り、そこに9月11日の米国同時多発テロが起こりました。このショックによる視界ゼロの中で、世界全地域同時不況に突入し、且つそれが長期化の様相を示し始めました。
昨年は巳年でしたが、過去一世紀程を振り返ってみると、「巳年」には、政治経済的に世界秩序を揺るがし、或いはその後の歴史の節目となる大きな出来事が例外無く起こっています。そして去年も将に「世界を変えた」一年でした。
| 1905年 | 第一次ロシア革命 (血の日曜日)。 | |
| 1917年 | ロシア革命成就 (2月・11月革命)。 | |
| 1929年 | NY株式大暴落による世界恐慌始まる。 | |
| 1941年 | 12月の真珠湾攻撃により太平洋戦争勃発。 | |
| 1953年 | スターリンの死去。「ソ連式共産主義」変容の始まり。 | |
| 1965年 | 米国の北爆開始。ベトナム戦争激化。 | |
| 1977年 | 四人組追放、 |
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| 1989年 | ベルリンの壁崩壊。 | |
| 2001年 | 9月11日米国同時多発テロ。 |
今回のテロ事件の、ハイジャックした航空機による無差別殺人という行為そのものは、史上希に見る残虐非道なもので、断固極刑に処すべきものであります。しかし一方、云う迄もなく、この9・11テロは単純に「ならず者の仕業」として片付けられる問題ではありません。
マルクス理論そしてシュンペーター理論の実験が不調に終わり、「貧困」の克服という命題への答えが見出せない中で、未だに貧しい地域に分散する(イスラム教徒)モスリムの人口は現在12億人、世界人口の5人に一人、そしてこれが2020年には3人に一人になると言われています。
前回の巳年(1989)に起こったベルリンの壁の崩壊は冷戦構造の終焉を意味する象徴的な出来事で、同時にグローバル化の出発点でもありましたが、それから12年後に起こった9・11テロは、「貧困」を放置して世界を席巻するグローバリズムの負の部分への、アンチテーゼとして捉える識者も多いようです。いずれにせよ本件は、複雑且つ深刻な問題を内包しており、21世紀初頭に我々の前に投げ出された文明・宗教・人口・貧困の諸問題を含む非常に重い課題であると考えます。
従って、今年は、世界が新しいフェーズに入った最初の年であると認識する必要があります。
また、わが国がこよなく希求するものは、世界の恒久平和であり、人々が地政・民族・宗教の違いを乗り越えて多元的価値を許容・共有してゆくことが肝要であること申すまでもなく、わが社も今後ともこの基本精神に則って課せられた責務を果たして行きたいと思います。
【3. 昨今の経済情勢】さて、世界の経済情勢は、申し上げました通り米欧経済の下降局面に9月11日の米国同時テロが、とどめを刺す格好となり、極めて不透明且つ深刻な状況に立ち至っています。
因みに、世界銀行は、2001年度の世界全体のGDP伸び率を2.2%から1.3%に下方修正しました。これは1982年の1.1%以来の低成長であります。
一方、日本では、GDPが二・四半期連続のマイナス成長となり、又、昨年11月の完全失業率は5.5%に達するというように、小泉政権の構造改革諸施策にも拘わらず、依然不況からの脱出シナリオは定かならず、この侭では日本経済は戦後初めて2年連続のマイナス成長となる可能性が現実味を帯びてきています。
斯くの如く、今や我々は世界同時不況とも云うべき事態に直面しており、わが社の収支状況も深刻な影響を諸に受けていますが、この辺りは皆さん日常業務を通じて重々理解されている筈ですが、対策は後で述べます。
【4. NYKグループ本年の課題。-春に備え、雌伏して実を養うべし-】先ず、特に皆さんの注意を喚起しておきたいのは、今回のテロ以降の一連の状況の展開次第で、わが社の船も、米国を支援する国の商船又は客船としてテロの対象とならぬとも限らないということです。一層の厳しい安全運航と危機管理を心掛けてください!
さて、昨年の上期中間決算に於ける経常利益は、好調だった一昨年と遜色のない立派な業績を達成することが出来ました。これはグループ社員の皆さんの努力の賜物であり、ここに改めて敬意を表したいと思います。
しかし、一転今年は極めて厳しい時を迎えています。昨年の年頭、そして創立記念式典のメッセージで、私は皆さんに「冬の到来」を警告しましたが、正直なところ、これほど厳しい冬になるとは予想もしませんでした。しかも、9月11日以来全くの視界不良、今後の展開/見通しが読めない状況に立ち至ってしまいました。従って、ミニマム一年、長ければ二年、シベリアのような冬が続くと見て、今後の対策を講ずる必要があります。
但し、冬来たりなば春遠からじ。この冬を来るべき春への充電期間と捉え、雌伏して実を養うことに専ら力を尽くそうではありませんか。具体的には次の三点を実行しましょう。
- 現場の総点検と再構築
申すまでもありませんが、近年のNYKグループの業容拡大は目覚ましいものがあります。この20年の主要な指数を見ると以下の通りです。
これは我々の大きな誇りとすべき推移です。しかし一方、最近のわが社のオペレーション状況を見るに、業容の急拡大と、それに伴う組織の分散化が急速に進む中で、末梢神経に到るまで敏感な血液循環が確保されているか、即ち全てのビジネスの原点である現場の管理が疎かになっていないかについて、疑問なしとしません。船、ターミナル、物流基地、財務関係、管理部門など、そしてグループ各社も含めて、あらゆるセクションで現場総点検を実施し、強い、そして瑞々しい第一線を再構築する格好のタイミングです。足許を確りと固め直して、更なる飛躍に備える年にしましょう。
- 収益力の増強
2002年度はNYK21の数値目標達成最終年度です。ご承知の通り我々は、連結売上高1兆2000億円、経常利益600億円、投下資本事業利益率5%の達成目標を、「NYK21新世紀宣言」の中でコミットしています。しかし、米欧経済、消費の落込みとテロの悪影響をまともに受けたコンテナビジネスは既に2001年度下期に至って急激な悪化に見舞われており、上期の黒字を食いつぶして、2001年度通期では大幅赤字が避けられない見通しです。従ってこのままでは2002年度の目標達成は覚束ないだけでなく、世界同時不況が深刻化すれば全事業の破壊的同時不調という最悪事態さえ有り得ます。こうした最悪の事態を避け、数値目標達成に全力を挙げる為には、ここを正念場と認識し、更なる筋肉体質への転換により損益分岐点を徹底的に引き下げて、収益力の増強に努めるしかありません。
幸い私達は、冬への備えとして「プロジェクトC」PHASE-1に着手し、実行の過程にあります。予想を遥かに超える厳しい冬が来たからには、より厳しくこのプロジェクトを掘り下げ、そして前倒しに成果を出すしかありません。そこで、2002年度NYK単体でミニマム150億円のオブリゲーションをさらに50億円嵩上げしてミニマム200億円に修正し(2001年度と合せると250億円)、その為の深堀・前倒実行計画を立てて直ちにアクションを取ってください。又、今や4000億円の売上を誇るグループ各社ですが、今期の見通しでは全体で経常利益が確保出来るかどうか、という極めて低調な予測となっています。そこで、この際グループ各社にもプロジェクトC、PHASE-1に参加して戴いて、2002年度の経常利益底上げ計画を至急立案/実施すべく各社にお願いしていく所存です。
今一度プロジェクトCの原点−−CHANGE CHALLENGE CREATE−−を噛締めて思いを新たにタフなタスクに挑んで欲しいと思います。
尚、上記嵩上げ計画に当っては、業績が急速に落ち込んでいるコンテナ部門の深堀はMUSTとなりますが、その他では、自動車船を含む不定期専用船部門の更なる掘り下げ、客船、グループ経営の一層の効率化、管理部門等に期待するところ大であります。
- 中長期課題への挑戦
前述の通り、ここ一、二年が正念場と見て収益力のいちだんの強化に全力を挙げることが肝要であることは云う迄もありません。しかし一方で、常に中長期の視点を忘れてはなりません。そして中長期課題への挑戦として、プロジェクトC、PHASE-2がスタートしたことは、皆さんもご承知の通りですが、昨年の秋口に各ビジネス・ユニットのグループ長以下が投げ掛けた「夢」を役員全員が参加した先般の役員合宿で「ビジョン」に落としかけた段階にあります。よって本年は、中長期課題挑戦への初年度、しっかりしたビジョン作りに集中し、来るべき春を望む「仕込みの時期」と位置づけたいと思います。
但し、定航/コンテナと両輪たるべき物流/ロジスティックビジネスと、その成果物としての複合ソリューションビジネスについては、ビジョン作りはNYK21で終わっており、昨年に引き続き本年は一段と精力的な活動を展開し、大きな成果を挙げてください。又、遂にWTO加盟が成った中国マーケットに対する戦略作りと働き掛けについても、本年の具体的最重要課題であることは云う迄もありません。
ところで、昨年後半は小野相談役のご逝去、社員や若手OBのご逝去が数名に及び、わが社とわが社グループにとって大変に悲しい年になってしまいました。再々申しているように、人材こそわが社の最も大切な資産であり、働き盛りの社員を失うことは痛恨の極みであります。
会社としても、社員の健康管理維持に一層注意を払って行きますが、皆さんもこれから困難な年に挑戦するに当たって、各自の健康には十分留意して下さるよう切にお願いします。
最後になりましたが、皆さんとご家族の益々のご健康とご多幸をお祈り致しまして私の挨拶と致します。
以上
その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。

