2001年 社長年頭挨拶
2001年1月4日
当社社長 草刈隆郎は、平成13年1月4日の商事始め式にて、以下の通り挨拶を行った。
新世紀、そして2001年明けましておめでとうございます。
皆さんは、いつもの新年に増して希望に満ちたお正月を過ごされ、また新世紀に向けての決意を新たにされたことでしょう。何はともあれ、二十一世紀の世界の平和と繁栄、そしてグループ全船の安全運航を皆さんと一緒に祈りつつ、2001年の年頭に当たり私の所信を述べ、新しい一年に向けて出発したいと思います。
【I】100年の回顧
今年は新しい世紀を迎えた訳ですから、いつもの新年とは一寸趣きを変えて、この機会にタイムスリップして百年前、即ち西暦1900年前後の世界は、日本は、そして日本郵船はどんな様子だったのかを振り返り、私なりの見方で今日と比較して見たいと思います。
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世界は今やまさにグローバル化の時代であります。このグローバル化の流れは、1989年11月のベルリンの壁の崩壊、それに続く米ソ首脳会談での東西冷戦の終結宣言とともに始まったことは周知の通りです。しかし目を100年前に転じますと、そこでも19世紀終盤から1920年代にかけて世界は一度グローバル化を経験しています。当時の超大国であったイギリスは旧植民地をはじめとして世界各地の市場に巨額の投資を行ない、また列強の世界分割と共に資本取引のグローバル化が進んでいました。また、当時は交戦国を除いて、外国へ行くのにパスポート携帯の必要が無く、国境を越えての人の行き来も今考えるよりはかなり容易だったようです。
しかし、この最初のグローバルな金融と資本主義の流れは、第一次世界大戦(1914年)、ロシア革命(1917年)、世界大恐慌(1929年)という三つの打撃により、分断されてしまいました。この状態は第二次世界大戦を経て、冷戦の終結まで続き、75年の長いタイムアウトの後に、今日のグローバル化を再び迎えることになります。100年前の主役は英国でしたが、今回の主役は米国です。前回のグローバル化の原動力は汽船、鉄道、自動車といった輸送手段の発達による大幅な輸送コストの低下であったとすれば、今回のグローバル化はマイクロチップ、光ファイバー、インターネット等による、通信コストの格段の低下によりもたらされたものと云えるでしょう。前回と今回とではこの様に現象面での違いこそありますが、「世界構造のグローバル化」という意味では、奇しくも百年前と今とは軌を一にしています。「歴史は繰り返す」ということでしょうか。
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次に日本ですが、明治維新(1867年)で世界の舞台に再登場してからの50年は、まさにグローバル化の渦に巻込まれながら国力の増強に挙国一致して立上がり、日清戦争(1894年)、日露戦争(1904年)を経て列強入りを果たした目覚ましい勃興期でした。一方で今から丁度 100年前、フランスの威信を誇示すべく「無線電信とX線とエレベーター」に代表されるパリ万国博覧会が盛大に催されましたが、これを訪れた吾が海軍軍人秋山真之や留学生夏目漱石が、先進ヨーロッパと日本の余りの落差を目の当たりにして、夫々に思い悩んだ時代でもありました。とはいえ、明治の先人達の偉大さは今更述べるまでも無く、とりわけ「情報」の価値を鋭敏に見通していた先見性には大いに啓発されます。即ち、19世紀後半にデンマーク通信公社によって、欧米からウラジオストック/上海まで東西に敷設された海底ケーブルに着目した当時外務次官であり、後に「逓信の父」と呼ばれた寺島宗則が、これを維新間も無い1870年代に日本まで延引しています。そして日露戦争後のポーツマス条約交渉では、日本政府と、現地で交渉に当たっていた小村寿太郎との間を6 時間でつなぐ通信インフラとしてこれをフルに活用し、交渉の首尾に大いに功有ったと云われています。
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最後にわが社であります。皆さんもよくご存知の通り、わが日本郵船は、郵便汽船三菱会社と共同運輸会社の苛烈な競争に終止符を打つ形で、1885年10月1日に誕生しました。この社旗二引の旗は両社の融合を念じて制定されたものです。そして19世紀最後の10年は、1890年マニラ航路、93年ボンベイ航路、95年欧州航路、96年にはシアトル航路と豪州航路と、外航定期航路を陸続と立ち上げ、20世紀初頭にかけて、「世界に冠たる日本郵船」の基礎を打ち立てた時代でありました。特に、1893年広島丸を第一船としてスタートしたボンベイ航路は、P&O等の同盟船社の激しい抵抗の中、日本紡績連合会の支持を得て、現在もインドのわが社パートナーであるタタ商会と共同で盟外船として航路開設に踏み切ったもので、日本郵船最初の本格的遠洋定期航路として記念すべき金字塔であります。一方、1877年の西南の役では当時の三菱会社が、そして日本郵船創立後の日清戦争、日露戦争と三度に亘り多数の保有船の戦時徴用を受けましたが、何れも戦後の政府の手厚い補償と助成により、都度船隊は寧ろ拡大しました。この間の保有/運航船腹量を見ると、1885年の創業時には69隻/7万3千総トンから、第一次世界大戦前の1914年には107隻、38万4千総トンに飛躍し、世界有数の船会社へと成長を遂げたのであります。
それに引き較べて、第二次世界大戦では全面的に戦時徴用を受け、その結果全ての基幹船を失ってしまいましたが敗戦により何の補償も叶わず、戦後ゼロからのスタートを余儀なくされるという悲惨な状況に立ち至りました。にも拘わらず郵船グループトータルで現在約800隻、4000万トンの船隊にまで再生させることが出来たのは、その間の海陸先輩の方々の再生への熱い情念と不断の努力の結果であり、この偉業は我々の尊い財産であり大いなる誇りであります。又、先の日中戦争と第二次世界大戦では、海陸合せて5300名余のわが社社員の尊い命が犠牲となっています。21世紀を迎えるに当たり、改めて犠牲者の方々のご冥福を心からお祈り致します。
そして、21世紀のNYKグループは「船」から「グローバル・ロジスティック&メガキャリアー」ヘ、再び飛躍の時代を迎えようとしています。新世紀初頭に際して先達の輝かしい業績と尊い犠牲を顧みるにつけ、まさに社歌の一節「越えて百年、さらに百年」の意味をかみしめて、わが社及びグループの弥栄への一段の努力を誓いたいと思います。
【II】経済・一般情勢
ここで一寸目を転じて、新世紀のスタートに当たる、2001年の世界及び日本の経済がどのような展開となるのかについて、簡単に見てみたいと思います。
先ず、世界経済の全体を見渡してみますと、ここ数年世界経済の牽引車であったアメリカの景気に減速傾向が明らかになったことに加え、昨年後半より顕著になった原油価格の高騰、高止まりが景気に影を差しています。又、今のところ出口の見えない中東情勢、再び金融危機が囁かれるアジア経済の足踏み状態、そして不振を続ける日本経済も、今世紀初頭の不透明感を強める材料です。世界銀行が最近出した経済見通しでは、昨年4.1%であった世界全体の実質成長率が、今年は今申し上げたような理由から3.4%に減速すると予想されています。
この中で唯一注目すべきは、中国であります。WTOへの加盟交渉は間もなく結着の予定で、他の地域、各国の経済の減速が予想される中、今年も7%台の高成長が見込まれ、経済・貿易活動が大きく拡大するものと期待されます。
最後に日本ですが、皆さんご承知の通り、昨年は微速ながらプラス成長に転じた日本経済は、2001年度も2%弱の成長が見込まれると云われています。しかしながら、一方でアメリカをはじめとする不透明な国際環境があり、他方国内的には、未だ本格的な景気回復の道筋が見えない中で、巨額の公的債務解消に向けての財政改革という重い課題を負っており、難しい経済運営を迫られる一年になります。
【III】わが社ビジネスへの影響
以上申し上げました通り、世界と日本の経済は決して楽観できるものではありません。云うまでもなく世界情勢は我々のビジネスに直接間接に投影されます。十分な警戒を怠らず、変化する情勢から目を離さず、常に先を読んだ対策を準備しておくことが必要です。皆さんの努力のお蔭でわが社グループの業績は今期迄は、何とか行けそうです。グループ社員の皆さんに大いに感謝したいと思います。問題は来期以降です。再度云います。「冬に備えよ」と。冬はひたひたと迫っています。まさに「KITCUT10」が力を発揮する時です。各部門共コスト低減に一段と力を注ぐプランを策定し、実行してください。
【IV】今年やるべきこと
云うまでもなく、21世紀初頭のNYKグループの目指すところは、数値目標のクリアーを含む「NYK21-新世紀宣言」の100%以上の履行です。この期間中(2002年度まで)心すべきキーワードを"3C"(THREE C)としたいと思います。"3C"とは、CHANGE/CHALLENGE/CONCENTRATEです。
1)CHANGE
昨年から言っていますが、まだまだです。私自身を含めて変わること、変わることに鈍感で臆病になっていないでしょうか?もっと勇気を出してやりましょう。
2)CHALLENGE
ITをはじめとして、時代の急速な変化にややもすれば押し流され、遅れを取っていることがあるのではないでしょうか。自ら惰性を断ち切って常に勇敢にチャレンジし、前へ前へと進みましょう。
3)CONCENTRATE
形式や手続きに拘って、核心部分での集中力が失われていないか、その為業務遂行のスピードが失われていないか、を問い直してみましょう。それぞれの目標の達成に向けて、力を集中してください。
昨年来継続しているBPRに加え、新年を期して徳川専務をヘッドとして営業部門を中心に新たなるBPR-わが社ではこれをMPRと名づけました-に、一斉に取組み、スピード感に満ちた業務体制を実現しましょう。
【V】結び
21世紀には、人口が引き続き大幅に増加する一方で、資源が枯渇の方向に向かうことは確実です。特に水資源は今世紀半ばに中国、インド、アフリカ等で極端に不足し、それにより穀物の不足も深刻化することが懸念されています。そして、最大のエネルギー資源である石油も今世紀後半まで保たないと云われる等々、懸念材料は枚挙に暇がありません。しかしその中で、枯渇しない資源が一つだけあります。それは人間の能力、即ち人知です。こうした資源不足に対処出来るのは人の知恵のみです。そして「ヒト」は磨けば磨くほど光る資源です。だから「ヒト」は資源として最も価値が高いのです。21世紀には人知によって代替資源や新エネルギー資源が開発され、これに伴って、新しい質的物流需要が創出され、また、資源不足地域への物資の適切な輸送が人類にとって大命題となり、世界人口の大幅増加を考え合わせると、物流需要の量的拡大も当然の成り行きとなります。今世紀に於けるこのような新しい物流への対応こそ、「人間性重視」を標榜するわが社グループの社会的責務であり、同時に新しいビジネスの展開でもあって、正に我々の出番が来ることになります。この日に備えて、わが社とわが社グループの最も大切な資源である"人"の能力をもっともっと高めて「NYK21-新世紀宣言」のテ-ゼである「ダイナミックで徳のある人間重視の企業グループ」の実現にチャレンジして行こうではありませんか。会社も、新人事制度の最もフェアで有効な運用と、ベストの「人材開発プログラム」を作って強力にサポートして行きます。
今世紀のそして巳年の初めに当たり、皆さんとご家族の益々のご健康とお幸せを切にお祈りして私の挨拶とします。
以上
その後、予告なしに変更される場合がございますので、あらかじめご了承ください。
