その他事例(業務改善)

海上輸送の現場に携わる船員がかかえる課題はさまざまです。最大ミッションである安全運航をサポートする機器の開発など、新たなビジネスチャンスの創出も視野に入れ、当社グループはイノベーション創出に向けた取り組みを進めています。

運航支援装置「J-Marine NeCST」の共同開発

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「J-Marine NeCST」の操作風景

当社と(株)MTIは、日本無線(株)と共同で、電子海図を含む航海情報を大型ディスプレイ上で管理・共有する運航支援装置「J-Marine NeCST(ネクスト)」を開発しました。外航海運に従事する大型貨物船は、2018年までに電子海図情報表示装置(ECDIS)を搭載することが義務付けられています。当社グループが長年培ってきた船舶運航管理の知見とメーカーの技術力を融合し、他社では類のない装置を開発しました。同装置は、電子海図上に情報の手書き入力を可能にするだけでなく、作成した航路情報とともにECDISと同期ができるなど操作性・機能性に優れています。さらに、気象・海象情報などと重ね合わせて表示させることが可能で、航海計画立案の効率化と最適化を実現します。さらに、船舶特有の情報がデジタル化されることで、船陸間や船舶間での情報共有を可能とし、船上・陸上での作業効率化も期待できます。当社グループでは、2018年度に就航する 新造船から順次搭載していく予定です。

乗組員の負担を軽減する「きらりNINJA」

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「きらりNINJA」(上)で撮影した燃焼室内部

当社および(株)MTIは、ダイトエレクトロン(株)と共同で、船舶エンジンの燃焼室内部を自動撮影する装置「きらりNINJA(特許出願中)」を開発しました。
これまで燃焼室を点検する際には、エンジンを停止し、乗組員が室内に入って直接目視する必要がありました。しかし、燃焼室内部は暗いために隅々まで見えづらく、さらに高温環境での長時間作業となるため乗組員にとって大変な負担となっていました。
本装置はパノラマカメラと照明で構成されており、燃焼室のピストン上部に本装置を置くだけで、ピストンの上下1往復(約10分)間に燃焼室内部360度の自動撮影が可能となり、乗組員の作業負担を大幅に軽減します。また、撮影した画像により、燃焼室内部の状態を詳細にわたり把握することが可能となるため、機関事故を未然に防ぐとともにメンテナンスコスト削減にも寄与すると期待しています。

機関長コメント

これまでエンジンの内部点検は高温閉所という環境下で実施してきましたが、「きらりNINJA」を使うことで点検者がエンジン内部に入って作業する時間をミニマイズすることができるようになりました。また内部の詳細点検には開放作業が伴うのですが、「きらりNINJA」は無開放で点検することができることから、点検の頻度が上がり、船舶の安全運航に寄与しています。ありそうでなかった点検ツールで、開発の着眼点は船会社だからこそ出てきたものだと思います。

安全な操船を支援する「i.Master」

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船舶の運航で緊張を強いられる場面の一つである離着岸作業。当社は、岸壁への接触事故を引き起こすリスクが潜むこの場面で役立つ、持ち運び型電子海図ソフトウェア「i.Master」を導入しています。「i.Master」はタブレットを利用し、本船の針路や離着岸速度、他船舶の自動船舶識別情報など、船舶自体の挙動とそれを取り巻く状況を俯瞰的に把握でき、またブリッジ外でも常にモニター可能なシステムです。岸壁接触事故が起きれば、長期間の停船を余儀なくされる場合もあり、お客さまにご迷惑をおかけし、信頼を損ないかねません。「i.Master」を有効活用し、離着岸作業におけるリスクの低減を図っています。

船長コメント

自動車船のように、離着岸時の船長位置から死角が多い船舶にとって、俯瞰して挙動を把握できる「i.Master」は、船長をサポートする非常に心強いツールです。また操船位置にいながら、水先人と離着桟作業計画を打ち合わせることや、都度、相互確認を行えるなど、持ち運べるタブレットの強みを活かし、コミュニケーションの円滑化にも役立っています。

タンク内の液面を正確かつ簡易に計測する「Honesty」

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当社および(株)MTI、セムコ(株)は船舶に搭載されているタンク内の液面計測作業の効率化を可能にする、タンクサウンディング装置「Honesty(特許出願中)」を共同で開発しました。タンクサウンディングとは、船舶に搭載されているタンク内の液体の深さやタンク頂部から液面までの距離を計測することです。
本装置を使用することで、タンク内の液面計測作業を大幅に短縮することができます。また、燃料補油時に、燃料油に細かな気泡が混ざった状態で船舶に供給され、実際の量よりかさが増して見える状態を指すカプチーノバンカーにも対応します。センサーは液面上の泡に反応しないため、補油時にカプチーノバンカーが発生した場合でも実際の液位が計測され、正確な補油量の計測が可能です。燃料油だけでなく、潤滑油、バラスト水、船底に溜まっている水や油の混合された液体(ビルジ)など、無色透明の液体計測も可能です。さまざまな点で先進性がありながら、軽量で持ち運び自由なポータブル型で、動力には一般規格の電池を使用しており外部電源も不要と、高いユーザビリティも有しています。一般財団法人日本海事協会から検査の承認を取得しています。

船長コメント

燃料補油直後、出航時間の差し迫っている状況でのタンクサウンディングは時間との勝負ですが、「Honesty」を導入したことで、迅速かつ正確にタンクレベルを把握することができるようになりました。
また、船内では毎日すべてのバラストタンクのレベル計測を行っていますが、無色透明である海水のレベル計測は液面がわかりにくく、時間がかかっていました。「Honesty」を利用することで、毎日の作業時間を大幅に短縮することができました。

利用方法が広がる電子M0(エムゼロ)チェックシステム

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当社および(株)MTIは、日本の海運会社として初めて、携帯端末を使用した「電子M0(エムゼロ)チェックシステム」を開発し、当社運航船へ導入しました。M0とは"Machinery ゼロ"の略語で、夜間などに機関プラントを無人運転する場合、事前に必要な計測を行うことをM0チェックと呼んでいます。乗組員は船舶の機関内に設置されているすべての機械に対する膨大なチェック項目に基づき機器を計測し、計測値を紙の記録用紙に手書きしていましたが、本システムを導入することで、この用紙が不要となります。さらに、一般のテンキー入力と比べ、入力作業時間を大幅に短縮できるだけでなく、入力の際に異常値があれば、その場で端末がアラームを出し、早期に対処できます。さらに、過去1週間の傾向値も即座にわかるため、容易に異常に気づくことができることから、乗組員への教育ツールとしての活用も視野に入れています。
また、データのグラフ化による時系列での変化の確認や、異常箇所の写真・動画の保存も可能です。ほかにも、当データを端末から陸上のサーバーに送信し陸上でタイムリーにデータが閲覧可能となることから、ビッグデータとして今後の新しい価値創出につなげていく考えです。

機関長コメント

千数百項目に及ぶM0チェックリストですが、一つひとつの項目が安全な値を示しているかを確認するには点検者の技量と注意力を必要とします。電子化することで点検項目に基準値を設けることができ、自分が計測した値が正しいかを判断することが容易になりました。点検データを陸上に送信して活用できる点もさることながら、本船上でもより活きたデータになっていると感じています。



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